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16歳
515 告白?(sideブランシェ)
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カル先生が来たとの連絡を受けて、仕事の手を止めた。今日もルイスさんは一緒だろうか。はやる気持ちを抑えて出迎えに行こうとしたのだが、ふと思いついて上着を手に取った。鏡を覗き込んで、己の眉間に皺が寄っていることを認めて気持ちを落ち着ける。
先日、妹であるシャノンに顔が怖いと言われたことが何度も頭をよぎってしまう。シャノン本人はほんの冗談のつもりで言ったのだろうが、まさか可愛い妹にそんなことを思われていたなんて。
これまで何度も指摘されたことではあるはずなのに、今更ながら気になってしまう。
眉間を揉んで、大きく息を吐いた。
大丈夫だ。ルイスさんが私を怖がっているような素振りを見せたことはない。大人びた振る舞いの目立つルイスさんであるが、意外と素直だ。時折思ったことが顔に出ている。私に声をかけられて、けれどもはやく帰りたい時などはちらちらと玄関の方角を気にしていたりする。
そんな時は、名残惜しくはあるが話を切り上げることにしている。
己の顔としばらく格闘して、服装を整えた。唐突に、はやくしないと他の人にとられてしまうというシャノンの言葉を思い出した。
まあ、あれだけ綺麗な人だったらな。
むしろ今現在、恋人はいないという発言を疑ってしまう。あれは女性にだってモテるだろう。うちのシャノンも、ルイスさんにはやけに懐いている。
今は勉強が忙しいから恋人を作るつもりはないという意味だろうか。それなら納得はするが。
頭を振って、妙な考えを追い出そうと努力する。
今はルイスさんだ。
あまり待たせるわけにはいかない。
早足にルイスさんが向かうであろうシャノンの部屋を目指す。しかし、予想に反してルイスさんはまだ玄関にいた。
そのまま通り過ぎる勢いだった私は、慌てて足を止める。カル先生も一緒だ。一応はシャノンの部屋へと案内を申し出たのであろう。困った顔をした使用人が、私の姿を見るなり安堵の息を吐いていた。
「どうかしましたか?」
カル先生に問い掛ければ、ルイスさんが私を見据えた。黒い瞳が、真っ直ぐにこちらへと向けられている。
なぜか黙り込むカル先生の代わりに、ルイスさんが前に出てきた。なんとなく場に緊張が走る。
普段の無邪気な笑みを消し去ったルイスさんは、いつになく真面目な表情だ。
「話がある」
抑揚のない声で言われて、咄嗟に「はい」と応じる。いつもとは異なる雰囲気に内心で戸惑うが、誰も何も指摘をしない。
カル先生でさえ一歩下がったところで佇んでいるのみ。
それにしても話とはなんだろうか。
ルイスさんが私にというのは想像できない。いつも大事なことはカル先生が伝えてくる。ルイスさんは、その隣でにこにこしているのが常だ。
「……おまえ、僕に気があるらしいな」
「……え?」
気怠そうに発せられた言葉の意味を理解するのに、少々時間を要した。
というか、おまえって言ったのか?
ルイスさんが?
彼はいつも私のことをブランシェ様と呼んでいたと記憶している。
いや、そんなことよりも。
なんと答えていいのか逡巡しているうちに、ルイスさんが軽快な足音と共に寄ってきた。そのまま真正面までやって来られて肩が跳ねる。
だが、そこに宿る苛烈な色に気が付いて息を呑んだ。
「僕はおまえになんてこれっぽっちも興味がない」
「え」
「僕のことは諦めるんだな。正直どう見ても釣り合わないだろう。特に顔とか」
また顔だ。
私の顔が怖いところころ笑いながら指摘するシャノンの顔が浮かんだ。そんなに怖いのか?
グッと眉間に皺が寄って、慌ててこういう仕草が怖がられるのかと力を抜いた。
「ということだから。僕のことは諦めろ。いいな?」
仁王立ちでどこか偉そうに告げられた言葉に、ハッと我に返る。いやいや。意味がわからない。なんで私が振られたみたいな形になっているのだ。
空気に飲まれて呆然としていたが、まったくもって意味不明である。それに今日のルイスさんは変だ。
優しい笑顔はすっかり消えて、どこか冷たい雰囲気。すっと目を細めて、まるでこちらを値踏みするかのような不躾な視線を感じる。
儚げというより気怠いという表現が似合う。
どこかやる気なさそうな佇まいで、けれどもこちらを見据える冷たい目。
「あの、なにかお気に触るようなことでも」
知らないうちに失礼なことをしただろうかと尋ねるが、ルイスさんは動じない。それどころか鼻で笑ってくる。その背後では、カル先生が静かに頭を抱えていた。
「僕はおまえに興味がない。きっぱり諦めるんだな」
色々と疑問はあるが、なんだろう。告白してもいないのに振られているこの状況は。
先日、妹であるシャノンに顔が怖いと言われたことが何度も頭をよぎってしまう。シャノン本人はほんの冗談のつもりで言ったのだろうが、まさか可愛い妹にそんなことを思われていたなんて。
これまで何度も指摘されたことではあるはずなのに、今更ながら気になってしまう。
眉間を揉んで、大きく息を吐いた。
大丈夫だ。ルイスさんが私を怖がっているような素振りを見せたことはない。大人びた振る舞いの目立つルイスさんであるが、意外と素直だ。時折思ったことが顔に出ている。私に声をかけられて、けれどもはやく帰りたい時などはちらちらと玄関の方角を気にしていたりする。
そんな時は、名残惜しくはあるが話を切り上げることにしている。
己の顔としばらく格闘して、服装を整えた。唐突に、はやくしないと他の人にとられてしまうというシャノンの言葉を思い出した。
まあ、あれだけ綺麗な人だったらな。
むしろ今現在、恋人はいないという発言を疑ってしまう。あれは女性にだってモテるだろう。うちのシャノンも、ルイスさんにはやけに懐いている。
今は勉強が忙しいから恋人を作るつもりはないという意味だろうか。それなら納得はするが。
頭を振って、妙な考えを追い出そうと努力する。
今はルイスさんだ。
あまり待たせるわけにはいかない。
早足にルイスさんが向かうであろうシャノンの部屋を目指す。しかし、予想に反してルイスさんはまだ玄関にいた。
そのまま通り過ぎる勢いだった私は、慌てて足を止める。カル先生も一緒だ。一応はシャノンの部屋へと案内を申し出たのであろう。困った顔をした使用人が、私の姿を見るなり安堵の息を吐いていた。
「どうかしましたか?」
カル先生に問い掛ければ、ルイスさんが私を見据えた。黒い瞳が、真っ直ぐにこちらへと向けられている。
なぜか黙り込むカル先生の代わりに、ルイスさんが前に出てきた。なんとなく場に緊張が走る。
普段の無邪気な笑みを消し去ったルイスさんは、いつになく真面目な表情だ。
「話がある」
抑揚のない声で言われて、咄嗟に「はい」と応じる。いつもとは異なる雰囲気に内心で戸惑うが、誰も何も指摘をしない。
カル先生でさえ一歩下がったところで佇んでいるのみ。
それにしても話とはなんだろうか。
ルイスさんが私にというのは想像できない。いつも大事なことはカル先生が伝えてくる。ルイスさんは、その隣でにこにこしているのが常だ。
「……おまえ、僕に気があるらしいな」
「……え?」
気怠そうに発せられた言葉の意味を理解するのに、少々時間を要した。
というか、おまえって言ったのか?
ルイスさんが?
彼はいつも私のことをブランシェ様と呼んでいたと記憶している。
いや、そんなことよりも。
なんと答えていいのか逡巡しているうちに、ルイスさんが軽快な足音と共に寄ってきた。そのまま真正面までやって来られて肩が跳ねる。
だが、そこに宿る苛烈な色に気が付いて息を呑んだ。
「僕はおまえになんてこれっぽっちも興味がない」
「え」
「僕のことは諦めるんだな。正直どう見ても釣り合わないだろう。特に顔とか」
また顔だ。
私の顔が怖いところころ笑いながら指摘するシャノンの顔が浮かんだ。そんなに怖いのか?
グッと眉間に皺が寄って、慌ててこういう仕草が怖がられるのかと力を抜いた。
「ということだから。僕のことは諦めろ。いいな?」
仁王立ちでどこか偉そうに告げられた言葉に、ハッと我に返る。いやいや。意味がわからない。なんで私が振られたみたいな形になっているのだ。
空気に飲まれて呆然としていたが、まったくもって意味不明である。それに今日のルイスさんは変だ。
優しい笑顔はすっかり消えて、どこか冷たい雰囲気。すっと目を細めて、まるでこちらを値踏みするかのような不躾な視線を感じる。
儚げというより気怠いという表現が似合う。
どこかやる気なさそうな佇まいで、けれどもこちらを見据える冷たい目。
「あの、なにかお気に触るようなことでも」
知らないうちに失礼なことをしただろうかと尋ねるが、ルイスさんは動じない。それどころか鼻で笑ってくる。その背後では、カル先生が静かに頭を抱えていた。
「僕はおまえに興味がない。きっぱり諦めるんだな」
色々と疑問はあるが、なんだろう。告白してもいないのに振られているこの状況は。
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