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家族2
2-6
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――カコン……。
缶ジュースのプルタブを押し上げて口につける。
「あのさ……」
「ん?」
今度は唐木が浮かない顔をして、何か言い難そうに口を数回開閉させた。
そんな友人を、俺はただ不思議そうに見つめた。
「……少し、聞いちゃったんだけど」
「? 何を?」
「相見がお兄さんと……その……」
(お兄さん? 聞いたって、……どっちの話を……)
なかなか続きを紡げないでいる唐木に、また嫌な汗が頬を伝った。
「キッチンで――」
(やっぱそっちか)
「いいよ。もう」
「……ごめん。でも、言わせて」
「は? 何を……」
立ち聞きしていたことを謝りながらも、尚も食い下がってくることが理解できず、つい強い口調になってしまう。
(普通に考えて、気持ち悪いとか思うだろ。それをわざわざ言いたいって? どんな神経だよ)
友人を悪く言いたくはないが……。
今はイライラが治まらない。
持っていた缶ジュースを一気に飲み干して、テーブルにガコッと大きな音を立てて置く。
その音に唐木の肩が跳ねた。
「っ……さ、相見は、お兄さんのこと……特別って、それって、どういう意味でなの……?」
ビビりながらも俺の目を見て真剣な面持ちで尋ねて来る唐木。
その目に、どうしてそんなことを聞きたがるのか、俺は何か別のモノを感じた。
(何を考えてる……?)
相手の目をジッと見ても、真意が掴めない。
(まあ、聞かれちまったものは仕方ないけど。まだ誤魔化しは利くよな)
俺は前髪をくしゃりと掻き上げ、余裕なフリを装った。
「――家族として、だ。それ以上になにがある?」
「え……でも、お兄さんは……」
「李煌さんも、多分なにか誤解したのかもしれないな。だから俺から逃げた。そもそも男同士でどうこうなると思うか?」
俺の言っている事が信じられないのか、唐木はポカンと口を開けてフリーズしている。
「おい。俺の言っている事、信じられないのか?」
「えっ、や、そんなことはないよ! そっか……そうなんだ……」
「……唐木?」
「でも、お兄さんが本当に誤解してたら大変だよね。どうするの?」
「んー……まあ、兄貴に任せる。李煌さん、兄貴にはいろいろ話すからフォローしてくれると思う」
(……なんて、さっきフォローされたばっかりなんだけどな……――釘がいっぱいついてたけど)
俺の言葉に安心したのか、唐木の顔に笑顔が戻っていた。
とりあえず、俺の本当の気持ちは隠し通せたわけだ。
(俺の境遇を知ってなかったら通用しなかっただろうな)
俺の過去を話しておいて正解だったと、今ほど自分を褒めたいと思ったことはない。
「――じゃ、勉強するか」
「え!? さ、相見ぃ……今日はもういいじゃん。ダベろうよぉ」
「何しに来たんだよ……。火曜にはテスト始まるだろ。明日も勉強漬けだからな」
「うっ。鬼!」
「何とでも言え。とにかく始めるぞ」
唐木は途中悲鳴を上げていたが、この日は日付が替わるまで、問題集を睨み続けた。
缶ジュースのプルタブを押し上げて口につける。
「あのさ……」
「ん?」
今度は唐木が浮かない顔をして、何か言い難そうに口を数回開閉させた。
そんな友人を、俺はただ不思議そうに見つめた。
「……少し、聞いちゃったんだけど」
「? 何を?」
「相見がお兄さんと……その……」
(お兄さん? 聞いたって、……どっちの話を……)
なかなか続きを紡げないでいる唐木に、また嫌な汗が頬を伝った。
「キッチンで――」
(やっぱそっちか)
「いいよ。もう」
「……ごめん。でも、言わせて」
「は? 何を……」
立ち聞きしていたことを謝りながらも、尚も食い下がってくることが理解できず、つい強い口調になってしまう。
(普通に考えて、気持ち悪いとか思うだろ。それをわざわざ言いたいって? どんな神経だよ)
友人を悪く言いたくはないが……。
今はイライラが治まらない。
持っていた缶ジュースを一気に飲み干して、テーブルにガコッと大きな音を立てて置く。
その音に唐木の肩が跳ねた。
「っ……さ、相見は、お兄さんのこと……特別って、それって、どういう意味でなの……?」
ビビりながらも俺の目を見て真剣な面持ちで尋ねて来る唐木。
その目に、どうしてそんなことを聞きたがるのか、俺は何か別のモノを感じた。
(何を考えてる……?)
相手の目をジッと見ても、真意が掴めない。
(まあ、聞かれちまったものは仕方ないけど。まだ誤魔化しは利くよな)
俺は前髪をくしゃりと掻き上げ、余裕なフリを装った。
「――家族として、だ。それ以上になにがある?」
「え……でも、お兄さんは……」
「李煌さんも、多分なにか誤解したのかもしれないな。だから俺から逃げた。そもそも男同士でどうこうなると思うか?」
俺の言っている事が信じられないのか、唐木はポカンと口を開けてフリーズしている。
「おい。俺の言っている事、信じられないのか?」
「えっ、や、そんなことはないよ! そっか……そうなんだ……」
「……唐木?」
「でも、お兄さんが本当に誤解してたら大変だよね。どうするの?」
「んー……まあ、兄貴に任せる。李煌さん、兄貴にはいろいろ話すからフォローしてくれると思う」
(……なんて、さっきフォローされたばっかりなんだけどな……――釘がいっぱいついてたけど)
俺の言葉に安心したのか、唐木の顔に笑顔が戻っていた。
とりあえず、俺の本当の気持ちは隠し通せたわけだ。
(俺の境遇を知ってなかったら通用しなかっただろうな)
俺の過去を話しておいて正解だったと、今ほど自分を褒めたいと思ったことはない。
「――じゃ、勉強するか」
「え!? さ、相見ぃ……今日はもういいじゃん。ダベろうよぉ」
「何しに来たんだよ……。火曜にはテスト始まるだろ。明日も勉強漬けだからな」
「うっ。鬼!」
「何とでも言え。とにかく始めるぞ」
唐木は途中悲鳴を上げていたが、この日は日付が替わるまで、問題集を睨み続けた。
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