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前編
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※中盤からちょっとエッチです
「ジェイスと言えば、あの後何かあったのか?アイツのお陰で助けられたんだろ?」
「えぇ。レイラ様と別れられた後、ローレン様は会場に戻られました。私も、フィリアお嬢様に追い出されてしまいましたから会場に戻ったのですが、ローレン様は色んな方々に質問攻めにされていらっしゃいました」
「まぁ、あんな退場の仕方したらそうなるだろうな」
「はい。まぁ、全てにこやかに躱しておられましたよ。ですが、レイラ様に対して今の立場を理解せず、舐めたような態度を未だにとっていらした愚か者たちには、しっかりと釘を刺していましたが」
「釘?」
ゲームでは、レイラと悪役令息となったカーディアス以外には比較的友好な態度だった彼が釘を刺す程の失言をした奴がいたのか。逆に尊敬するな。けど、なんで俺に関することでジェイスが怒ったんだ?
「不服ですが、ローレン様とレイラ様が仲良く退場されたことで、あの場にいた者達の大半はレイラ様の地位を理解されました。歴代の騎士団長を輩出しているローレン家の天才。次期騎士団長と言われるジェイス・ローレン様の友人として認められたということが、奇しくもレイラ様の地位を確立させたのです。それでも分からない愚か者には、ローレン様が直にレイラ様のことをご友人だと公言し、レイラ様に手を出せば許さないと釘を刺したのです」
成程な。おそらくジェイスに釘を刺された奴らっていうのは、アカデミーの時に俺に絡んできてた奴らだろう。どう考えてもモブだったもんなぁ。
「ジェイスが、俺のことを友人だと公言したからこそ、俺は侯爵という地位にいることを示せた。だからデリスの計画も七割成功したということか」
「はい。失敗した残り三割はレイラ様の過失ですので。誰とも会話されなければ、御令嬢方には優しいなんて希望を持たせずに済みましたのに」
「いや、それもフィリア姉上との話で実質無くなったようなものだろ?」
「今度は名だたる家門の御子息方との見合い話がたくさん来るのでしょうね」
「結婚を強制されたとしても、俺にだって選ぶ権利くらいあるさ。それに、姉上に男と結婚できるかって聞かれたとき、俺はデリスだったら、まぁ、ありかなぁ……なんて考えたくらい、信頼関係がないと嫌だし」
「え……?」
俺はてっきり、「レイラ様と結婚なんて嫌ですよ」って言われるかと思った。けど実際は、デリスは驚きすぎて声が出ないという状況になってしまって、めちゃくちゃ気まずいことになってしまった。沈黙が重たい……。
目を見開いて固まったままのデリスに、俺は慌てて口を開いた。
「い、いや……俺と結婚なんて嫌だよな!ははっ!変な事言ってごめん!」
身体の前で無駄に手を振って、空笑いしながら謝ってみた。いや、ほんとごめんって。
「はぁ……」
「っ……⁉」
ため息を一つついたデリスにもう一度謝ろうとした時、両耳の側でバンっと衝撃音がした。無意識に身体が跳ねる程のその音に驚いて、思わず目を閉じた。閉じた視界のせいで、鋭敏になる感覚。顔に何かが近づいてくる気配がし、耳に柔らかい物が触れた。
「ひゃっ⁉」
「んっ……レイラ様」
「デ、リス……なにを」
「レイラ様、先ほどの質問の答えなのですが」
「へ?」
耳たぶを唇で甘噛みしてきたデリスは、そのままの体勢で話をしようとしてくる。俺の顔の両側にあるデリスの腕。いわゆる壁ドンをされ、何故か耳をデリスの唇で弄られている。この状態で会話すんの⁉てゆうか、さっきの話って何だっけ⁉
「先ほどの「レイラ様に抱かれたいと思うか」という質問です」
「あ、あぁ……んっ、それはもうッ、終わった話だろ……」
「いいえ。まだ私は答えていませんから、終わっていませんよ」
「んんッ……分かったから……いったん離れろっ、ぁんッ……」
いつの間にか俺の耳たぶの形をなぞっていた舌先は、段々と耳の中にまで侵略してきた。くちゅくちゅと、いやらしい気持ちにさせられる水音を注ぎ込んでくる。それがなんだかゾクゾクして、堪らない。
「んっ……このままで聞いてください。この質問に対する私の答えは「いいえ」です」
「そ、だろうなっ!わかってっ⁉ひゃあ!なっ……やめっ」
耳を虐めていたデリスの舌は、そのまま俺の首筋に下りていった。そして、ジュっときつく吸い付かれた。突然の鋭い刺激に驚いて咄嗟に制止をかけたが、これは絶対痕ができてるだろう。なんてこった……。
「おまっ……本当になにを」
「ですが、それはレイラ様が恋愛対象外だからではありません。むしろ、レイラ様と結婚できるなんて、私にとっては夢のような話です。ですから、貴方が私となら結婚してもいいと思ったとおっしゃった時は、驚きと嬉しさで心臓が止まるかと思いました」
ようやく見れたデリスの顔は、びっくりするほど幸福に満ち溢れた表情をしていて……けれど少し苦し気だった。俺はデリスの頬に手を伸ばして触れた。無意識だった。
「けど、俺に抱かれる気はないんだろ?」
「ええ。私はレイラ様との結婚を望んでいますが、貴方の妻になる気はありません。私はレイラ様に「抱かれたい」のではなく、レイラ様を「抱きたい」。つまりは、貴方の夫になりたいのです」
「俺の、夫?」
「はい」と頷いたデリスは、その頬に触れさせたままだった俺の手のひらに、すりすりとその頬を擦り付けてきた。猫のようなその仕草に思わずときめくが、俺を流し見るその視線は獲物を狙う猛獣のような獰猛で俺の心臓を跳ねさせる。
デリスは俺の忠犬のような専属執事だった。ちゃんと主人の過ちを諫められる本当の忠臣。だけど今回のこれは、飼い犬に手を噛まれたってことだろうか。けれど困ったことに、俺の男としての矜持を無視したデリスの言葉を、俺は不快とは感じなかった。
ふと、フィリア姉上の言葉が頭を過ぎった。
『貴方、男と結婚するなら女役だろうなって雰囲気だもの。私には分かるわ』
流石です、姉上。貴女の言う通りでした。
俺、どうやら妻じゃなくて夫をもらうことになりそうです……。
※レイラの夫になるのは誰だ選手権、本当のスタートはここからです!
ここまで来るのが長かった……。
「ジェイスと言えば、あの後何かあったのか?アイツのお陰で助けられたんだろ?」
「えぇ。レイラ様と別れられた後、ローレン様は会場に戻られました。私も、フィリアお嬢様に追い出されてしまいましたから会場に戻ったのですが、ローレン様は色んな方々に質問攻めにされていらっしゃいました」
「まぁ、あんな退場の仕方したらそうなるだろうな」
「はい。まぁ、全てにこやかに躱しておられましたよ。ですが、レイラ様に対して今の立場を理解せず、舐めたような態度を未だにとっていらした愚か者たちには、しっかりと釘を刺していましたが」
「釘?」
ゲームでは、レイラと悪役令息となったカーディアス以外には比較的友好な態度だった彼が釘を刺す程の失言をした奴がいたのか。逆に尊敬するな。けど、なんで俺に関することでジェイスが怒ったんだ?
「不服ですが、ローレン様とレイラ様が仲良く退場されたことで、あの場にいた者達の大半はレイラ様の地位を理解されました。歴代の騎士団長を輩出しているローレン家の天才。次期騎士団長と言われるジェイス・ローレン様の友人として認められたということが、奇しくもレイラ様の地位を確立させたのです。それでも分からない愚か者には、ローレン様が直にレイラ様のことをご友人だと公言し、レイラ様に手を出せば許さないと釘を刺したのです」
成程な。おそらくジェイスに釘を刺された奴らっていうのは、アカデミーの時に俺に絡んできてた奴らだろう。どう考えてもモブだったもんなぁ。
「ジェイスが、俺のことを友人だと公言したからこそ、俺は侯爵という地位にいることを示せた。だからデリスの計画も七割成功したということか」
「はい。失敗した残り三割はレイラ様の過失ですので。誰とも会話されなければ、御令嬢方には優しいなんて希望を持たせずに済みましたのに」
「いや、それもフィリア姉上との話で実質無くなったようなものだろ?」
「今度は名だたる家門の御子息方との見合い話がたくさん来るのでしょうね」
「結婚を強制されたとしても、俺にだって選ぶ権利くらいあるさ。それに、姉上に男と結婚できるかって聞かれたとき、俺はデリスだったら、まぁ、ありかなぁ……なんて考えたくらい、信頼関係がないと嫌だし」
「え……?」
俺はてっきり、「レイラ様と結婚なんて嫌ですよ」って言われるかと思った。けど実際は、デリスは驚きすぎて声が出ないという状況になってしまって、めちゃくちゃ気まずいことになってしまった。沈黙が重たい……。
目を見開いて固まったままのデリスに、俺は慌てて口を開いた。
「い、いや……俺と結婚なんて嫌だよな!ははっ!変な事言ってごめん!」
身体の前で無駄に手を振って、空笑いしながら謝ってみた。いや、ほんとごめんって。
「はぁ……」
「っ……⁉」
ため息を一つついたデリスにもう一度謝ろうとした時、両耳の側でバンっと衝撃音がした。無意識に身体が跳ねる程のその音に驚いて、思わず目を閉じた。閉じた視界のせいで、鋭敏になる感覚。顔に何かが近づいてくる気配がし、耳に柔らかい物が触れた。
「ひゃっ⁉」
「んっ……レイラ様」
「デ、リス……なにを」
「レイラ様、先ほどの質問の答えなのですが」
「へ?」
耳たぶを唇で甘噛みしてきたデリスは、そのままの体勢で話をしようとしてくる。俺の顔の両側にあるデリスの腕。いわゆる壁ドンをされ、何故か耳をデリスの唇で弄られている。この状態で会話すんの⁉てゆうか、さっきの話って何だっけ⁉
「先ほどの「レイラ様に抱かれたいと思うか」という質問です」
「あ、あぁ……んっ、それはもうッ、終わった話だろ……」
「いいえ。まだ私は答えていませんから、終わっていませんよ」
「んんッ……分かったから……いったん離れろっ、ぁんッ……」
いつの間にか俺の耳たぶの形をなぞっていた舌先は、段々と耳の中にまで侵略してきた。くちゅくちゅと、いやらしい気持ちにさせられる水音を注ぎ込んでくる。それがなんだかゾクゾクして、堪らない。
「んっ……このままで聞いてください。この質問に対する私の答えは「いいえ」です」
「そ、だろうなっ!わかってっ⁉ひゃあ!なっ……やめっ」
耳を虐めていたデリスの舌は、そのまま俺の首筋に下りていった。そして、ジュっときつく吸い付かれた。突然の鋭い刺激に驚いて咄嗟に制止をかけたが、これは絶対痕ができてるだろう。なんてこった……。
「おまっ……本当になにを」
「ですが、それはレイラ様が恋愛対象外だからではありません。むしろ、レイラ様と結婚できるなんて、私にとっては夢のような話です。ですから、貴方が私となら結婚してもいいと思ったとおっしゃった時は、驚きと嬉しさで心臓が止まるかと思いました」
ようやく見れたデリスの顔は、びっくりするほど幸福に満ち溢れた表情をしていて……けれど少し苦し気だった。俺はデリスの頬に手を伸ばして触れた。無意識だった。
「けど、俺に抱かれる気はないんだろ?」
「ええ。私はレイラ様との結婚を望んでいますが、貴方の妻になる気はありません。私はレイラ様に「抱かれたい」のではなく、レイラ様を「抱きたい」。つまりは、貴方の夫になりたいのです」
「俺の、夫?」
「はい」と頷いたデリスは、その頬に触れさせたままだった俺の手のひらに、すりすりとその頬を擦り付けてきた。猫のようなその仕草に思わずときめくが、俺を流し見るその視線は獲物を狙う猛獣のような獰猛で俺の心臓を跳ねさせる。
デリスは俺の忠犬のような専属執事だった。ちゃんと主人の過ちを諫められる本当の忠臣。だけど今回のこれは、飼い犬に手を噛まれたってことだろうか。けれど困ったことに、俺の男としての矜持を無視したデリスの言葉を、俺は不快とは感じなかった。
ふと、フィリア姉上の言葉が頭を過ぎった。
『貴方、男と結婚するなら女役だろうなって雰囲気だもの。私には分かるわ』
流石です、姉上。貴女の言う通りでした。
俺、どうやら妻じゃなくて夫をもらうことになりそうです……。
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ここまで来るのが長かった……。
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