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前編
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「おーい、カーディ」
「あ、レイラさん!お仕事終わったの?」
屋敷の裏手に作った訓練場。そこで専属執事を相手に剣の練習をするカーディアスに声をかける。振り返って笑顔で手を振ってきたカーディアスはこの一年で背が伸びた。出会った時はまだ小柄で八歳くらいだと思ってたけど既に10才だった。これまでお貴族様らしく少食だったのを食事の量を増やし、剣の稽古をするようになってからメキメキと背が伸び始めた。あと二・三年後には更に背が伸びるだろう。また成長痛に苦しむんだろうな・・・・・・。成長は喜ばしいことだけど、それは少しかわいそうだ。
「まだ終わっておりません。が、息抜きも必要ですので」
「息抜きが剣の稽古だなんて、ほんと悪魔だよなお前」
「やはり少しでも運動しませんと。やっと少し痩せてこられたのですから」
「わかってるよ・・・・・・」
「でも、僕はレイラさんと一緒に稽古できて嬉しいよ!」
「お前は天使だな。そのまま優しい子に育ってくれ。頼むからグレるなよ・・・・・・」
「少なくとも、レイラ様のようにはグレないでしょうね」
「だからお前は一言多いんだよ!」
手に持った木の剣で襲いかかったが華麗にかわされてしまった。こいつ運動神経もいいから本当ムカつく。カーディアスが笑ってるから許すけど!
その後、俺はカーディアスと一緒に剣を振った。キラキラと汗さえもエフェクトに変えるその天使力は凄い。対して俺は、見苦しさ半端ないことこの上ないに違いない。少し剣を振るだけでも息が荒くなる。アカデミーにいた頃はまだ剣術の授業についていけていたけれど、今はもう無理だ。ニート生活の報い・・・・・・。
「はぁはぁ・・・・・・もう限界。もう無理」
「まぁ、レイラ様にしては頑張った方ですね。お疲れ様です」
「ありがと・・・・・・」
ドサっと訓練場の端にあるベンチに腰掛ける。木とはいえそれなりの重さの物を振り回していたことで、手の平から肩にまで痺れが走る。汗を拭うことすらも難しい。それをデリスが拭ってくれた。
「お前、なんでそんなに余裕なの・・・・・・」
「鍛え方が違うのですよ」
「当たり前だけども。でも何かその台詞カッコいいな・・・・・・」
俺の稽古相手になっていたデリスもそれなりに疲れているはずなのに、汗の一つもかいていなければ息も乱れていない。俺の世話をやく余裕もある。マジすげぇわ。
「レイラさん大丈夫?」
「ん?あぁ・・・・・・」
同じく稽古を切り上げたらしいカーディアスも側に寄ってきて横に座った。汗はかいているが、息はそれほど乱れていない。この1年の稽古の賜物だろう。若いっていいな。
「カーディアス様、こちらを」
「ありがとう」
カーディアスは差し出されたタオルと冷たい水を受け取った。それを差し出したのは、あの勇者選抜戦を勝ち抜いて見事専属執事の座を射止めたザラドだ。最初はぎこちない2人(主にカーディアスが)だったが、今では息も合っているように思える。先程の二人の稽古でもそう感じた。やはり彼にして正解だったな。
ザラドは元々貴族出身の騎士だったが、家が落ちぶれたために爵位を売ることになり平民に落ちたところをパトリック家が拾ったらしい。顔も整っているためメイドからどこぞの貴族の令嬢にまでモテたが、真面目な性格が災いして人間関係の絡れに発展。この辺境に飛ばされたという波乱万丈すぎる人生。
真面目だったことで貴族とはいえ騎士にふさわしい剣術に、貞操観念もしっかりしている。本人は巻き込まれただけの女性関係で揉めたために、恋愛事に苦手意識を持っている。つまり、俺が提示した剣術ができてカーディアスに手を出さないという条件にピッタリ。恋愛事が苦手というのも俺的にポイントが高い。仲間意識的なので。
「ザラドとも、いい関係を築けているようだな」
「え?」
「最初の頃に比べたら雲泥の差だ」
「それは、もう一年も一緒にいるわけですし」
「専属執事は基本的に一生変わらない。だから、相性が凄く大事なんだ。信頼関係が築けるかどうかの決め手だからな。相性が悪ければ、いくら試験を突破したとしても外さなければならなかった。俺的には、ザラドにカーディの専属執事になって欲しかったから、お前たちが仲良くなってくれて嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます」
その性格故に褒められることになれていないのだろう。ザラドは少し顔を赤くして、俺に頭を下げた。
「僕もザラドが専属になってくれて良かったと思ってるよ。ザラドは勉強も剣術も得意なんです。他にも色々できますし、かっこいいなって思います」
「カーディアス様・・・・・・!」
感激って言葉が似合う表情をしているザラド。あれは、前世の幼馴染が弟に尊敬してる兄貴って言われた時の反応と似ている・・・・・・。やはり君にして良かったよ。
「カーディアス様とザラドが専属としての相性が良いのであれば、私とレイラ様の相性は最高なのでしょうね。嬉しいです」
「ザラド、お前はこんな自己肯定感の塊みたいな奴にはなるなよ」
「はぁ・・・・・・」
「せめて前向きな性格と言ってください」
「あ、レイラさん!お仕事終わったの?」
屋敷の裏手に作った訓練場。そこで専属執事を相手に剣の練習をするカーディアスに声をかける。振り返って笑顔で手を振ってきたカーディアスはこの一年で背が伸びた。出会った時はまだ小柄で八歳くらいだと思ってたけど既に10才だった。これまでお貴族様らしく少食だったのを食事の量を増やし、剣の稽古をするようになってからメキメキと背が伸び始めた。あと二・三年後には更に背が伸びるだろう。また成長痛に苦しむんだろうな・・・・・・。成長は喜ばしいことだけど、それは少しかわいそうだ。
「まだ終わっておりません。が、息抜きも必要ですので」
「息抜きが剣の稽古だなんて、ほんと悪魔だよなお前」
「やはり少しでも運動しませんと。やっと少し痩せてこられたのですから」
「わかってるよ・・・・・・」
「でも、僕はレイラさんと一緒に稽古できて嬉しいよ!」
「お前は天使だな。そのまま優しい子に育ってくれ。頼むからグレるなよ・・・・・・」
「少なくとも、レイラ様のようにはグレないでしょうね」
「だからお前は一言多いんだよ!」
手に持った木の剣で襲いかかったが華麗にかわされてしまった。こいつ運動神経もいいから本当ムカつく。カーディアスが笑ってるから許すけど!
その後、俺はカーディアスと一緒に剣を振った。キラキラと汗さえもエフェクトに変えるその天使力は凄い。対して俺は、見苦しさ半端ないことこの上ないに違いない。少し剣を振るだけでも息が荒くなる。アカデミーにいた頃はまだ剣術の授業についていけていたけれど、今はもう無理だ。ニート生活の報い・・・・・・。
「はぁはぁ・・・・・・もう限界。もう無理」
「まぁ、レイラ様にしては頑張った方ですね。お疲れ様です」
「ありがと・・・・・・」
ドサっと訓練場の端にあるベンチに腰掛ける。木とはいえそれなりの重さの物を振り回していたことで、手の平から肩にまで痺れが走る。汗を拭うことすらも難しい。それをデリスが拭ってくれた。
「お前、なんでそんなに余裕なの・・・・・・」
「鍛え方が違うのですよ」
「当たり前だけども。でも何かその台詞カッコいいな・・・・・・」
俺の稽古相手になっていたデリスもそれなりに疲れているはずなのに、汗の一つもかいていなければ息も乱れていない。俺の世話をやく余裕もある。マジすげぇわ。
「レイラさん大丈夫?」
「ん?あぁ・・・・・・」
同じく稽古を切り上げたらしいカーディアスも側に寄ってきて横に座った。汗はかいているが、息はそれほど乱れていない。この1年の稽古の賜物だろう。若いっていいな。
「カーディアス様、こちらを」
「ありがとう」
カーディアスは差し出されたタオルと冷たい水を受け取った。それを差し出したのは、あの勇者選抜戦を勝ち抜いて見事専属執事の座を射止めたザラドだ。最初はぎこちない2人(主にカーディアスが)だったが、今では息も合っているように思える。先程の二人の稽古でもそう感じた。やはり彼にして正解だったな。
ザラドは元々貴族出身の騎士だったが、家が落ちぶれたために爵位を売ることになり平民に落ちたところをパトリック家が拾ったらしい。顔も整っているためメイドからどこぞの貴族の令嬢にまでモテたが、真面目な性格が災いして人間関係の絡れに発展。この辺境に飛ばされたという波乱万丈すぎる人生。
真面目だったことで貴族とはいえ騎士にふさわしい剣術に、貞操観念もしっかりしている。本人は巻き込まれただけの女性関係で揉めたために、恋愛事に苦手意識を持っている。つまり、俺が提示した剣術ができてカーディアスに手を出さないという条件にピッタリ。恋愛事が苦手というのも俺的にポイントが高い。仲間意識的なので。
「ザラドとも、いい関係を築けているようだな」
「え?」
「最初の頃に比べたら雲泥の差だ」
「それは、もう一年も一緒にいるわけですし」
「専属執事は基本的に一生変わらない。だから、相性が凄く大事なんだ。信頼関係が築けるかどうかの決め手だからな。相性が悪ければ、いくら試験を突破したとしても外さなければならなかった。俺的には、ザラドにカーディの専属執事になって欲しかったから、お前たちが仲良くなってくれて嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます」
その性格故に褒められることになれていないのだろう。ザラドは少し顔を赤くして、俺に頭を下げた。
「僕もザラドが専属になってくれて良かったと思ってるよ。ザラドは勉強も剣術も得意なんです。他にも色々できますし、かっこいいなって思います」
「カーディアス様・・・・・・!」
感激って言葉が似合う表情をしているザラド。あれは、前世の幼馴染が弟に尊敬してる兄貴って言われた時の反応と似ている・・・・・・。やはり君にして良かったよ。
「カーディアス様とザラドが専属としての相性が良いのであれば、私とレイラ様の相性は最高なのでしょうね。嬉しいです」
「ザラド、お前はこんな自己肯定感の塊みたいな奴にはなるなよ」
「はぁ・・・・・・」
「せめて前向きな性格と言ってください」
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