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質実豪邸!

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 俺たちは馬車に揺られる事少々……初めての貴族邸にお邪魔することとなりました。
 お邪魔って凄い言葉ですよね。邪な上に魔ですよ。誰かの家で邪魔するぜ! ってとんでもない
悪い事をするみたいです。異世界では決して使ってはいけません。はい。

「ということで邪魔するぜ!」
「あんたいきなり何言ってんのよ!」
「恒例行事です。ここが辺境伯のお家ですか。大きくて……質素ですね」
「私もそう思ったわ。ここで間違いないの?」
「ええ。お嬢様のご友人をお連れしろと伺っておりましたが、本当に変わった感じのお客様
だけですね……」
「それで、ヨナさんはどちらに?」
「直ぐ呼んで参ります。何せ帰宅後は欠かさず剣の稽古をしていますから。そのあたりで
お待ちください」

 そういうと御者のおじさんは速足で辺境伯邸に戻っていく。
 では改めて邸宅を見ていこう。
 外壁は俺の背丈より高く実にしっかりとした造り。
 門番は一名。入り口は物々しい鉄格子! 
 見え隠れする庭は刈り揃えた草。花は見えません。
 質素だが趣のあるいい一品ですね。いい仕事してます。
 気になるお値段は……「オープンザプライス! 一、十、百、千……」
「何ブツブツ言ってるのよ。あんた……」
「またシロンがおかしくなったサ」
「いつもの事ニャ……」
「それにしても貴族っぽくない邸宅ね。邸宅っていうより要塞っぽいわ」
「そういえば民に何かあった時は矢面に立って……のような事を言ってましたね」
「住民を守る時の建物にするために、建造したものだからね」
「わわっ。いきなり現れた! 剣士です!」
「ニャ! 本物の剣士に見えるニャ!」
「おや? この子がもう一匹の召喚獣? どちらも本当に喋るんだね。
改めてようこそ我が邸宅へ。殺風景な所だけど、くつろいで欲しいな。案内するよ」

 ヨナさんに案内され、邸宅の中に入ると直ぐ気付く事がありました。
 それは……庭の中央に巨大な紋様が描かれているのです! 悪魔を呼び出せるんでしょうか? 

「あの紋様、何かに使うんですか?」
「あれは遠い昔に描かれたものでね。今となっては記念みたいなものかな。
それ以外本当に殺風景な所だろう? 剣の稽古には持ってこいなんだけどね」
「剣の稽古も外でやってるんですか?」
「その方が実践的だろう? 屋内での戦闘も想定されることはあるけど、殆どは外だからね」
『確かに……』
「食事の準備は済んでいるから、直ぐに会食を始めよう。父上に挨拶をしてからだけどね」

 邸宅内部もとてもシンプルです。飾りつけも殆どなく、取られるようなものも置いてありません。
 これは辺境伯が所以でしょうか? 
 普通の貴族であれば貴族同士で招待しあうことも多いので、飾り付けなどは
必要そうですが……戦う事を生業とする辺境伯としては、まず戦力を……ということなのでしょう。
 大学もあるし、きっと国の要なんだろうなぁ。

 尻尾をふりふりついていくと、大きな扉の前に着きました。
 でも魔珠が足りません。ずりずりと最後尾に移動です。
 ご主人はヨナさんの案内を受けているので邪魔はできません。
 それにしても……いるぞ、ここに大物が! といった扉です。

「父上、お連れしました」
「ああ。もう待ちきれん」
「へ?」

 バーンと扉が開いたと思うと……髭をたくわえた凛々しいおじさんがこちらへ来ます。
 
「ああ……ルビーには話していたんだけど、父上は大のホワイトウルフ好きでね。
喋るホワイトウルフと聞いて、いてもたってもいられなかったようなんだ」

 一直線に最後尾の俺の許へきて、俺を抱きあげるおじさん。

「うわーー! 髭がささります!」
「本当に喋ったぞ? こいつは凄い。ガッハッハッハ! しかも話に聞いた通り普通のウルフじゃないな。
しかしこのふかふかの尻尾や愛らしさはどうだ。ホワイトウルフのそれに違いない。
一体どこでこの召喚獣を?」
「おじさん、いい質問です! ご主人に俺が出てきたところを詳しく聞いてなかった!」
「ええと……ランスという大陸のシフォン村周辺で、突然出てきたホワイトウルフっぽいのと
契約したんです」
「ふうむ……まず私を呼ぶときはおじさんではなくジェイフ卿とでも呼んでくれ。
君は……シロン君でよかったかな?」
「わかりましたジェイフ卿。とりあえず……下ろしてくださーい!」

 とても残念そうに俺を下ろすジェイフ卿。
 幾ら俺が可愛いウルフィだからって、会ったばかりで気安くしないで欲しいのです!

「すまんかった。立ち話もなんだ、食事にしよう。娘からの急な話だったが、馳走を
用意したので遠慮せず食べていって欲しい」
「やったわ! これで今日も明日も大ご馳走よ」
「ニャハー! 食べまくるニャ! お魚あるニャ?」
「急に元気になったサ。食事は元気が一番サ」
「ここは港町だからね。魚料理の方が多いくらいだよ。さぁ行こう」


 やりました。貴族の馳走……楽しみです! 
 でも基本は質素とのことなので、そんなに大それた料理は出てこないのかな? 


「また来週!」
「食事、早く食べたかったですぅ……」
「地雷で吹き飛ばしそうなので、地雷フィーさんの部分は飛ばします!」
「そんなぁ……」
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