24 / 51
24 恋愛感情ですよね?
しおりを挟む
それって恋愛感情ですよね? と。
ウザい確認をしてくるマルセルを振り払って、自室に駆け込んだ俺は、勢いよくソファーに倒れ込んだ。
「あぁ! 腹黒王子め! なんだあいつ!」
感情のままにバタバタと足を振って苛立ちを発散する。後から静かに入室してきたイアンが、なんとも言えない顔をしていた。
「ミナト様は、マルセル殿下に好意を持っておられるのでは?」
「違う!」
終いには、イアンまでもがそんなことを言う。馬鹿を言うな。俺の恋愛対象は年上で大人の余裕がある綺麗なお姉さんだ。マルセルは違う。性別からして違う。
「俺は! 自分よりイケメンでかっこいいマルセルに嫉妬してるだけだから!」
「……左様で」
この心のざわつきも、全部マルセルに対する嫉妬である。こっちは本物のアイドルなのに。俺より素できらきらしているマルセルに引け目を感じているだけなのだ。
断じて! 恋愛感情などではない!
「マジでマルセルにぎゃふんと言わせたい」
もはや俺の呟きに返事もしなくなったイアンは、部屋の隅で気配を消すことに徹している。そんなに俺の相手が面倒か? 少しくらい会話してくれてもよくないか?
ちくしょう、マルセルめ。
なんだあの余裕ぶった態度。すごく腹が立つ。こっちはおまえのことで悩んでいるのに、なにが「それは恋愛感情ではなく?」だ。俺を茶化して遊ぶんじゃない。
※※※
「……カミ様って、壊滅的に恋愛下手くそですね」
「恋愛下手くそってなに。そんなこと言われたの人生初だよ」
相変わらず、えぐいほどに情報通の雪音ちゃんは、早速俺の部屋に乗り込んできた。
俺とマルセルのやり取りを聞きかじったらしい彼女は、開口一番そんなことを言う。
「普通はそこで、いいですよって答えて両想いになる場面ですよ。なんで嫉妬っていう結論になるんですか」
「なんでもかんでも恋愛に結びつけるなぁ」
弱々しく抗議をするが、雪音ちゃんは止まらない。俺の返答がいかに愚かであるかを延々語り始める。人の傷口を抉る嫌な行為である。君は聖女じゃないのか。落ち込んでいる人には優しくしろ。
「マルセル殿下が可哀想ですよ」
「なんでそうなる」
俺だけ一方的に責められて不公平である。口を尖らせれば、雪音ちゃんは「だって」と信じられない仮説を披露する。
「マルセル殿下はカミ様のことが好きなんですよ。それなのに、カミ様がこれは恋愛感情ではないって大声で主張するから。殿下、今頃きっと落ち込んでますよ」
「そんなわけ」
だからなんで。どいつもこいつも恋愛に結び付けようとするのか。反射的に否定するが、ふと疑問が浮かんでくる。
そういや、マルセルも「それって私への恋愛感情では?」とウザかった。あの時は、なんだこいつ。頭ん中お花畑かよ、と考えていたのだが。今思えば、なんかおかしくないか。普通、自分への恋愛感情では? みたいなこと思わないだろ。どういう思考回路してんだよ。
ちょっと雪音ちゃんにもその点尋ねてみるが、案の定、「やっぱり! マルセル殿下もカミ様に気がありますよ!」とはしゃぎ始める。
「確かに。普通そんなさ、それって私への恋愛感情ですよね、みたいなこと言わないよな。どんな確認だよ。恥ずかしいわ」
「ですよね、ですよね!? てことは? てことはどういう意味ですか!」
前のめりで答えを求めてくる雪音ちゃんの目は、期待にきらきらと輝いている。
そりゃね、俺ももう二十数年生きてますから。人生経験は雪音ちゃんよりも豊富である。
大きく頷いて、答えを出す。
「つまりだ。マルセルはナルシストのクソヤベェ奴ってことだろ」
「クソヤベェのはカミ様の方ですよ」
「なんだと!」
突然向けられるファンからの罵倒ほど、俺の心を抉るものはない。裏切られたみたいな気分になって呆然としていると、雪音ちゃんが「マジでヤベェですよ」と冷たい目を向けてくる。
おまえ、それが推しに向ける目か?
いつになく不機嫌な雪音ちゃんは、「なんでわかんないかなぁ」と盛大に頭を抱えている。
「相手に、自分のことが好きかどうか確認する時ってどういう時ですか!」
「頭がどうかしてる時」
「ちっがう!」
大声で否定する雪音ちゃんは、ちょっと怖かった。
「なんですかその夢も希望もない答えは!」
もっと他にあるでしょ! との勢いの気圧されて、俺は考える。自分のことを好きかどうか確認する時ってなんだ。んな確認しねぇよ、と思って、ハッとする。
いや、したことあるわ。「俺のこと好き?」って言ったことあるわ、俺。問題は、それがいつだったかってことだろ。だったら答えは簡単だ。
雪音ちゃんを真正面から見据えて、ニヤリと口角を持ち上げる。この勝負、もらった。
「ライブの時!」
「ちっ、がわないけど、違う!」
複雑な顔をした雪音ちゃんは、多分俺らのライブ風景を思い出していた。マイク握ってファンの子たちに向かって「俺のこと好き?」って尋ねると、なんか面白いくらいに「好きー!」って揃った答えが返ってくるのだ。打ち合わせでもしたんか君らってくらい綺麗に声が揃うから面白いのだ。
そういうことを語って聞かせれば、「ファンで遊ばないでください」と苦々しい声が返ってきた。
ウザい確認をしてくるマルセルを振り払って、自室に駆け込んだ俺は、勢いよくソファーに倒れ込んだ。
「あぁ! 腹黒王子め! なんだあいつ!」
感情のままにバタバタと足を振って苛立ちを発散する。後から静かに入室してきたイアンが、なんとも言えない顔をしていた。
「ミナト様は、マルセル殿下に好意を持っておられるのでは?」
「違う!」
終いには、イアンまでもがそんなことを言う。馬鹿を言うな。俺の恋愛対象は年上で大人の余裕がある綺麗なお姉さんだ。マルセルは違う。性別からして違う。
「俺は! 自分よりイケメンでかっこいいマルセルに嫉妬してるだけだから!」
「……左様で」
この心のざわつきも、全部マルセルに対する嫉妬である。こっちは本物のアイドルなのに。俺より素できらきらしているマルセルに引け目を感じているだけなのだ。
断じて! 恋愛感情などではない!
「マジでマルセルにぎゃふんと言わせたい」
もはや俺の呟きに返事もしなくなったイアンは、部屋の隅で気配を消すことに徹している。そんなに俺の相手が面倒か? 少しくらい会話してくれてもよくないか?
ちくしょう、マルセルめ。
なんだあの余裕ぶった態度。すごく腹が立つ。こっちはおまえのことで悩んでいるのに、なにが「それは恋愛感情ではなく?」だ。俺を茶化して遊ぶんじゃない。
※※※
「……カミ様って、壊滅的に恋愛下手くそですね」
「恋愛下手くそってなに。そんなこと言われたの人生初だよ」
相変わらず、えぐいほどに情報通の雪音ちゃんは、早速俺の部屋に乗り込んできた。
俺とマルセルのやり取りを聞きかじったらしい彼女は、開口一番そんなことを言う。
「普通はそこで、いいですよって答えて両想いになる場面ですよ。なんで嫉妬っていう結論になるんですか」
「なんでもかんでも恋愛に結びつけるなぁ」
弱々しく抗議をするが、雪音ちゃんは止まらない。俺の返答がいかに愚かであるかを延々語り始める。人の傷口を抉る嫌な行為である。君は聖女じゃないのか。落ち込んでいる人には優しくしろ。
「マルセル殿下が可哀想ですよ」
「なんでそうなる」
俺だけ一方的に責められて不公平である。口を尖らせれば、雪音ちゃんは「だって」と信じられない仮説を披露する。
「マルセル殿下はカミ様のことが好きなんですよ。それなのに、カミ様がこれは恋愛感情ではないって大声で主張するから。殿下、今頃きっと落ち込んでますよ」
「そんなわけ」
だからなんで。どいつもこいつも恋愛に結び付けようとするのか。反射的に否定するが、ふと疑問が浮かんでくる。
そういや、マルセルも「それって私への恋愛感情では?」とウザかった。あの時は、なんだこいつ。頭ん中お花畑かよ、と考えていたのだが。今思えば、なんかおかしくないか。普通、自分への恋愛感情では? みたいなこと思わないだろ。どういう思考回路してんだよ。
ちょっと雪音ちゃんにもその点尋ねてみるが、案の定、「やっぱり! マルセル殿下もカミ様に気がありますよ!」とはしゃぎ始める。
「確かに。普通そんなさ、それって私への恋愛感情ですよね、みたいなこと言わないよな。どんな確認だよ。恥ずかしいわ」
「ですよね、ですよね!? てことは? てことはどういう意味ですか!」
前のめりで答えを求めてくる雪音ちゃんの目は、期待にきらきらと輝いている。
そりゃね、俺ももう二十数年生きてますから。人生経験は雪音ちゃんよりも豊富である。
大きく頷いて、答えを出す。
「つまりだ。マルセルはナルシストのクソヤベェ奴ってことだろ」
「クソヤベェのはカミ様の方ですよ」
「なんだと!」
突然向けられるファンからの罵倒ほど、俺の心を抉るものはない。裏切られたみたいな気分になって呆然としていると、雪音ちゃんが「マジでヤベェですよ」と冷たい目を向けてくる。
おまえ、それが推しに向ける目か?
いつになく不機嫌な雪音ちゃんは、「なんでわかんないかなぁ」と盛大に頭を抱えている。
「相手に、自分のことが好きかどうか確認する時ってどういう時ですか!」
「頭がどうかしてる時」
「ちっがう!」
大声で否定する雪音ちゃんは、ちょっと怖かった。
「なんですかその夢も希望もない答えは!」
もっと他にあるでしょ! との勢いの気圧されて、俺は考える。自分のことを好きかどうか確認する時ってなんだ。んな確認しねぇよ、と思って、ハッとする。
いや、したことあるわ。「俺のこと好き?」って言ったことあるわ、俺。問題は、それがいつだったかってことだろ。だったら答えは簡単だ。
雪音ちゃんを真正面から見据えて、ニヤリと口角を持ち上げる。この勝負、もらった。
「ライブの時!」
「ちっ、がわないけど、違う!」
複雑な顔をした雪音ちゃんは、多分俺らのライブ風景を思い出していた。マイク握ってファンの子たちに向かって「俺のこと好き?」って尋ねると、なんか面白いくらいに「好きー!」って揃った答えが返ってくるのだ。打ち合わせでもしたんか君らってくらい綺麗に声が揃うから面白いのだ。
そういうことを語って聞かせれば、「ファンで遊ばないでください」と苦々しい声が返ってきた。
236
あなたにおすすめの小説
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる