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辺境伯邸は皆でいくのです
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全員合流してミネル・バビスチェへと戻った一行。
入り口のサメが出迎えてくれる。
「シャークシャクシャクシャク。お帰り。夕飯の支度、もうすぐ始めるよ」
「ごめんなさい。今晩は及ばれに預かったから、今日分は明日の朝に回してくれる?」
「いいのか? 朝食が凄い量になるぞ?」
「ええ。辺境伯に呼ばれたから、帰りが遅くなると思うの。ここのお店、辺境伯の娘に
宣伝してもらうよう、頼んでおいてあげたわよ。だから一品追加してくれてもいいわ」
「シャク? 本当か? それなら明日の朝は豪勢な食事としよう。気を付けて行ってくるのだ」
「ええ。期待してるわ。もう少ししたら迎えが来ると思うのだけれど、ちょっと部屋で休憩する?」
「そうするニャ……自信、なくなったニャ……」
「どうしたんだニャトル。元々ない自信が粉々に砕けたような顔して」
「何言ってるニャ! 自信あったニャ!」
「少しそっとしておいてあげて欲しいサ。ニャトルは先生に厳しく言われたサ……」
「ニャ……」
「お、おう。そんなに気を落とさずただのネコから始めてみたらいいんじゃないか」
「ニャトルちゃんって、なんで剣士になりたいの?」
「ニャ……ご主人にはわからないニャ……剣の良さなんて」
「うん。全然わからないけど……でもニャトルちゃんが剣士になるって決めたんなら、私は応援するよ?」
「ニャ!? ご主人……はぁ……でもニャトルには剣を握る手が無いニャ」
「それな」
「それな……じゃないニャ!」
「でもケンのしっぽって技があるんでしょ?」
「それが、紙もきれなかったサ……」
「剣って紙を切るものじゃないだろ……ペーパーナイフですか? 出でよ、ペーパーナイフ!」
カラーンととても小さな剣状のペーパーナイフが呼び出せました。
しかしもう魔珠が無くなりそうです。でも、これは確実な進歩といっても過言ではない!
ついに俺は武器となり得るものを招来出来たぞ! うおーん!
「何これ。面白いけど随分と小さくて細い、頼りない短剣ね」
「それは紙を切るために産み出されたペーパーナイフってやつです。
折り目をつけた紙に差し込んで使います」
「でもそんな事しなくても折り目をつけて丁寧に切ればいいわよね?」
「え、ええ。既に使われなくなって久しい一品です」
「……それって何かの役に立つの……?」
「地雷フィーさん! お貴族様っていうのはですね。希少価値のあるものが大好きなんです。
これを土産にすれば……グッフッフッフッフ」
「シロンが悪い笑いをしているサ……」
「それもそうね。それじゃこれは私が……」
「ダメですよサルサさん。それはご主人に。招待された本人が献上した方がグッと効果があがります」
「わかったわよ。それで、もっとお金になりそうなもの出せないの?」
「出せないどころか魔珠がもう無いので抱っこして連れてってください……」
「じゃあ今度は私が運びますね! うふふっ」
「怖いので地雷フィーさんはご遠慮します。向かう途中で死にそうなので」
「酷いですぅ……」
「シロンちゃんは私が連れてくよ! 元気ないニャトルちゃんをラフィーさんが連れてってあげてね」
「ニャ!? 追い打ちニャ!? ご主人はニャトルを殺る気満々ニャ!?」
「その前に、鎖帷子着てみなさいよ。折角魔付与してくれたんでしょ?」
「そうでした! ご主人、この装備って鑑定できないんですか?」
「装備鑑定は出来ないかなぁ……チャーニィさんがいれば出来ると思うけど、戻ってこないね……」
「別に呪いとか付与されてるわけじゃないんだから、着てみなさいって。
あら、なかなか恰好いいわね、これ。色はあんたに合わせて赤色にしてくれたのかしら」
魔付与された鎖帷子を着用してみると……なんと驚きの軽さです。
これは軽くなるような術が付与されているのでしょうか?
「ちゃんと紙も入ってたわ。なになに……親愛なるシロン殿へ。先ほどはすまなかった。
お詫びに二つの魔付与を行った鎖帷子を送ることにした。十分な性能がある装備だから、大事に
使ってくれると嬉しい。露店で売られてたら、わしは多分泣き伏せるだろう。
付与されたものは、電撃耐性と軽量の二種類じゃよ。君の活躍を祈っておる……だって」
「おお。これでまた俺の活躍場が増えるってわけですね! よーし頑張るぞ!」
「頑張るって言っても今日は辺境伯の所へ行くだけでしょ……ちょうど迎えの馬車が来たみたいよ」
「楽しみだね! 行こ、シロンちゃん」
俺たちはミネル・バビスチェの前に止められている馬車へと乗り込み、コトコト揺れながら
辺境伯邸を目指すのでした。
「続くのです!」
「それにしてもあんた、もっとお宝出せるんじゃないの?」
「無茶言わないでください。魔珠切れてひからびます……」
「別にいいじゃない。ひからびても」
「全然よくなーーい! サルサさんはがめつすぎます!」
入り口のサメが出迎えてくれる。
「シャークシャクシャクシャク。お帰り。夕飯の支度、もうすぐ始めるよ」
「ごめんなさい。今晩は及ばれに預かったから、今日分は明日の朝に回してくれる?」
「いいのか? 朝食が凄い量になるぞ?」
「ええ。辺境伯に呼ばれたから、帰りが遅くなると思うの。ここのお店、辺境伯の娘に
宣伝してもらうよう、頼んでおいてあげたわよ。だから一品追加してくれてもいいわ」
「シャク? 本当か? それなら明日の朝は豪勢な食事としよう。気を付けて行ってくるのだ」
「ええ。期待してるわ。もう少ししたら迎えが来ると思うのだけれど、ちょっと部屋で休憩する?」
「そうするニャ……自信、なくなったニャ……」
「どうしたんだニャトル。元々ない自信が粉々に砕けたような顔して」
「何言ってるニャ! 自信あったニャ!」
「少しそっとしておいてあげて欲しいサ。ニャトルは先生に厳しく言われたサ……」
「ニャ……」
「お、おう。そんなに気を落とさずただのネコから始めてみたらいいんじゃないか」
「ニャトルちゃんって、なんで剣士になりたいの?」
「ニャ……ご主人にはわからないニャ……剣の良さなんて」
「うん。全然わからないけど……でもニャトルちゃんが剣士になるって決めたんなら、私は応援するよ?」
「ニャ!? ご主人……はぁ……でもニャトルには剣を握る手が無いニャ」
「それな」
「それな……じゃないニャ!」
「でもケンのしっぽって技があるんでしょ?」
「それが、紙もきれなかったサ……」
「剣って紙を切るものじゃないだろ……ペーパーナイフですか? 出でよ、ペーパーナイフ!」
カラーンととても小さな剣状のペーパーナイフが呼び出せました。
しかしもう魔珠が無くなりそうです。でも、これは確実な進歩といっても過言ではない!
ついに俺は武器となり得るものを招来出来たぞ! うおーん!
「何これ。面白いけど随分と小さくて細い、頼りない短剣ね」
「それは紙を切るために産み出されたペーパーナイフってやつです。
折り目をつけた紙に差し込んで使います」
「でもそんな事しなくても折り目をつけて丁寧に切ればいいわよね?」
「え、ええ。既に使われなくなって久しい一品です」
「……それって何かの役に立つの……?」
「地雷フィーさん! お貴族様っていうのはですね。希少価値のあるものが大好きなんです。
これを土産にすれば……グッフッフッフッフ」
「シロンが悪い笑いをしているサ……」
「それもそうね。それじゃこれは私が……」
「ダメですよサルサさん。それはご主人に。招待された本人が献上した方がグッと効果があがります」
「わかったわよ。それで、もっとお金になりそうなもの出せないの?」
「出せないどころか魔珠がもう無いので抱っこして連れてってください……」
「じゃあ今度は私が運びますね! うふふっ」
「怖いので地雷フィーさんはご遠慮します。向かう途中で死にそうなので」
「酷いですぅ……」
「シロンちゃんは私が連れてくよ! 元気ないニャトルちゃんをラフィーさんが連れてってあげてね」
「ニャ!? 追い打ちニャ!? ご主人はニャトルを殺る気満々ニャ!?」
「その前に、鎖帷子着てみなさいよ。折角魔付与してくれたんでしょ?」
「そうでした! ご主人、この装備って鑑定できないんですか?」
「装備鑑定は出来ないかなぁ……チャーニィさんがいれば出来ると思うけど、戻ってこないね……」
「別に呪いとか付与されてるわけじゃないんだから、着てみなさいって。
あら、なかなか恰好いいわね、これ。色はあんたに合わせて赤色にしてくれたのかしら」
魔付与された鎖帷子を着用してみると……なんと驚きの軽さです。
これは軽くなるような術が付与されているのでしょうか?
「ちゃんと紙も入ってたわ。なになに……親愛なるシロン殿へ。先ほどはすまなかった。
お詫びに二つの魔付与を行った鎖帷子を送ることにした。十分な性能がある装備だから、大事に
使ってくれると嬉しい。露店で売られてたら、わしは多分泣き伏せるだろう。
付与されたものは、電撃耐性と軽量の二種類じゃよ。君の活躍を祈っておる……だって」
「おお。これでまた俺の活躍場が増えるってわけですね! よーし頑張るぞ!」
「頑張るって言っても今日は辺境伯の所へ行くだけでしょ……ちょうど迎えの馬車が来たみたいよ」
「楽しみだね! 行こ、シロンちゃん」
俺たちはミネル・バビスチェの前に止められている馬車へと乗り込み、コトコト揺れながら
辺境伯邸を目指すのでした。
「続くのです!」
「それにしてもあんた、もっとお宝出せるんじゃないの?」
「無茶言わないでください。魔珠切れてひからびます……」
「別にいいじゃない。ひからびても」
「全然よくなーーい! サルサさんはがめつすぎます!」
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