最高で最強なふたり

麻木香豆

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みえる少年編

第一話

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「ほんとお疲れねー、はい。明日からも精出して! 生姜マシマシ唐揚げー」
「助かります、美佳子さん」

 虹雨と由貴は除霊と喫茶店のウエイターの仕事で毎晩九時過ぎまでヘトヘトである。時に霊がよく出るのは夜なので朝帰りもザラである。
 その時は冷蔵庫に食べたいものを適当に入れておき、美佳子が現れる夜のうちに作ってもらい朝に食べるという日が続いた。

「こっち来てからずーっとこんな感じやで。ありえへん、ブラックや」
「由貴、何言うとる。俺の方が除霊しとるからしんどいんや。これ食べたら塩風呂入るわ」
「は? 俺はこの後3本撮りしたやつを編集せなかんのや。徹夜やで」
「あん? 俺はその三本の仕事の報告書を書いて朝イチに所長のところに持ってかなかんのや。その後すぐ喫茶店の手伝い……」
 と二人は疲れのあまり言い争いが増えたような、前と変わらないような……。

「もう無駄な争いはしたない。さっさと食べて風呂入って寝るしかない」
「そやな。ごめん、美佳子さん」
 美佳子は首を横に振る。

「なんか最近幽霊界も騒がしいわねぇ。ずっと働きっぱなしだもん」
「俺らの活躍が増える、それを動画で流す、それ見た人が依頼する、仕事をする、それな。本当嬉しいのやらなんなのやら。他の霊媒師よりも俺ら指名が多いんや」
「ほんと無理しないでね」
「ありがとうございます……」

 ツンツンしながらもちゃんとお礼を言う虹雨だが、やはり相当疲れているようである。


 虹雨がたっぷりの塩風呂に浸かっている間に由貴は片付け、そして編集作業。
 得意でもあるし好きでもあるがそれを今まで仕事としてなかった。よく趣味を仕事にすると良くないとは聞いていたがそれはその通りだ、でも自分の動画を見て面白いです、編集最高です、カメラの画質良いです! とコメントがあるとやりがいを感じる。

 由貴も加わって少しずつファンも増えて今では依頼だけでなくファンレターやプレゼントもいただいたり、塩風呂の塩やお守りも。

「これって料理に使えるかしら」
 美佳子が今日届いていたプレゼントの塩を見て言う。

「それ、渚ちゃんにも言われた。食べられないと書いてあったら乾燥剤入ってるんや。虹雨が愛用してるのはキッチンソルトだから使えるけどな」
「ふぅん」
 と言いながら由貴をじろっと見る美佳子。

「なんなん」
「渚ちゃんとは仲良くなった?」
「一応仕事の先輩やし、よくしてもらってる……」
「でもコウちゃんは由貴くんは渚ちゃんに一目惚れしたって」
「!!! 虹雨ー!!」

 由貴は浴室に走っていった。

「さて、私は帰りましょうか………由貴くんも悪くはないけどねえー」
 と、ドロンと美佳子は消えた。
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