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第八話 炎の輪舞曲―薫・前編―
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インバネスコートに身を包んだ俺は、洋装で銀座の町を歩いていた。明治に『銀座大火』で消失してから、このあたりはすっかり建物も洋風らしくなっている。
品川あたりの女衒とは異なり、新橋の花柳界は芸達者で、品があり、高官たちがひいきにしては妾を作っていると聞いていた。
俺は、すでに花街から卒業していたし愛らしいメアリーを抱いてから、なおさら他の女に対して興味を失ってる。華やいだ夜の街もただうるさいだけの玩具箱ように思えてしまうよ。
嗚呼、今だってこの面倒な仕事を早く終えたら、天使のようなあの子の肌にむしゃぶりつきたいと思ってる。
銀座にはフルーツパーラーがあるし、メアリーに食べさせてやろう。
…………そう言えば図書館に行くと書生と話していたなぁ。
あいつと行く前に、俺が連れて行ってやらなくちゃあ……。だって腹立たしいじゃないかぁ、メアリーは俺の物なんだからね。
それにしてもメアリー、なんて君は無垢で可憐で可愛らしいんだろう。
柔らかな唇も、髪も、陰部も接吻すると甘くて柔らかい……砂糖菓子のお姫様みたいなんだ。
きっと、汚い者達から隔離されていたお陰だね、そこだけは書生に感謝しているんだ。
さて、早々に仕事を終わらせよう。
俺の計算通りなら、あと数分で獲物が帰ってくるはずだ。
「き、君はいったいどこから入ったんだ! まさか房江の間男か? 房江はどこにいるんだ」
部屋に入った瞬間、見知らぬ男が書斎の椅子に座っていた事に驚いた様子で、獲物はずれ落ちた丸眼鏡を直した。
嗚呼、なんてみっともない。
なんという慌てようだろうか。
妾の家に若い男がいたのだから、動揺するのも無理はないのかな。
この屋敷は囲いの家にしてはそこそこ広く、立派で、モダンな巴里の家具も置いてあるし、ずいぶんと若い女に入れ込んでいるように思えた。
俺は微笑みを浮べ、慌てる事もなく話を続ける事にする。
「安心して下さい、中條さん。貴方の妾の房江さんには、友人の家に泊まって頂いております。貴方も薄々感づいていらっしゃるのでは?」
「…………浮気をネタに私をゆすろうと言うのかね。君は小新聞専門の記者か何かか?」
妾の愛人でないとわかると、中條は胸を撫で下ろして議院政治家らしい尊大な態度に出る。
どうやら、小新聞の記者と勘違いされているようだ。それとも、しらばっくれているのか……俺は構わず話を続けた。
「いいえ、中條さん。貴方は日報社の記者に良からぬ事を吹き込もうとしましたね。我々としては何度も貴方に忠告をしましたが、耳を貸さなかった。
政権敵を陥れるためだけなら、まだ見逃されていたかも知れませんが……帝国の機密事項まであの記者に漏らしましたね」
中條の顔がサッと面白いくらいに一気に青ざめるのが分かった。
日報社の記者をしていた男は日本人だが、金のために、海外に情報を売ると言う売国奴の裏稼業をしていた。
すでにもう、ここに来る前に始末はしたけれど。
「い、いや、私はそんな……!! 確かにあの男に汚職の件は話したが、私は大日本帝国を裏切るような真似はしていない!」
「貴方は、あの男が用意したお好きな酒に酔って、口車に乗せられ話してしまったのですよ。本当に愚かだ……。もう貴方は取り返しのつかない所まで来てしまっていたのに」
「ま、待ちたまえ! 本当にそんなつもりは無かったんだ! 命を助けてくれるなら汚職の件も書かせるのを辞める! 私を逃してくれるならば今貰っている倍の金を払おう」
俺がどういう人間なのか、彼にも理解できたようだ。
誰もが死の瞬間は命乞いをする。
だけど帝国を裏切って、獲物である彼から金銭を受け取った所で、俺たちになんの得にもならないよね。
そう思うと笑いが込み上げてきた。
だって政府は俺とメアリーのために屋敷と人生を用意してくれた。
言われるがままに邪魔者を排除すれば、彼女との愛と生活を保証してくれるんだから。
「――――残念ですが、死んでください」
俺がそういった瞬間、中條の体は全身炎に包まれ悲鳴を上げる間もなく倒れ込んだ。
その火はやがて、カーテンや家具に燃え移り任務を完了した俺はゆっくりと椅子から立ち上がると、炎の中を割くようにして玄関から出た。
あっという間に燃え広がり、火事に気が付いた近所が慌ただしくなる様子を無視してあの日の事を思い出していた。
――――あの子はやっぱりおかしいわ。まるで化け物みたい……本当に私たちの子なんですの? 産婆が取り違えたんじゃないかしら。
深刻そうに父と話し込む母。
普段の父なら、激昂して母を怒鳴り散らしていただろうが、不自然に、早々に話を切り変え部屋から出ていった。
あの男なりに、なにか俺に異変を感じていたのかも知れないね。
初めて俺の意思で炎を扱えると知ったとき、俺は嬉しくて純粋に、母を驚かせようと考えて蝋燭に火を付けてみた。
だが、母の反応は俺が予想しているものとは異なっていた。あの時の母の怯えようは今でも心に刻み込まれている。
まるで俺を、異質な化け物を見るような目付きで見ていたことを一生忘れられないだろう。
あの日、俺は嫌でも『普通ではない』と言うことを認識させられたよ。
俺が父に折檻されても庇わなかったのは俺を自分の子では無く、化け物だと思ったからなのかもしれない。
叔母と俺との関係も薄々気付いていたようだが、見て見ぬ振りをする。
―――嗚呼、そうだよ。
俺は呪われた悪魔の申し子なのだ。
炎は美しく、焼け落ちる人間を眺めるのは楽しいとさえ思っているよ。
だからね、貴女の望むような化け物になってあげるよ、母さん。
『ねぇ、貴方。女中が噂していたのだけどあの異人の娘とふしだらな事をしていらっしゃるの? あの子が姙娠して、そんな事が噂にでもなったら妃咲家の恥になります。
あの子をどこかに連れて行くか、早く小春さんとの縁談を決めなさい』
絶対に許せない発言だった。
メアリーをどこかに連れて行くなんて考えられるかい?
あの愛らしい砂糖菓子のお姫様は俺の大切な宝物なんだよ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!
あの愛らしい瞳も唇もキラキラ輝く無垢な魂も、ぜんぶぜんぶ俺のものなのに。
許嫁の小春と結婚させてメアリーを女衒にでも連れて行くつもりかい?
『――――絶対に嫌だ。俺からメアリーを引き離すなんて、母さんたちでも許さないですよ』
俺の言葉に怯えたように、母親もその時は引き下がったのに。
父と母が俺に黙ってメアリーを連れ出そうと考えていた事を知って、許せなかった。
火柱の中で揺れる二人を気づけば笑いながら眺めていた。
さようなら、父さん、母さん。
貴方たちを愛した事なんて一度もなかったけれど、最後は綺麗な炎に焼かれて、この屋敷も美しい紅蓮のようだ。
俺はメアリーと新しい世界を生きるよ。
一也も書生も疎ましいけど、生きていくには彼らも必要だからね。
けれど、メアリー……誰よりも俺が君を愛しているんだから、そこは譲れないよ。
だってあいつらは、君のために人は殺さないでしょう?
「嗚呼、はやくメアリーに逢いたいな。肌の香りを嗅がないと安心できないよ」
俺は笑いを抑えながらホテルへと向かった。
✤✤✤
翌日、メアリーが遅い時間に目を擦りながら起き上がると、待ってましたと言わんばかりに、背後から抱きしめて耳元で囁いた。
柔らかな髪から甘い香りがして、このまま彼女を抱いてしまいたくなるけど、今日は少々面白い計画を立てているので我慢しよう。
「おはよう、メアリー。今日は俺が帝国図書館に連れて行ってあげるよ。書生じゃないから嫌だ……なんて言わないよね」
「……? 薫様? う、うん……図書館に連れて行ってくれるの? たくさん御本があるところだよね、嬉しい」
俺の突然の申し出に、少し戸惑いはしたものの本の誘惑に勝てそうに無いようで、綺麗な青の硝子玉のような瞳をキラキラと輝かせている。
俺はそんなメアリーの肌襦袢の上に、女学生の袴を重ねるようにして押し付けると目を見開き不思議そうに首を傾げた。
東京を歩いていると、何人かの女学生とすれ違った。彼女たちのことを思い出して、俺を見つめてくるメアリーの額に口付けた。
「図書館に女学生が居ても何もおかしくないからね。まぁ、メアリーは目立つけれど、留学生だと思われるかも知れないな。実際、欧羅巴へ芸術や学問を学びに行く女性もいる事だしね」
「じょがくせいさん? 街で見かけた女の子と同じ……可愛い、ありがとう薫様、あの、これはどうやって着るの?」
「俺が着せてあげるよ、髪も三編みに編んであげよう」
紺の行灯袴に、白と桃色の矢絣模様、金髪の癖毛を三編みに編むと、本当に女学生のようになる。
履きなれない洋靴に戸惑いながら、恥しそうにもじもじする姿が愛らしい。
「慣れないから……恥ずかしい。私、おかしくない?」
「とっても良く似合っているし可愛いよ。ああ、そうだ……心配だから、メアリーにはこれが必要かな」
小さな木の張り型に、布生地の紐がついた下着を彼女に見せた。当然、それが何なのかわからず、無垢な瞳を俺に向けて首を傾げた。
二本指程度の小さな張り型を持つと、ぺろりと舌で舐め、メアリーの行灯袴をめくり上げた。
「きゃっ! なぁに? 薫……様、何するの? と、図書館に行くから『まぐわい』は今はいやっ……」
「まぐわい? どこでそんなふしだらな言葉を……あぁ~~書生かぁ。妬けちゃうね……やっぱり君にはこれが必要だなぁ、メアリー。
可愛いあそこに力を入れて、俺の命令通りこれを落とさないようにしてごらん……」
「ひぁっ、やっ、やぁっ……! はぅ、なぁに、これ……薫様、ぬ、抜いて、つめたぁい」
唾液で湿らせた小さな張り型で可憐な入り口を蓋するように挿入すると、メアリーは真っ赤になり戸惑って泣きそうな掠れた声を上げる。
それに構わず、月経帯の下着をつけると横紐を結んだ。
羞恥心に瞳を潤ませるメアリーを見ると、危うく、理性を失ってしまいそうになったが、淫靡に微笑みかけた。
「月経の下着で抑えてるけど、メアリーが濡らしたら、いやらしい張り型が袴から転がり落ちゃうなぁ。
街中や図書館でそんな目に合うのはあまりにも恥ずかし過ぎるんじゃないかい? だから、歩きながら膣に力を入れてごらん……俺がちゃんと側にいて、肩を抱いていてあげるからね」
今にも泣き出しそうだったが、観念し耳まで赤らめながら無垢なメアリーが頷く。
嗚呼、可愛いな……。
食べてしまいたいくらい愛してる。
俺の挿れた張り型を、必死に落とさないようにして歩く、健気なメアリーを考えるだけで射精してしまいそうだ。
「さぁ、行こうかメアリー。落さないようにいい子にできたら、フルーツパーラーを食べさせてあげるからね」
品川あたりの女衒とは異なり、新橋の花柳界は芸達者で、品があり、高官たちがひいきにしては妾を作っていると聞いていた。
俺は、すでに花街から卒業していたし愛らしいメアリーを抱いてから、なおさら他の女に対して興味を失ってる。華やいだ夜の街もただうるさいだけの玩具箱ように思えてしまうよ。
嗚呼、今だってこの面倒な仕事を早く終えたら、天使のようなあの子の肌にむしゃぶりつきたいと思ってる。
銀座にはフルーツパーラーがあるし、メアリーに食べさせてやろう。
…………そう言えば図書館に行くと書生と話していたなぁ。
あいつと行く前に、俺が連れて行ってやらなくちゃあ……。だって腹立たしいじゃないかぁ、メアリーは俺の物なんだからね。
それにしてもメアリー、なんて君は無垢で可憐で可愛らしいんだろう。
柔らかな唇も、髪も、陰部も接吻すると甘くて柔らかい……砂糖菓子のお姫様みたいなんだ。
きっと、汚い者達から隔離されていたお陰だね、そこだけは書生に感謝しているんだ。
さて、早々に仕事を終わらせよう。
俺の計算通りなら、あと数分で獲物が帰ってくるはずだ。
「き、君はいったいどこから入ったんだ! まさか房江の間男か? 房江はどこにいるんだ」
部屋に入った瞬間、見知らぬ男が書斎の椅子に座っていた事に驚いた様子で、獲物はずれ落ちた丸眼鏡を直した。
嗚呼、なんてみっともない。
なんという慌てようだろうか。
妾の家に若い男がいたのだから、動揺するのも無理はないのかな。
この屋敷は囲いの家にしてはそこそこ広く、立派で、モダンな巴里の家具も置いてあるし、ずいぶんと若い女に入れ込んでいるように思えた。
俺は微笑みを浮べ、慌てる事もなく話を続ける事にする。
「安心して下さい、中條さん。貴方の妾の房江さんには、友人の家に泊まって頂いております。貴方も薄々感づいていらっしゃるのでは?」
「…………浮気をネタに私をゆすろうと言うのかね。君は小新聞専門の記者か何かか?」
妾の愛人でないとわかると、中條は胸を撫で下ろして議院政治家らしい尊大な態度に出る。
どうやら、小新聞の記者と勘違いされているようだ。それとも、しらばっくれているのか……俺は構わず話を続けた。
「いいえ、中條さん。貴方は日報社の記者に良からぬ事を吹き込もうとしましたね。我々としては何度も貴方に忠告をしましたが、耳を貸さなかった。
政権敵を陥れるためだけなら、まだ見逃されていたかも知れませんが……帝国の機密事項まであの記者に漏らしましたね」
中條の顔がサッと面白いくらいに一気に青ざめるのが分かった。
日報社の記者をしていた男は日本人だが、金のために、海外に情報を売ると言う売国奴の裏稼業をしていた。
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「い、いや、私はそんな……!! 確かにあの男に汚職の件は話したが、私は大日本帝国を裏切るような真似はしていない!」
「貴方は、あの男が用意したお好きな酒に酔って、口車に乗せられ話してしまったのですよ。本当に愚かだ……。もう貴方は取り返しのつかない所まで来てしまっていたのに」
「ま、待ちたまえ! 本当にそんなつもりは無かったんだ! 命を助けてくれるなら汚職の件も書かせるのを辞める! 私を逃してくれるならば今貰っている倍の金を払おう」
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だけど帝国を裏切って、獲物である彼から金銭を受け取った所で、俺たちになんの得にもならないよね。
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だって政府は俺とメアリーのために屋敷と人生を用意してくれた。
言われるがままに邪魔者を排除すれば、彼女との愛と生活を保証してくれるんだから。
「――――残念ですが、死んでください」
俺がそういった瞬間、中條の体は全身炎に包まれ悲鳴を上げる間もなく倒れ込んだ。
その火はやがて、カーテンや家具に燃え移り任務を完了した俺はゆっくりと椅子から立ち上がると、炎の中を割くようにして玄関から出た。
あっという間に燃え広がり、火事に気が付いた近所が慌ただしくなる様子を無視してあの日の事を思い出していた。
――――あの子はやっぱりおかしいわ。まるで化け物みたい……本当に私たちの子なんですの? 産婆が取り違えたんじゃないかしら。
深刻そうに父と話し込む母。
普段の父なら、激昂して母を怒鳴り散らしていただろうが、不自然に、早々に話を切り変え部屋から出ていった。
あの男なりに、なにか俺に異変を感じていたのかも知れないね。
初めて俺の意思で炎を扱えると知ったとき、俺は嬉しくて純粋に、母を驚かせようと考えて蝋燭に火を付けてみた。
だが、母の反応は俺が予想しているものとは異なっていた。あの時の母の怯えようは今でも心に刻み込まれている。
まるで俺を、異質な化け物を見るような目付きで見ていたことを一生忘れられないだろう。
あの日、俺は嫌でも『普通ではない』と言うことを認識させられたよ。
俺が父に折檻されても庇わなかったのは俺を自分の子では無く、化け物だと思ったからなのかもしれない。
叔母と俺との関係も薄々気付いていたようだが、見て見ぬ振りをする。
―――嗚呼、そうだよ。
俺は呪われた悪魔の申し子なのだ。
炎は美しく、焼け落ちる人間を眺めるのは楽しいとさえ思っているよ。
だからね、貴女の望むような化け物になってあげるよ、母さん。
『ねぇ、貴方。女中が噂していたのだけどあの異人の娘とふしだらな事をしていらっしゃるの? あの子が姙娠して、そんな事が噂にでもなったら妃咲家の恥になります。
あの子をどこかに連れて行くか、早く小春さんとの縁談を決めなさい』
絶対に許せない発言だった。
メアリーをどこかに連れて行くなんて考えられるかい?
あの愛らしい砂糖菓子のお姫様は俺の大切な宝物なんだよ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!
あの愛らしい瞳も唇もキラキラ輝く無垢な魂も、ぜんぶぜんぶ俺のものなのに。
許嫁の小春と結婚させてメアリーを女衒にでも連れて行くつもりかい?
『――――絶対に嫌だ。俺からメアリーを引き離すなんて、母さんたちでも許さないですよ』
俺の言葉に怯えたように、母親もその時は引き下がったのに。
父と母が俺に黙ってメアリーを連れ出そうと考えていた事を知って、許せなかった。
火柱の中で揺れる二人を気づけば笑いながら眺めていた。
さようなら、父さん、母さん。
貴方たちを愛した事なんて一度もなかったけれど、最後は綺麗な炎に焼かれて、この屋敷も美しい紅蓮のようだ。
俺はメアリーと新しい世界を生きるよ。
一也も書生も疎ましいけど、生きていくには彼らも必要だからね。
けれど、メアリー……誰よりも俺が君を愛しているんだから、そこは譲れないよ。
だってあいつらは、君のために人は殺さないでしょう?
「嗚呼、はやくメアリーに逢いたいな。肌の香りを嗅がないと安心できないよ」
俺は笑いを抑えながらホテルへと向かった。
✤✤✤
翌日、メアリーが遅い時間に目を擦りながら起き上がると、待ってましたと言わんばかりに、背後から抱きしめて耳元で囁いた。
柔らかな髪から甘い香りがして、このまま彼女を抱いてしまいたくなるけど、今日は少々面白い計画を立てているので我慢しよう。
「おはよう、メアリー。今日は俺が帝国図書館に連れて行ってあげるよ。書生じゃないから嫌だ……なんて言わないよね」
「……? 薫様? う、うん……図書館に連れて行ってくれるの? たくさん御本があるところだよね、嬉しい」
俺の突然の申し出に、少し戸惑いはしたものの本の誘惑に勝てそうに無いようで、綺麗な青の硝子玉のような瞳をキラキラと輝かせている。
俺はそんなメアリーの肌襦袢の上に、女学生の袴を重ねるようにして押し付けると目を見開き不思議そうに首を傾げた。
東京を歩いていると、何人かの女学生とすれ違った。彼女たちのことを思い出して、俺を見つめてくるメアリーの額に口付けた。
「図書館に女学生が居ても何もおかしくないからね。まぁ、メアリーは目立つけれど、留学生だと思われるかも知れないな。実際、欧羅巴へ芸術や学問を学びに行く女性もいる事だしね」
「じょがくせいさん? 街で見かけた女の子と同じ……可愛い、ありがとう薫様、あの、これはどうやって着るの?」
「俺が着せてあげるよ、髪も三編みに編んであげよう」
紺の行灯袴に、白と桃色の矢絣模様、金髪の癖毛を三編みに編むと、本当に女学生のようになる。
履きなれない洋靴に戸惑いながら、恥しそうにもじもじする姿が愛らしい。
「慣れないから……恥ずかしい。私、おかしくない?」
「とっても良く似合っているし可愛いよ。ああ、そうだ……心配だから、メアリーにはこれが必要かな」
小さな木の張り型に、布生地の紐がついた下着を彼女に見せた。当然、それが何なのかわからず、無垢な瞳を俺に向けて首を傾げた。
二本指程度の小さな張り型を持つと、ぺろりと舌で舐め、メアリーの行灯袴をめくり上げた。
「きゃっ! なぁに? 薫……様、何するの? と、図書館に行くから『まぐわい』は今はいやっ……」
「まぐわい? どこでそんなふしだらな言葉を……あぁ~~書生かぁ。妬けちゃうね……やっぱり君にはこれが必要だなぁ、メアリー。
可愛いあそこに力を入れて、俺の命令通りこれを落とさないようにしてごらん……」
「ひぁっ、やっ、やぁっ……! はぅ、なぁに、これ……薫様、ぬ、抜いて、つめたぁい」
唾液で湿らせた小さな張り型で可憐な入り口を蓋するように挿入すると、メアリーは真っ赤になり戸惑って泣きそうな掠れた声を上げる。
それに構わず、月経帯の下着をつけると横紐を結んだ。
羞恥心に瞳を潤ませるメアリーを見ると、危うく、理性を失ってしまいそうになったが、淫靡に微笑みかけた。
「月経の下着で抑えてるけど、メアリーが濡らしたら、いやらしい張り型が袴から転がり落ちゃうなぁ。
街中や図書館でそんな目に合うのはあまりにも恥ずかし過ぎるんじゃないかい? だから、歩きながら膣に力を入れてごらん……俺がちゃんと側にいて、肩を抱いていてあげるからね」
今にも泣き出しそうだったが、観念し耳まで赤らめながら無垢なメアリーが頷く。
嗚呼、可愛いな……。
食べてしまいたいくらい愛してる。
俺の挿れた張り型を、必死に落とさないようにして歩く、健気なメアリーを考えるだけで射精してしまいそうだ。
「さぁ、行こうかメアリー。落さないようにいい子にできたら、フルーツパーラーを食べさせてあげるからね」
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