5 / 46
前編
4
しおりを挟む
「おーい、カーディ」
「あ、レイラさん!お仕事終わったの?」
屋敷の裏手に作った訓練場。そこで専属執事を相手に剣の練習をするカーディアスに声をかける。振り返って笑顔で手を振ってきたカーディアスはこの一年で背が伸びた。出会った時はまだ小柄で八歳くらいだと思ってたけど既に10才だった。これまでお貴族様らしく少食だったのを食事の量を増やし、剣の稽古をするようになってからメキメキと背が伸び始めた。あと二・三年後には更に背が伸びるだろう。また成長痛に苦しむんだろうな・・・・・・。成長は喜ばしいことだけど、それは少しかわいそうだ。
「まだ終わっておりません。が、息抜きも必要ですので」
「息抜きが剣の稽古だなんて、ほんと悪魔だよなお前」
「やはり少しでも運動しませんと。やっと少し痩せてこられたのですから」
「わかってるよ・・・・・・」
「でも、僕はレイラさんと一緒に稽古できて嬉しいよ!」
「お前は天使だな。そのまま優しい子に育ってくれ。頼むからグレるなよ・・・・・・」
「少なくとも、レイラ様のようにはグレないでしょうね」
「だからお前は一言多いんだよ!」
手に持った木の剣で襲いかかったが華麗にかわされてしまった。こいつ運動神経もいいから本当ムカつく。カーディアスが笑ってるから許すけど!
その後、俺はカーディアスと一緒に剣を振った。キラキラと汗さえもエフェクトに変えるその天使力は凄い。対して俺は、見苦しさ半端ないことこの上ないに違いない。少し剣を振るだけでも息が荒くなる。アカデミーにいた頃はまだ剣術の授業についていけていたけれど、今はもう無理だ。ニート生活の報い・・・・・・。
「はぁはぁ・・・・・・もう限界。もう無理」
「まぁ、レイラ様にしては頑張った方ですね。お疲れ様です」
「ありがと・・・・・・」
ドサっと訓練場の端にあるベンチに腰掛ける。木とはいえそれなりの重さの物を振り回していたことで、手の平から肩にまで痺れが走る。汗を拭うことすらも難しい。それをデリスが拭ってくれた。
「お前、なんでそんなに余裕なの・・・・・・」
「鍛え方が違うのですよ」
「当たり前だけども。でも何かその台詞カッコいいな・・・・・・」
俺の稽古相手になっていたデリスもそれなりに疲れているはずなのに、汗の一つもかいていなければ息も乱れていない。俺の世話をやく余裕もある。マジすげぇわ。
「レイラさん大丈夫?」
「ん?あぁ・・・・・・」
同じく稽古を切り上げたらしいカーディアスも側に寄ってきて横に座った。汗はかいているが、息はそれほど乱れていない。この1年の稽古の賜物だろう。若いっていいな。
「カーディアス様、こちらを」
「ありがとう」
カーディアスは差し出されたタオルと冷たい水を受け取った。それを差し出したのは、あの勇者選抜戦を勝ち抜いて見事専属執事の座を射止めたザラドだ。最初はぎこちない2人(主にカーディアスが)だったが、今では息も合っているように思える。先程の二人の稽古でもそう感じた。やはり彼にして正解だったな。
ザラドは元々貴族出身の騎士だったが、家が落ちぶれたために爵位を売ることになり平民に落ちたところをパトリック家が拾ったらしい。顔も整っているためメイドからどこぞの貴族の令嬢にまでモテたが、真面目な性格が災いして人間関係の絡れに発展。この辺境に飛ばされたという波乱万丈すぎる人生。
真面目だったことで貴族とはいえ騎士にふさわしい剣術に、貞操観念もしっかりしている。本人は巻き込まれただけの女性関係で揉めたために、恋愛事に苦手意識を持っている。つまり、俺が提示した剣術ができてカーディアスに手を出さないという条件にピッタリ。恋愛事が苦手というのも俺的にポイントが高い。仲間意識的なので。
「ザラドとも、いい関係を築けているようだな」
「え?」
「最初の頃に比べたら雲泥の差だ」
「それは、もう一年も一緒にいるわけですし」
「専属執事は基本的に一生変わらない。だから、相性が凄く大事なんだ。信頼関係が築けるかどうかの決め手だからな。相性が悪ければ、いくら試験を突破したとしても外さなければならなかった。俺的には、ザラドにカーディの専属執事になって欲しかったから、お前たちが仲良くなってくれて嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます」
その性格故に褒められることになれていないのだろう。ザラドは少し顔を赤くして、俺に頭を下げた。
「僕もザラドが専属になってくれて良かったと思ってるよ。ザラドは勉強も剣術も得意なんです。他にも色々できますし、かっこいいなって思います」
「カーディアス様・・・・・・!」
感激って言葉が似合う表情をしているザラド。あれは、前世の幼馴染が弟に尊敬してる兄貴って言われた時の反応と似ている・・・・・・。やはり君にして良かったよ。
「カーディアス様とザラドが専属としての相性が良いのであれば、私とレイラ様の相性は最高なのでしょうね。嬉しいです」
「ザラド、お前はこんな自己肯定感の塊みたいな奴にはなるなよ」
「はぁ・・・・・・」
「せめて前向きな性格と言ってください」
「あ、レイラさん!お仕事終わったの?」
屋敷の裏手に作った訓練場。そこで専属執事を相手に剣の練習をするカーディアスに声をかける。振り返って笑顔で手を振ってきたカーディアスはこの一年で背が伸びた。出会った時はまだ小柄で八歳くらいだと思ってたけど既に10才だった。これまでお貴族様らしく少食だったのを食事の量を増やし、剣の稽古をするようになってからメキメキと背が伸び始めた。あと二・三年後には更に背が伸びるだろう。また成長痛に苦しむんだろうな・・・・・・。成長は喜ばしいことだけど、それは少しかわいそうだ。
「まだ終わっておりません。が、息抜きも必要ですので」
「息抜きが剣の稽古だなんて、ほんと悪魔だよなお前」
「やはり少しでも運動しませんと。やっと少し痩せてこられたのですから」
「わかってるよ・・・・・・」
「でも、僕はレイラさんと一緒に稽古できて嬉しいよ!」
「お前は天使だな。そのまま優しい子に育ってくれ。頼むからグレるなよ・・・・・・」
「少なくとも、レイラ様のようにはグレないでしょうね」
「だからお前は一言多いんだよ!」
手に持った木の剣で襲いかかったが華麗にかわされてしまった。こいつ運動神経もいいから本当ムカつく。カーディアスが笑ってるから許すけど!
その後、俺はカーディアスと一緒に剣を振った。キラキラと汗さえもエフェクトに変えるその天使力は凄い。対して俺は、見苦しさ半端ないことこの上ないに違いない。少し剣を振るだけでも息が荒くなる。アカデミーにいた頃はまだ剣術の授業についていけていたけれど、今はもう無理だ。ニート生活の報い・・・・・・。
「はぁはぁ・・・・・・もう限界。もう無理」
「まぁ、レイラ様にしては頑張った方ですね。お疲れ様です」
「ありがと・・・・・・」
ドサっと訓練場の端にあるベンチに腰掛ける。木とはいえそれなりの重さの物を振り回していたことで、手の平から肩にまで痺れが走る。汗を拭うことすらも難しい。それをデリスが拭ってくれた。
「お前、なんでそんなに余裕なの・・・・・・」
「鍛え方が違うのですよ」
「当たり前だけども。でも何かその台詞カッコいいな・・・・・・」
俺の稽古相手になっていたデリスもそれなりに疲れているはずなのに、汗の一つもかいていなければ息も乱れていない。俺の世話をやく余裕もある。マジすげぇわ。
「レイラさん大丈夫?」
「ん?あぁ・・・・・・」
同じく稽古を切り上げたらしいカーディアスも側に寄ってきて横に座った。汗はかいているが、息はそれほど乱れていない。この1年の稽古の賜物だろう。若いっていいな。
「カーディアス様、こちらを」
「ありがとう」
カーディアスは差し出されたタオルと冷たい水を受け取った。それを差し出したのは、あの勇者選抜戦を勝ち抜いて見事専属執事の座を射止めたザラドだ。最初はぎこちない2人(主にカーディアスが)だったが、今では息も合っているように思える。先程の二人の稽古でもそう感じた。やはり彼にして正解だったな。
ザラドは元々貴族出身の騎士だったが、家が落ちぶれたために爵位を売ることになり平民に落ちたところをパトリック家が拾ったらしい。顔も整っているためメイドからどこぞの貴族の令嬢にまでモテたが、真面目な性格が災いして人間関係の絡れに発展。この辺境に飛ばされたという波乱万丈すぎる人生。
真面目だったことで貴族とはいえ騎士にふさわしい剣術に、貞操観念もしっかりしている。本人は巻き込まれただけの女性関係で揉めたために、恋愛事に苦手意識を持っている。つまり、俺が提示した剣術ができてカーディアスに手を出さないという条件にピッタリ。恋愛事が苦手というのも俺的にポイントが高い。仲間意識的なので。
「ザラドとも、いい関係を築けているようだな」
「え?」
「最初の頃に比べたら雲泥の差だ」
「それは、もう一年も一緒にいるわけですし」
「専属執事は基本的に一生変わらない。だから、相性が凄く大事なんだ。信頼関係が築けるかどうかの決め手だからな。相性が悪ければ、いくら試験を突破したとしても外さなければならなかった。俺的には、ザラドにカーディの専属執事になって欲しかったから、お前たちが仲良くなってくれて嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます」
その性格故に褒められることになれていないのだろう。ザラドは少し顔を赤くして、俺に頭を下げた。
「僕もザラドが専属になってくれて良かったと思ってるよ。ザラドは勉強も剣術も得意なんです。他にも色々できますし、かっこいいなって思います」
「カーディアス様・・・・・・!」
感激って言葉が似合う表情をしているザラド。あれは、前世の幼馴染が弟に尊敬してる兄貴って言われた時の反応と似ている・・・・・・。やはり君にして良かったよ。
「カーディアス様とザラドが専属としての相性が良いのであれば、私とレイラ様の相性は最高なのでしょうね。嬉しいです」
「ザラド、お前はこんな自己肯定感の塊みたいな奴にはなるなよ」
「はぁ・・・・・・」
「せめて前向きな性格と言ってください」
298
お気に入りに追加
3,766
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる