裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹

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第二章 ラッシュ港攻略

カイナ班

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 少し高台に位置している広場からも、土煙があちこちから上がっているのが確認出来た。

 皆派手にやってるな。

 派手にやる分は全然構わない。もうちょっと派手でも構わないくらいだ。多少、建物が壊れても全然OK。修復に長けてる者が魔国には大勢いるから平気だ。それに壊れたら、自分たちの思い通りに建てれしな。

 それと、わざと大きな音を立てるように皆には言ってある。

 何故そうするのか。

 それは、物が壊れる音と悲鳴は対象者、今回は、武器を持たない市民にだけど、彼らに多大な恐怖を植え付けることが出来るからだ。恐怖は目に見え無い拘束具だと俺は考えてる。

 まぁようは、精神ダメージを与えて、強者が誰か、支配者が誰かを教え込ませればいいって話だ。要は柔順にさせるってやつだな。

 但し、そこに体罰を加えるつもりも、させる気も毛頭ない。そこらへんは凄く健全。奴隷なんて以ての外。エルヴァン聖王国や聖教国のような非道なことを、俺たちは断じてしない。他の魔族の将からは、甘いと苦笑されるけどな。

 それが、班の柱だ。

 それを揺るがすことは、俺にはできないし、できたとしてもするつもりはない。

 何故なら、俺たちカイナ班の者は、それを一番に嫌うからだ。例えそれが憎い人族だとしてもだ。だって嫌だろ。自分たちがされて嫌だったことをするのは。

 因みにカイナ班は、あの襲撃から生き残った俺たちと、クラスメートが集まって結成された班だ。一応、少人数精鋭部隊だと言われてる。

 そう言われるけど、これが初めての大仕事。失敗は許されない。

 ラッシュ港を必ず落とす――

『第一区画、まもなく制圧完了』

『早っ!! 第二区画もう少しで制圧完了』

『第三区画、ほぼ制圧完了』

『第四区画、こちらもほぼ制圧完了。ってことは、第二区画が一番遅いんだ。奢るのは、フランね』

 楽しく仕事するのはいいことだね。当然、俺も参加する。

「楽しみだな、フラン。何奢ってくれるんだ?」

 笑いながら、俺は剣を振り下ろす。

 何処からか湧いてくるよな。勝てないって分かっていながらも襲い掛かってくる根性には感服もんだよ。それだけ、このクズ国が好きなのか? あ~違うか、大半がこのクズ国のために戦ってる訳じゃない。

 自分の大切なものを護るために戦っているんだ。戦う理由なんて、皆、似たりよったりだよな。
 
 そんなことを考えてると、フランから返答があった。

『アークもかよ』

 プランの中で、俺はまだ優踏生らしい。

『アークだけじゃないわよ』

『勿論、俺の分もな』

『ご馳走様、フラン』

 次々と会話に割り込んでくるのは、マリアたちだ。

「クラスメイト全員に奢ることになりそうだな」

 俺がそう言うと、泣きそうな情けない声が返ってきた。

『マジ、それ勘弁。金がない』

「大丈夫。金なら、この丘の上に唸る程あるんじゃないか」

 ほんの少し、臨時ボーナスとして貰っても構わないよな。暗黙のルールだ。

『ボーナス全部消えるかもね』

 マリアが笑いながら言う。

『人の金で幾ら飲み食いする気だよ』

「樽が空になるまで」

 フランの情けない声に、俺はカラカラと笑いながら答える。

 そんな会話をしているうちに、街と港を完全制圧。ついでに封鎖した。

 う~ん、順調順調。

 馬鹿話しながらも、きちんと仕事をする。それがカイナ班だ。だから、俺もちゃんと仕事しないとな。

 確かに街と港は完全制圧している。

 一箇所を残して。

 その一箇所は、この広場の先、高台にある街一番の大きい屋敷。

 この街と港を治める代官の屋敷だ。

 一人で行っても全然構わないんだけど、レイたちも一緒に行くってきかないから、遊びながら待っている。すると、

「お待たせ~」

「待たせてごめん」

「悪いな。そんじゃ、行こうぜ」

 これって、何処かに遊びに行くノリだよな。

 苦笑する。一応、これから敵本拠地に向かうんだけどな。まぁ、これが俺たちの通常運転だから仕方ないか。

「それじゃあ、行こうか」

 俺たちは高台にある代官様の屋敷に向かった。ノリはピクニックだな。

 代官の屋敷に到着――

「……うん。まぁ、普通こうくるよな」

 強面の兵士や騎士、用心棒、冒険者、皆が勢ぞろいして俺たちを出迎えてくれた。

「まだ、こんなに残ってたんだ~」

 馬鹿にした口調でマリアが楽しそうに笑う。だが、目はとことん冷たい。

「金だけはあるんだろ、腐る程に。横領して、たんまりあるからな」

 ジムがそう吐き捨てる。

「まぁ、私腹を肥やしまくるカスだから、市民を護ろうとはしないか……中には騎士の格好をした人もいるけど、それってわざと?」

 なかなか辛辣だな、レイは。

 ジムの台詞をレイが引き継いで、更に上乗せする。荒塩を砂利と一緒に擦り込むのも忘れない。これも立派な連携だよな。

 騎士の口元は引き攣り、こめかみには青筋が浮いている。

「これ以上待たせるのも悪いし、行くか」

 行こうとする俺をマリアが腕を掴み止めた。

「アークはここで待ってろ。奴らは俺が仕留める」

 ジムが前に出た。マリアもレイもその場から動かない。

「そうだよ、アーク。大将はドンと構えてないとね」

「俺たちはアークの駒だ。大将を支える駒。最前に立つのは俺たちの役割だ」

 正直、レイの言葉には納得していない。大切な仲間を駒なんて思える筈ないだろ。でも、お前らがそう思い行動するなら、俺は止めはしない。止めれないだろ。

 だから、代わりに俺は誓う。

 だったら俺は、皆の支柱になる。そして盾になる。頼りない盾だけどな。

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