来世で独身貴族ライフ楽しんでたら突然子持ちになりました〜息子は主人公と悪役令息〜

こざかな

文字の大きさ
23 / 49
前編

22 SIDE デリス

しおりを挟む
「レイラ様、急に会場からいなくならないでください。探しましたよ」

彼が会場にいないと気づいた時の焦りを、このどこかのほほんとした鈍感な主は絶対に知ることはないだろう。パーティーから抜け出して逢瀬をするスポットとして密かに人気になっている中庭に男と二人きりでいるのを見つけた時の、心臓が暴れ狂いそうな程の嫉妬にも。

「悪い。ちょっと水飲みすぎてトイレに行ってたんだ」
「トイレならこちらとは逆方向では?それにレイラ様、本邸内のことは分からないでしょう。呼んでくださればよかったのに」
「だってデリス、父上と話してただろ。流石に父上に捕まってるときには呼べないって」
「言ったでしょう?私はレイラ様のものです。いかなる時もレイラ様を優先します。私がそうしたいから」
「……なんか照れる」

抜けるように白い頬をほんのりと赤く染めるレイラ様のなんと美しいことか。常のレイラ様は、汚してはならない高貴な存在のような方だ。しかしそんな存在に自分の存在を刻み付けて汚したいと思うのも事実。今のレイラ様は決して手が届かない清らかな存在が地に落ちて欲に染まるかのように禁断な気配の色気を纏っている。本人は単純に照れているだけなのだろう。それでも、これは危険だ。

「レイラ様……」
「あのー、俺のこと忘れてない?」
「……チッ」

おっと失礼。私としたことが。
文字通り私とレイラ様の間に割り込んで来た間男に目を向けると、彼の眼にも嫉妬の火が揺れていた。あぁ、まったく。レイラ様は目を離すと誘蛾灯のように虫を集めてしまう。私の手で磨いた宝石だが、これほどまでに光り輝くとは思わなかった。見せびらかしたいと思うと同時に、誰にも見せたくないとも思う。

「貴方は、騎士団長の椅子が約束されている、国王陛下の覚えもめでたいジェイス・ローレン様ですね。レイラ様のおもりありがとうございました」
「おい、おもりってなんだ!」
「ふーん?俺のこと知ってんだ」
「もちろんですとも。レイラ様とはアカデミーで同級生だったかと。思い出話に花でも咲かせていたのでしょうか。お邪魔してしまったのでしたら申し訳ございません」
「うん。邪魔」
「……えっと」

お互い表面上は笑顔で和やかな表情。しかし口から飛び出るのは嫌味の応酬。レイラ様のことだ。私たちの眼が笑っていないことくらい気づいている。しかしどうしてこのような状況になったのか分からないからどうしようもない。そんな心情が手に取るように分かる。オロオロとしているレイラ様も愛らしいが、これほどまでに素に近い姿を再会したばかりのローレン様にも見せるだなんて。お二人はアカデミー時代にもこれといって接触はなかったと記憶している。これほどまでに急に打ち解けるものだろうか。

どす黒い感情が胸を占める前に、ここを離れることにしよう。パトリック家の屋敷で問題を起こすわけにはいかない。

「レイラ様、伝え忘れていましたが、フィリア様がお呼びです」
「え、ちょっ、なんでそれ伝え忘れるんだよ!マズいじゃんそれぇ‼」

レイラ様の焦りに満ちた声が綺麗な夜空に消えていった。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...