戻るなんて選択肢はないので、絶対魔法使いの弟子になってみせます。

井藤 美樹

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第四章 銀色の少女

第六話 黒髪の美女と空飛ぶ帆船(1)

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(うっわ~~~~!!!!)

 朝御飯を済ませた後、栞に案内されて甲板に出た私は、驚き過ぎて馬鹿みたいに口が開いたまま立ち尽くしてしまった。

「サッ……サス君!!!! 栞、飛んでるよ!!!! 空飛んでる!! スピード出てるのに、全然風吹いてないよ!!!!」

 興奮のあまり声が上擦る。興奮し過ぎて少しむせた。

(この帆船空を飛んでるんだよ!! 空だよ、空!!)

 かなりの速さで飛んでる筈なのに、甲板の上は無風だった。無風じゃなきゃ、外に出られないよね。ドアも開かないか。

(結界でも張ってるのかな?)

 じゃなきゃ、無理だよね。さすが異世界。

「睦月様。主に、この世界の移動手段は、徒歩、馬車などが一般的ですが、他の大陸に行くには帆船でないと行けないんです」

 栞が説明してくれる。

「どうして?」

「大陸それぞれに、守護結界が張られているからですよ。特定の方法でしか、結界を通過することが出来ないんです」

 今度はサス君が教えてくれた。

(なるほど……だから、帆船ね。ということは、違う大陸に行くつもりってことね。最有力は南の大陸。朱雀様が統治する大陸かな)

 情報一つゲット。やったね。

 にしても、帆船でしか渡れないって、当然といえば当然かな。

 そもそも、自由に渡れたら結界の意味ないよね。といって、完全に遮断することも出来ない。商売とか、大陸同士の付き合いとか色々あるもんね。犯罪者とかが入れないようにするためにも、通過方法が特定された方が効率がいいし、何かあった時の対処もし易い。だからこそ、特定の方法でしかいけないようにしてるのか……。

 ここにいるのは私の意思じゃないけど、この世界のことを一つ勉強したよ、伊織さん。

 甲板を走り、柵に両手を置いて下を覗いてみる。遥か下で、茶色の屋根が豆粒のように見えた。動いてるのは人かな。あまりの高さに足が竦む。

 サス君と栞は、そんな私の様子を微笑みながら眺めている。一応、誘拐犯の一人と被害者だよね? 君たち。

「黒翼船全体を包み込むように結界が張られてるので、この速さでも無風で安全に航行出来るんです。睦月様、黒翼船は常世で一番速い帆船なんですよ」

 栞が誇らしげに教えてくれた。

 ふ~ん。やっぱり、結界に護られてたみたいね。そんなことを考えていた時だった。

「あんまり身を乗り出すと危ないですよ、睦月様」

 栞とは違う大人の落ち着いた女性の声が、私たちに割って入ってきた。

 その声に顔を上げる。

 そこには、胸当てを装備した黒髪の美女が立っていた。腰には刀を携えている。背中には、髪と同じ漆黒の翼が生えていた。

 そして美女の数歩後ろには、がっしりとした体型の男が同じ様に立っていた。その男もまた、胸当てをし美女と同じように刀を携えている。男も黒の翼が生えていた。

 二人とも、まさに戦士の様な出で立ちだった。漂わせている雰囲気も、栞や私たちとは全く違う。

 だとしたら、この二人は実行犯の可能性が高いーー。

 そう考えた瞬間、私の顔から自然と笑みが消え表情が消えた。


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