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シーラ視点 2
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最近、なんだかみんなが冷たい。前まではみんな本当にわたしに優しかったのに。お父様は何かにつけて忙しいが口癖になってしまったし、お母様はすぐに少し我慢しなさいなんていう。
今までどんなことだって、わたしを後回しにしたり、我慢をしろなんて言ったことないのに。
でも一番に気になるのは、今目の前にいるアレン様の態度なのよね。前は二人の子どもが出来たことをすごく嬉しがってくれたのに、最近はなんだか少しよそよそしい。
わたしにも最小限しか触れてこないし、もしかしたら他の女と浮気をしているのかもしれない。こんなにモテるアレン様だから、ある程度はわたしも目を瞑ってはいたけど、でも子どもが生まれるのだもん。キチンとしてもらわないと。
「アレン様、最近全然うちにも来て下さらないではないですの。シーラは寂しくて寂しくて、来てしまいましたのよ」
身重なのに、わざわざ馬車に乗ってこのわたしが訪れないといけないだなんて。本当にどうなっているのよ。しかも今通されたのは、アレン様の私室ではなく執務室だし。
いくら人払いをしてあるからだって、これではイチャイチャも出来ないし。
いつもならお昼過ぎに一緒にお茶をして、中庭を散歩して楽しい時間を過ごせていたのに。まったく、どうなってるのよ。
「少し仕事が立て込んでいるんだ。すまないな、シーラ」
「そんなものは誰かにやらせてしまえばいいではないですの」
「いや、当主印が必要なモノが多いからそうもいかなくてな」
そう言いながらも書類を片付けるアレン様はこちらに視線を向けることはない。
「でも今までは」
「そうだな。君の姉がやっていたからな」
「お姉さまですら出来ていた仕事なら、そんなに難しいものではないのでしょう」
「そうだとしてもだ! シーラ、君には婚約者をねぎらう言葉はないのか!」
「いえ、わたしはそんなつもりでは……。ただお忙しそうなアレン様が不憫で」
もう! どうしてわたしが怒鳴られなければいけないよの。お姉さまが簡単にやってた仕事なんだから、そんなのちゃちゃっと出来て当たり前じゃないの。
もしかしてお姉さまが言っていたように、アレン様って本当に何も出来ない男なのかしら。こんなに使えないなら、この先どうなってしまうの。
辞めてよね。せっかくお姉さまから奪って差し上げたっていうのに、顔だけしかない男なんて興味ないんだけど。
しかも機嫌悪くなると怒鳴るとか、最悪だし。
こっちは妊婦なのよ。むしろ労われるのはわたしでしょう。
「不憫でもなんでもこなさなければ仕方ないだろう」
「ん-。やっぱりお姉さまを引き戻すのを急ぐ方がいいのではないですか?」
「それはそうだが、でもどうするんだ」
「お父様がお姉さまの婚約を許可しないみたいだし、きっとそうなれば行くところがなくなると思うんですよね。今は小さな領地に引っ込んでしまいましたけど、そこはほら、、無理やりにでも連れ戻してしまえばいいんじゃないですか?」
「無理やりに、か」
「そうですよー。ほら、帳簿に不備があったとか不正があったとか、なんでもいいので因縁をつけて」
「それはいい案だな」
「でしょう? だ・か・らお買い物行きましょう」
「また買い物か。この前も妊婦になるとドレスが入らないからと二着も作ったではないか」
「二着では毎日着るのは無理ですよ~。それにお姉さまが戻ったらタダで前のように働かせばいいんだし。使用人の給与が一人分なくなったと思えば安いものではないですか~」
「それはそうかもしれないが」
「ね、ね、ね。いいでしょうアレン様。一緒に気分転換に街へ行きましょう」
わたしはアレン様に近づくと、その腕を引っ張った。アレン様は置かれた書類の束をもう一度見た後、少し考えこんだような顔をしたものの、すぐに立ち上がる。
「帰ったら、すぐにでも君の姉をさらいに行くぞ」
「はぁい」
まったく、わたしが優しくされないのも、みんなが忙しいのも全部全部お姉さまのせいよ。今まで通り、ちゃんとみんなの幸せのために尽くしてもらわなきゃね。
自分一人だけ幸せになろうなんて、しかもわたしよりも幸せになろうだなんて、地味でなんにも出来ないくせに厚かましいのよ。
絶対にわからせてやるんだから。
ふふふ。今からでも楽しみね。お姉さまの泣き顔を見たら、きっとこのモヤモヤした気持ちも吹き飛ぶわ。
今までどんなことだって、わたしを後回しにしたり、我慢をしろなんて言ったことないのに。
でも一番に気になるのは、今目の前にいるアレン様の態度なのよね。前は二人の子どもが出来たことをすごく嬉しがってくれたのに、最近はなんだか少しよそよそしい。
わたしにも最小限しか触れてこないし、もしかしたら他の女と浮気をしているのかもしれない。こんなにモテるアレン様だから、ある程度はわたしも目を瞑ってはいたけど、でも子どもが生まれるのだもん。キチンとしてもらわないと。
「アレン様、最近全然うちにも来て下さらないではないですの。シーラは寂しくて寂しくて、来てしまいましたのよ」
身重なのに、わざわざ馬車に乗ってこのわたしが訪れないといけないだなんて。本当にどうなっているのよ。しかも今通されたのは、アレン様の私室ではなく執務室だし。
いくら人払いをしてあるからだって、これではイチャイチャも出来ないし。
いつもならお昼過ぎに一緒にお茶をして、中庭を散歩して楽しい時間を過ごせていたのに。まったく、どうなってるのよ。
「少し仕事が立て込んでいるんだ。すまないな、シーラ」
「そんなものは誰かにやらせてしまえばいいではないですの」
「いや、当主印が必要なモノが多いからそうもいかなくてな」
そう言いながらも書類を片付けるアレン様はこちらに視線を向けることはない。
「でも今までは」
「そうだな。君の姉がやっていたからな」
「お姉さまですら出来ていた仕事なら、そんなに難しいものではないのでしょう」
「そうだとしてもだ! シーラ、君には婚約者をねぎらう言葉はないのか!」
「いえ、わたしはそんなつもりでは……。ただお忙しそうなアレン様が不憫で」
もう! どうしてわたしが怒鳴られなければいけないよの。お姉さまが簡単にやってた仕事なんだから、そんなのちゃちゃっと出来て当たり前じゃないの。
もしかしてお姉さまが言っていたように、アレン様って本当に何も出来ない男なのかしら。こんなに使えないなら、この先どうなってしまうの。
辞めてよね。せっかくお姉さまから奪って差し上げたっていうのに、顔だけしかない男なんて興味ないんだけど。
しかも機嫌悪くなると怒鳴るとか、最悪だし。
こっちは妊婦なのよ。むしろ労われるのはわたしでしょう。
「不憫でもなんでもこなさなければ仕方ないだろう」
「ん-。やっぱりお姉さまを引き戻すのを急ぐ方がいいのではないですか?」
「それはそうだが、でもどうするんだ」
「お父様がお姉さまの婚約を許可しないみたいだし、きっとそうなれば行くところがなくなると思うんですよね。今は小さな領地に引っ込んでしまいましたけど、そこはほら、、無理やりにでも連れ戻してしまえばいいんじゃないですか?」
「無理やりに、か」
「そうですよー。ほら、帳簿に不備があったとか不正があったとか、なんでもいいので因縁をつけて」
「それはいい案だな」
「でしょう? だ・か・らお買い物行きましょう」
「また買い物か。この前も妊婦になるとドレスが入らないからと二着も作ったではないか」
「二着では毎日着るのは無理ですよ~。それにお姉さまが戻ったらタダで前のように働かせばいいんだし。使用人の給与が一人分なくなったと思えば安いものではないですか~」
「それはそうかもしれないが」
「ね、ね、ね。いいでしょうアレン様。一緒に気分転換に街へ行きましょう」
わたしはアレン様に近づくと、その腕を引っ張った。アレン様は置かれた書類の束をもう一度見た後、少し考えこんだような顔をしたものの、すぐに立ち上がる。
「帰ったら、すぐにでも君の姉をさらいに行くぞ」
「はぁい」
まったく、わたしが優しくされないのも、みんなが忙しいのも全部全部お姉さまのせいよ。今まで通り、ちゃんとみんなの幸せのために尽くしてもらわなきゃね。
自分一人だけ幸せになろうなんて、しかもわたしよりも幸せになろうだなんて、地味でなんにも出来ないくせに厚かましいのよ。
絶対にわからせてやるんだから。
ふふふ。今からでも楽しみね。お姉さまの泣き顔を見たら、きっとこのモヤモヤした気持ちも吹き飛ぶわ。
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