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11歳
231 もう夏だと思う
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暖かくなった。いや、暖かいを通り越して暑くなってきた。
いよいよ季節は、夏目前である。
「暑い! よし! この調子だ!」
「なんでそんなにテンション高いんですか?」
ドン引きするティアンは、暑い暑いと文句を言っている。こいつ、冬の間は寒いとうるさかったのに。まさか夏場は暑いと騒ぐつもりか? どういうことだよ。年中文句ばっかりじゃないか。
しかし夏が近づくということは、とても良いことである。
「もうすぐ噴水で泳げるね」
「泳がせませんよ?」
真顔でそんなことを言うティアン。どうやら彼なりのジョークらしい。まったく笑えない冗談である。これだからお子様は。
「アロンと、あとタイラーもお誘いする」
「えぇ?」
無理ですよ、泳げません、とネガティブ発言を繰り返すティアンはどういうつもりなのか。
とりあえず、今日も庭を走りまわろうと思う。
ユリスは部屋に絶賛引き篭もり中である。ブルース兄様が「少しくらい外に出たらどうなんだ」と頭を悩ませていた。一方で、兄様は俺に対して「そんなに外ばっかり駆けまわってなにが楽しいんだ」と文句を言ってくる。外で遊んで欲しいのか欲しくないのか、どっちだよ。意見は統一しておけ。
「ロニーも一緒に噴水で泳ごうね」
ティアンは放っておいて、ロニーを振り返る。苦笑した彼は、「私、泳ぎはちょっと苦手で」と困った顔をしてしまう。これはいけない。無理強いはいけない。
「じゃあロニーは見ててね」
「はい、お任せください」
にこにこと微笑むロニーは、とても優しい。「ルイス様の扱い方が上手すぎません?」とティアンが感心している。だって仕方がないだろう。ロニーを困らせるわけにはいかないのだ。
前任であったタイラーは、今ではユリスの護衛騎士を勤めている。あの激ヤバユリス相手にも臆することのないタイラーは、もはや屋敷内で貴重な存在となっていた。さすがタイラーだ。その粘り強さでユリスをどうにかしてくれ。
そして、新しく俺の護衛騎士になったのが、なにを隠そう、この素敵長髪男子くんである。俺は非常に満足である。ようやくロニーを側に置くことができて、大満足である。
タイラーをユリスにつけると決めたブルース兄様は、俺をどうするか悩んでいた。またいちから騎士を決めるのは面倒くさいという顔をしていた。そんな時である。ロニーと遊ぶ俺を見たブルース兄様が、「これだ!」という顔をしたのは。
「おまえ、ロニーが相手だとやけに物分かりがいいな?」
そんなことをテンション高めに語り出したブルース兄様は、そのままロニーを俺の護衛騎士にしてくれた。兄様にしては、いい仕事をしたと思う。
ということで、本日も俺はジャンとロニー、そしてティアンを連れて庭を散歩していた。服も薄手のものに代わり、動きやすくてよろしい。
相変わらず、ブルース兄様は勉強しろとうるさいし、ユリスは愛想悪くて遊んでくれないし、オーガス兄様はビビリだし。いつも通りの日常である。
「ティアン! 今日のおやつが何か厨房に見に行こう」
「ダメですよ」
素っ気ないティアンは、ノリが悪い。
「ジャン!」
「え。あ、いや、すみません」
謎に謝るジャンは、平常運転である。
「行くぞ、ロニー!」
「確認するんですか? おやつの時のお楽しみが減っちゃいますよ?」
「……それもそうだな。じゃあ見に行くのはやめる」
確かにね。わくわく感が減るね。ロニーは天才だと思う。
「なんでそんなに物分かりがよくなるんですか」
「ロニーに迷惑はかけられない」
「他の人にも迷惑かけたらダメですよ」
ムスッとするティアンは、俺が彼の言うことを素直に聞かないことが不満らしい。そんなこと言われてもな。困るって。
そうしてひと通り庭を巡って満足した俺は、部屋に戻ろうと踵を返す。しかし、ここでみんなが不審な動きをした。
「もう戻るんですか? もうちょっと遊びましょうよ」
ティアンが変なことを言い出す。こいつは常に部屋に戻りたがる奴である。もうちょっと遊ぼう発言なんて初ではないか?
様子のおかしいティアンに、俺は思わず足を止める。
「どうしたの?」
「いや、あの。噴水でも見に行きますか?」
「今見ただろ」
「そうですね」
挙動不審だ。ティアンが、すごく挙動不審だ。これはおかしい。熱でもあるのかもしれない。慌ててティアンのおでこに手を当ててみるが、別に普通だった。
「熱はない」
「どういう意味ですか」
半眼になるティアンは、「ほら。もう少しお散歩しましょうよ」と言って、屋敷とは反対方向に向かっていく。すごく怪しい。
ティアンを無視して、屋敷へと戻ろうとしてみるが、それをロニーが邪魔した。
「今日は猫ちゃん、探さなくてよろしいのですか?」
「猫か」
いまだに新しい猫は見つかっていない。探しにいくべきだとは思うが、今じゃないとダメか?
なんか、みんなが俺を屋敷に入れたくないということは理解した。一体なにをやっているのか。すごく気になる。気になるのだが。
「もう少しお庭で遊びませんか?」
「……ロニーがそう言うなら」
ロニーを困らせるのは、本意ではない。俺を頑なに屋敷に近づけないということは、きっとブルース兄様あたりにそうするように頼まれているのだろう。別に兄様の言うことは無視しても構わないが、それでロニーが怒られるのは可哀想すぎる。ということで、大人しく庭で遊んでおこうと思う。
「なんでロニー相手だとそんなに素直なんですか!」
ティアンが、わかりやすく怒っているが気にしない。あとティアンは、なぜかロニーのことを呼び捨てにする。ライバル意識でもあるのかな? お子様の考えはよくわからない。
いよいよ季節は、夏目前である。
「暑い! よし! この調子だ!」
「なんでそんなにテンション高いんですか?」
ドン引きするティアンは、暑い暑いと文句を言っている。こいつ、冬の間は寒いとうるさかったのに。まさか夏場は暑いと騒ぐつもりか? どういうことだよ。年中文句ばっかりじゃないか。
しかし夏が近づくということは、とても良いことである。
「もうすぐ噴水で泳げるね」
「泳がせませんよ?」
真顔でそんなことを言うティアン。どうやら彼なりのジョークらしい。まったく笑えない冗談である。これだからお子様は。
「アロンと、あとタイラーもお誘いする」
「えぇ?」
無理ですよ、泳げません、とネガティブ発言を繰り返すティアンはどういうつもりなのか。
とりあえず、今日も庭を走りまわろうと思う。
ユリスは部屋に絶賛引き篭もり中である。ブルース兄様が「少しくらい外に出たらどうなんだ」と頭を悩ませていた。一方で、兄様は俺に対して「そんなに外ばっかり駆けまわってなにが楽しいんだ」と文句を言ってくる。外で遊んで欲しいのか欲しくないのか、どっちだよ。意見は統一しておけ。
「ロニーも一緒に噴水で泳ごうね」
ティアンは放っておいて、ロニーを振り返る。苦笑した彼は、「私、泳ぎはちょっと苦手で」と困った顔をしてしまう。これはいけない。無理強いはいけない。
「じゃあロニーは見ててね」
「はい、お任せください」
にこにこと微笑むロニーは、とても優しい。「ルイス様の扱い方が上手すぎません?」とティアンが感心している。だって仕方がないだろう。ロニーを困らせるわけにはいかないのだ。
前任であったタイラーは、今ではユリスの護衛騎士を勤めている。あの激ヤバユリス相手にも臆することのないタイラーは、もはや屋敷内で貴重な存在となっていた。さすがタイラーだ。その粘り強さでユリスをどうにかしてくれ。
そして、新しく俺の護衛騎士になったのが、なにを隠そう、この素敵長髪男子くんである。俺は非常に満足である。ようやくロニーを側に置くことができて、大満足である。
タイラーをユリスにつけると決めたブルース兄様は、俺をどうするか悩んでいた。またいちから騎士を決めるのは面倒くさいという顔をしていた。そんな時である。ロニーと遊ぶ俺を見たブルース兄様が、「これだ!」という顔をしたのは。
「おまえ、ロニーが相手だとやけに物分かりがいいな?」
そんなことをテンション高めに語り出したブルース兄様は、そのままロニーを俺の護衛騎士にしてくれた。兄様にしては、いい仕事をしたと思う。
ということで、本日も俺はジャンとロニー、そしてティアンを連れて庭を散歩していた。服も薄手のものに代わり、動きやすくてよろしい。
相変わらず、ブルース兄様は勉強しろとうるさいし、ユリスは愛想悪くて遊んでくれないし、オーガス兄様はビビリだし。いつも通りの日常である。
「ティアン! 今日のおやつが何か厨房に見に行こう」
「ダメですよ」
素っ気ないティアンは、ノリが悪い。
「ジャン!」
「え。あ、いや、すみません」
謎に謝るジャンは、平常運転である。
「行くぞ、ロニー!」
「確認するんですか? おやつの時のお楽しみが減っちゃいますよ?」
「……それもそうだな。じゃあ見に行くのはやめる」
確かにね。わくわく感が減るね。ロニーは天才だと思う。
「なんでそんなに物分かりがよくなるんですか」
「ロニーに迷惑はかけられない」
「他の人にも迷惑かけたらダメですよ」
ムスッとするティアンは、俺が彼の言うことを素直に聞かないことが不満らしい。そんなこと言われてもな。困るって。
そうしてひと通り庭を巡って満足した俺は、部屋に戻ろうと踵を返す。しかし、ここでみんなが不審な動きをした。
「もう戻るんですか? もうちょっと遊びましょうよ」
ティアンが変なことを言い出す。こいつは常に部屋に戻りたがる奴である。もうちょっと遊ぼう発言なんて初ではないか?
様子のおかしいティアンに、俺は思わず足を止める。
「どうしたの?」
「いや、あの。噴水でも見に行きますか?」
「今見ただろ」
「そうですね」
挙動不審だ。ティアンが、すごく挙動不審だ。これはおかしい。熱でもあるのかもしれない。慌ててティアンのおでこに手を当ててみるが、別に普通だった。
「熱はない」
「どういう意味ですか」
半眼になるティアンは、「ほら。もう少しお散歩しましょうよ」と言って、屋敷とは反対方向に向かっていく。すごく怪しい。
ティアンを無視して、屋敷へと戻ろうとしてみるが、それをロニーが邪魔した。
「今日は猫ちゃん、探さなくてよろしいのですか?」
「猫か」
いまだに新しい猫は見つかっていない。探しにいくべきだとは思うが、今じゃないとダメか?
なんか、みんなが俺を屋敷に入れたくないということは理解した。一体なにをやっているのか。すごく気になる。気になるのだが。
「もう少しお庭で遊びませんか?」
「……ロニーがそう言うなら」
ロニーを困らせるのは、本意ではない。俺を頑なに屋敷に近づけないということは、きっとブルース兄様あたりにそうするように頼まれているのだろう。別に兄様の言うことは無視しても構わないが、それでロニーが怒られるのは可哀想すぎる。ということで、大人しく庭で遊んでおこうと思う。
「なんでロニー相手だとそんなに素直なんですか!」
ティアンが、わかりやすく怒っているが気にしない。あとティアンは、なぜかロニーのことを呼び捨てにする。ライバル意識でもあるのかな? お子様の考えはよくわからない。
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