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家族2
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李煌さんがどう受け取ったのか気になるところだけど、今はこれ以上焦っても仕方がない。
「あれ? リオにぃどしたん?」
と、リビングのソファーにいる悠璃がテレビから顔を上げて怪訝そうに俺を見る。
「いや、どうもしてない」
「そう?」
視線をテレビに戻した悠璃に背を向け、俺は一人、食器の片付けを終わらせた。
李煌さんは多分、兄貴の所だろう。
だとしたら、俺の気持ちとか兄貴にバレた可能性が高い。
(分かってはいても、最悪だよな)
キッチンを出ようとしたら、肩にタオルを引っ掻けた唐木が入って来た。
「相見。風呂ありがとう」
「……おう」
「どうかした?」
「いや。何か飲むか?」
「うん。昼間のジュース美味しかったなー」
「分かった。じゃあ先に部屋に戻っていてくれ。俺も風呂入ってくる」
グラスにジュースを注いで渡してやり、俺はそのまま風呂に直行した。
二十分ほどで風呂から上がり、髪を乾かすのもそこそこに自室へ向かう。
缶ジュースを片手に階段を上がっていると、ふと上から影が落ちて来た。
(……?)
一度立ち止まり、視線を上げると、いつも以上に冷めた視線を俺に向ける兄貴がいた。
「大河。ちょっといいか」
(……来たか)
俺は無言のまま僅かに目を細め、相手の言葉を待つ。
「お前、李煌に何か言ったな」
「……」
「だんまりか。それは肯定していると取っていいんだな」
(……李煌さん、俺のこと話してないのか?)
「まあ予想はしていたが、これ以上アレをかき回してくれるなよ。その気もないのに、苦しめることだけは許さない」
「……予想? その気もないって……何がだよ?」
トン、トン……、
一歩ずつ、兄貴が下りて来る。
そして一段差で止まり、近距離で見下ろす眼鏡の奥の鋭い眼光が、俺の中を見透かすように捉えた。
「分からないか? なら、李煌のことは兄と呼べ。中途半端に踏み込んで、壊れでもしたら俺も黙ってはいない」
一瞬怯みそうになったが、グッと脚に力を入れて押し止まった。
「……、李煌さんは……」
「今は自室だ。今日はもう顔を合わせるなよ。アレのことは俺に任せて、お前は普通にしていろ。変に挙動不審になられてもまたぶり返すからな」
兄貴はそれだけ言うと、俺から視線を外してリビングの方へ下りて行った。
(やっぱ、迫力あるな……あの人。――それより、俺の事どこまで話したんだ? 李煌さん……)
肩に掛けたタオルを掴み、顔に押し当てる。
湯上りで掻いた汗と一緒に、嫌な汗もグッと拭った。
「おかえり~。……どうしたの?」
自室に入るなり、唐木の怪訝そうな視線とぶつかった。
俺は悟られまいと努めて平静を装う。
「どうしたって?」
「あ……うん、なんか浮かない顔してたから」
「お前が気にするようなことは、なにもないよ」
「本当に?」
「……」
(やけに食い下がるな……)
俺は掴んでいたタオルをその辺に放って、いつものベッドの前に腰を下ろす。
「あれ? リオにぃどしたん?」
と、リビングのソファーにいる悠璃がテレビから顔を上げて怪訝そうに俺を見る。
「いや、どうもしてない」
「そう?」
視線をテレビに戻した悠璃に背を向け、俺は一人、食器の片付けを終わらせた。
李煌さんは多分、兄貴の所だろう。
だとしたら、俺の気持ちとか兄貴にバレた可能性が高い。
(分かってはいても、最悪だよな)
キッチンを出ようとしたら、肩にタオルを引っ掻けた唐木が入って来た。
「相見。風呂ありがとう」
「……おう」
「どうかした?」
「いや。何か飲むか?」
「うん。昼間のジュース美味しかったなー」
「分かった。じゃあ先に部屋に戻っていてくれ。俺も風呂入ってくる」
グラスにジュースを注いで渡してやり、俺はそのまま風呂に直行した。
二十分ほどで風呂から上がり、髪を乾かすのもそこそこに自室へ向かう。
缶ジュースを片手に階段を上がっていると、ふと上から影が落ちて来た。
(……?)
一度立ち止まり、視線を上げると、いつも以上に冷めた視線を俺に向ける兄貴がいた。
「大河。ちょっといいか」
(……来たか)
俺は無言のまま僅かに目を細め、相手の言葉を待つ。
「お前、李煌に何か言ったな」
「……」
「だんまりか。それは肯定していると取っていいんだな」
(……李煌さん、俺のこと話してないのか?)
「まあ予想はしていたが、これ以上アレをかき回してくれるなよ。その気もないのに、苦しめることだけは許さない」
「……予想? その気もないって……何がだよ?」
トン、トン……、
一歩ずつ、兄貴が下りて来る。
そして一段差で止まり、近距離で見下ろす眼鏡の奥の鋭い眼光が、俺の中を見透かすように捉えた。
「分からないか? なら、李煌のことは兄と呼べ。中途半端に踏み込んで、壊れでもしたら俺も黙ってはいない」
一瞬怯みそうになったが、グッと脚に力を入れて押し止まった。
「……、李煌さんは……」
「今は自室だ。今日はもう顔を合わせるなよ。アレのことは俺に任せて、お前は普通にしていろ。変に挙動不審になられてもまたぶり返すからな」
兄貴はそれだけ言うと、俺から視線を外してリビングの方へ下りて行った。
(やっぱ、迫力あるな……あの人。――それより、俺の事どこまで話したんだ? 李煌さん……)
肩に掛けたタオルを掴み、顔に押し当てる。
湯上りで掻いた汗と一緒に、嫌な汗もグッと拭った。
「おかえり~。……どうしたの?」
自室に入るなり、唐木の怪訝そうな視線とぶつかった。
俺は悟られまいと努めて平静を装う。
「どうしたって?」
「あ……うん、なんか浮かない顔してたから」
「お前が気にするようなことは、なにもないよ」
「本当に?」
「……」
(やけに食い下がるな……)
俺は掴んでいたタオルをその辺に放って、いつものベッドの前に腰を下ろす。
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