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15 責任
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「なにそれ、私も見たかった……!」
「別に面白いもんでもないけどね?」
昨夜のマルセルの乱心を雪音ちゃんに教えてやったところ、彼女は「私も見たかった!」と盛大に悔やみ始めた。悔しさのあまり、どすどすとソファーを殴っている。なにその熱意。成人男性がペット扱いされている場面なんて、そんなに見たいか?
「なんで私も呼んでくれないんですか!」
「なんで呼ばなきゃいけないんだよ。夜中に女子高校生を部屋に呼び出すとか普通にアウトだろ」
日本だったら絶対に週刊誌に記事が出てしまう。アイドル生命が終わってしまう。絶対無理。
「マルセル殿下も居たんだから別にいいじゃないですか。あ! でも私がいるとお邪魔ですよね?」
「お邪魔ではないよ。むしろ助かる。マルセルって基本的に無口だからあんまり会話が盛り上がらないんだよなぁ」
「でもそれ絶対! マルセル殿下、カミ様に気がありますよ!」
「ねぇよ」
いいえ! 絶対にあります! と断言する雪音ちゃんは、すごい気迫だった。そんなムキにならんでも。
「あれはなんかこう、珍しい生き物でも観察するかのような目だった」
「そんなわけ! なんでそんなに鈍いんですか!」
拳を握りしめて力説する雪音ちゃん。いわく、マルセルは俺のことが好きだと。
まぁ、確かに嫌われてはいないわな。なんか毎度俺好みの甘い飲み物持ってきてくれるし、と考えて思い出した。
「そうだ雪音ちゃん。君が教えてくれたマルセル情報、間違ってたよ」
「え? どこがですか?」
「マルセルは甘い物苦手って言ってただろ。あれ違うよ。あいつ実は甘い物、結構好きだよ」
「いやそんなはずは」
首を捻る雪音ちゃんに、ここ最近のマルセルが必ずと言っていいほど、俺の部屋に来る時には甘い飲み物を持参してくる旨を伝える。それを聞いた瞬間、雪音ちゃんが勢いよく立ち上がった。
「鈍いにも程がありません!?」
「なにが?」
いやいやいや、と大袈裟に手を振った雪音ちゃんは忙しそうだ。ずっと思っていたのだが、この子、身振り手振りがいちいち大きい。そしてテンションが高い。
「それってカミ様の好みに合わせてるんですよ!」
「そう? でも別に俺と一緒の物を飲む必要はなくない? 甘い物嫌いならさ、自分のだけ違うの持ってくればいいじゃん」
「あー! なんにもわかってない! そんなんじゃあマルセル殿下には勝てませんよ!」
はなから勝つつもりなんてない。なんの勝負だよ。
「好きな子と一緒に同じ物を共有するのが良いんじゃないですか。わかります?」
「……雪音ちゃんは、何でもかんでも恋愛に結びつけ過ぎだと思う」
さすが女子高校生とでも言うべきか。恋バナで盛り上がりたい時期だよね。突然異世界にやってきて、周りに俺らしかいないからね。身近なところで済ませているのだろう。やめて欲しい。
しかし雪音ちゃんは一歩も引かない。「マルセル殿下は絶対にカミ様のこと好きですって!」と必死に主張している。てか君はそれでいいの?
異世界に召喚された聖女と王太子様だぞ? 普通は、私も王子様と結ばれたいってなるところでは? 同性の俺から見てもマルセルはいい男だぞ。俺とマルセルをくっつけてどうするよ。
雪音ちゃんの方がマルセルとお似合いだよ、と言ってやれば、彼女はキッと目を吊り上げた。
「私のことはどうでもいいんです!」
「どうでもよくはないだろ」
「私はカミ様が好きなんです! いや好きって言っても推しって意味で。とにかく! 私はマルセル殿下には興味ないんで、お気遣いなく」
「えぇ?」
あんなイケメン王子なのに、もったいない。応援するよ? と再度伝えてみるが、雪音ちゃんは「結構です」の一点張りである。マジかよ。
「私、推しには幸せになってもらいたくて。こんな異世界に来てしまった以上、カミ様を幸せにするためにはカミ様とマルセル殿下をくっつける他に方法がないと思うんですよ!」
「そんなことはないと思うよ? 他にいい方法なんていっぱいあると思うけど?」
「なので。私が責任持ってカミ様とマルセル殿下をくっつけます」
「そんな変な責任感持たないで?」
ダメだ。雪音ちゃんがひとりで突っ走っている。当初から、彼女はちょっと暴走気味である。ここ最近は特に酷い気がする。おそらく自分のせいで俺が巻き込まれたという自責の念からだろう。
先日は、ついつい雪音ちゃんのせいだよ、なんて言ってしまったが失敗だったかもしれない。雪音ちゃんがおかしな責任を感じてしまっている。
「あのね、雪音ちゃんはなにも悪くないからね? こういうのって運だから。俺が巻き込まれたのも単に俺の運が悪かっただけだからね? 決して雪音ちゃんのせいではないよ?」
「とにかく! 私がどうにかするので! カミ様はご心配なく!」
いや心配しかねぇよ。マジでどうすんだよ、この状況。
俺の抵抗とは裏腹に。
なぜかやる気に満ちた雪音ちゃんは、きらきらと目を輝かせていた。あ、こいつ今の状況を楽しんでるわ。ようやくそのことに気が付いた俺は、そっと頭を抱えた。誰かこの聖女を止めてくれ、本当に。
「別に面白いもんでもないけどね?」
昨夜のマルセルの乱心を雪音ちゃんに教えてやったところ、彼女は「私も見たかった!」と盛大に悔やみ始めた。悔しさのあまり、どすどすとソファーを殴っている。なにその熱意。成人男性がペット扱いされている場面なんて、そんなに見たいか?
「なんで私も呼んでくれないんですか!」
「なんで呼ばなきゃいけないんだよ。夜中に女子高校生を部屋に呼び出すとか普通にアウトだろ」
日本だったら絶対に週刊誌に記事が出てしまう。アイドル生命が終わってしまう。絶対無理。
「マルセル殿下も居たんだから別にいいじゃないですか。あ! でも私がいるとお邪魔ですよね?」
「お邪魔ではないよ。むしろ助かる。マルセルって基本的に無口だからあんまり会話が盛り上がらないんだよなぁ」
「でもそれ絶対! マルセル殿下、カミ様に気がありますよ!」
「ねぇよ」
いいえ! 絶対にあります! と断言する雪音ちゃんは、すごい気迫だった。そんなムキにならんでも。
「あれはなんかこう、珍しい生き物でも観察するかのような目だった」
「そんなわけ! なんでそんなに鈍いんですか!」
拳を握りしめて力説する雪音ちゃん。いわく、マルセルは俺のことが好きだと。
まぁ、確かに嫌われてはいないわな。なんか毎度俺好みの甘い飲み物持ってきてくれるし、と考えて思い出した。
「そうだ雪音ちゃん。君が教えてくれたマルセル情報、間違ってたよ」
「え? どこがですか?」
「マルセルは甘い物苦手って言ってただろ。あれ違うよ。あいつ実は甘い物、結構好きだよ」
「いやそんなはずは」
首を捻る雪音ちゃんに、ここ最近のマルセルが必ずと言っていいほど、俺の部屋に来る時には甘い飲み物を持参してくる旨を伝える。それを聞いた瞬間、雪音ちゃんが勢いよく立ち上がった。
「鈍いにも程がありません!?」
「なにが?」
いやいやいや、と大袈裟に手を振った雪音ちゃんは忙しそうだ。ずっと思っていたのだが、この子、身振り手振りがいちいち大きい。そしてテンションが高い。
「それってカミ様の好みに合わせてるんですよ!」
「そう? でも別に俺と一緒の物を飲む必要はなくない? 甘い物嫌いならさ、自分のだけ違うの持ってくればいいじゃん」
「あー! なんにもわかってない! そんなんじゃあマルセル殿下には勝てませんよ!」
はなから勝つつもりなんてない。なんの勝負だよ。
「好きな子と一緒に同じ物を共有するのが良いんじゃないですか。わかります?」
「……雪音ちゃんは、何でもかんでも恋愛に結びつけ過ぎだと思う」
さすが女子高校生とでも言うべきか。恋バナで盛り上がりたい時期だよね。突然異世界にやってきて、周りに俺らしかいないからね。身近なところで済ませているのだろう。やめて欲しい。
しかし雪音ちゃんは一歩も引かない。「マルセル殿下は絶対にカミ様のこと好きですって!」と必死に主張している。てか君はそれでいいの?
異世界に召喚された聖女と王太子様だぞ? 普通は、私も王子様と結ばれたいってなるところでは? 同性の俺から見てもマルセルはいい男だぞ。俺とマルセルをくっつけてどうするよ。
雪音ちゃんの方がマルセルとお似合いだよ、と言ってやれば、彼女はキッと目を吊り上げた。
「私のことはどうでもいいんです!」
「どうでもよくはないだろ」
「私はカミ様が好きなんです! いや好きって言っても推しって意味で。とにかく! 私はマルセル殿下には興味ないんで、お気遣いなく」
「えぇ?」
あんなイケメン王子なのに、もったいない。応援するよ? と再度伝えてみるが、雪音ちゃんは「結構です」の一点張りである。マジかよ。
「私、推しには幸せになってもらいたくて。こんな異世界に来てしまった以上、カミ様を幸せにするためにはカミ様とマルセル殿下をくっつける他に方法がないと思うんですよ!」
「そんなことはないと思うよ? 他にいい方法なんていっぱいあると思うけど?」
「なので。私が責任持ってカミ様とマルセル殿下をくっつけます」
「そんな変な責任感持たないで?」
ダメだ。雪音ちゃんがひとりで突っ走っている。当初から、彼女はちょっと暴走気味である。ここ最近は特に酷い気がする。おそらく自分のせいで俺が巻き込まれたという自責の念からだろう。
先日は、ついつい雪音ちゃんのせいだよ、なんて言ってしまったが失敗だったかもしれない。雪音ちゃんがおかしな責任を感じてしまっている。
「あのね、雪音ちゃんはなにも悪くないからね? こういうのって運だから。俺が巻き込まれたのも単に俺の運が悪かっただけだからね? 決して雪音ちゃんのせいではないよ?」
「とにかく! 私がどうにかするので! カミ様はご心配なく!」
いや心配しかねぇよ。マジでどうすんだよ、この状況。
俺の抵抗とは裏腹に。
なぜかやる気に満ちた雪音ちゃんは、きらきらと目を輝かせていた。あ、こいつ今の状況を楽しんでるわ。ようやくそのことに気が付いた俺は、そっと頭を抱えた。誰かこの聖女を止めてくれ、本当に。
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