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⑭「可愛い猫ちゃん」※

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「どこから入ってきたの?」

 しゃがみこんでこちらと目線を合わせてくる怜央を見て、自分が猫の姿になっていたことを思い出す。動物を相手にしているからか、普段の怜央と印象が違う。優しそうなのは確かだけれど。

「窓開いてたかな……でもここ五階だし……うーん」

 いつも怜央からは敬語で話しかけられていたのでこんな風にくだけた口調は新鮮だった。動物に優しくて、イケメンで、ズルいな結構モテポイント高いぞ。
 そっと背を撫でられると体から変に力が抜ける。変だ。さっき通行人に撫でられた時はここまで腑抜けにならなかったはずだ。

「にゃう……にゃ」
「可愛い猫ちゃん。名前は何ていうのかな」

 背中からしっぽにかけてをゆっくりと撫でられ、力が完全に抜けた。床にへたり込むと怜央がくすくすと笑った気がした。
 怜央はこんな部屋を見られても慌てた様子もない。まあ青が青だと思っていないからだろう。相手は猫だし。でも、青に見られても動じなさそうなところが怖いんだよなあ。

「毛艶がいいけど、首輪してないよね。飼われてないのかな?」
「にゃう……」

 耳の後ろを撫でられ、もう意識がふわふわだ。顎をなぞられて、ぐるぐると首が勝手に音を立てる。
 猫とはこんなにも人間に翻弄されてしまうものなのだろうか。青は鶴見に唆されて猫になってしまったことを後悔した。

「んにゃ……にゃ」

 なんだろう、気持ちいいのは確かなのだが、だんだん体が熱くなってきた。
 この感覚は…………不味い気がする。

「もし帰るところがないならうちにおいで。名前は……そうだな、ブルーさんにしよう」
「にゃにゃにゃ(青要素ないぞ)」

 青なんてどこにもない茶トラをブルーと呼んで、優しくしっぽを撫でる手。自分の写真が並んだ部屋で、自分を好きだと言う男が。
 体温がどんどん上がっていく。
 座り込んでいるためわからないが、たぶん、勃起してる。猫のペニスなんて見たことがないけれど下半身に集まる熱はつまりそういうことだろうから。

 ……猫になって勃起するって、どんな高度な変態なんだろう。

 いや、これはきっと鶴見の発明の副作用的な何かか、もしくは怜央が猫を発情させる危険な手の持ち主なのかもしれない。

「ぐるるる」

 喉が鳴る。しっぽの根元を優しくぐりぐりされて、頭の奥がチカチカする。脳がとろけそうに気持ちいい。
 ダメだと遠くで誰かが叫んでいるような気がしたけれど、抗うことなんてできそうになかった。
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