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一年
自己紹介後編:this spring
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「次はあたいか」
ロン爺が座ったと同時にとてもやる気のない声が響き渡った。
その声の主はゆらりゆらりと赤の尻尾を揺らし、ダルそうな赤の猫目で俺を一瞥する。彼女は赤猫族だった。
「初めまして、セオ様。あたいはアカサ。冒険者ギルドの向かい側にあるアカサ雑貨店の店主をさせてもらってるよ。日用品に工具、武器なんかもおいてるよ」
「鉱物はおいてあるの?」
俺がそう問いかけるとアカサさんはだらんと下げていた耳をピンと立てた。
ライン兄さんが鉱物を町の何処で買ってきているか知らないんだよな。
「ああ、勿論さ。何なら、能力石や特異石、アーティファクトもおいているよ」
「それホント!?」
「ああ。まぁ、その分値段は高いがね」
それでもいい。とても朗報である。
ん? でも、それって自由ギルドでもできないか?
と、そう思った瞬間、アカサさんがニヤリと笑った。
「セオ様。今度、どんな鉱物を一つプレゼントするから、あたいと話さないかい。……いいよな、ロイス様」
「良いけど……」
「よし。セオ様。必ず来てくれよ」
そう一方的に俺に言いつけた後、アカサさんはドカッと席に座り寝てしまった。赤猫の尻尾が呼吸に合わせて揺れている様はとても見ていて和む。
だが、いいのかそれで。怒られないのか?
と思って周りを見たがみんな気にしてなさそうである。いつもの事なのだろう。
「次は俺か」
そう声を上げたのは熊だった。
おっと違う。熊の様な男だった。
「初めまして、セオドラー様。俺はグリュウ。グリュウ食堂・宿屋の店主だ。自慢だがお前さんのところの料理人と引けはとらない、いや、それ以上にうまい料理が出せると自負している。だから、一度は飯を食べに来てくれ」
「わかったよ」
それからグリュウさんは俺を少し睨み。
「ああ、それと、俺は種族は森熊族だ」
そう言ってグリュウさんは座った。
なるほど。熊と思ったことがバレていたと。
てか、ホント。何で思った事が、こう、筒抜けなんだろう。ポーカーフェイスは得意なのに。
はぁ。
あ、ところで、今思ったんだが、この町の人って軽いな。いや、重いのと軽いのどっちがいいかと言われたら軽い方が断然いいんだが。
何というか意外である。
「では、俺か」
俺の考えを他所に筋肉ムキムキの老人が立ち上がった。ぶっちゃけ、アラフォーくらいに見える。
「俺の名はケーレス。ケーレス工房の長だ。大工から鍛冶まで何でもしている」
凄みのある声音で会議室を響かせ、ケーレスさんは座った。
「よろしくお願いします。ケーレスさん」
「ふんっ」
おっと。ガワは不愛想な人のようである。瞳の奥から感じるものはもっと別の優しいものではあるが。たぶん職人気質みたいなものだろう。そういうのでまとめるのは良くないが、一応、そのカテゴリーにおいておこう。
それから次に、二人の人物が立ち上がった。
「では、私たちか。……、改めまして、セオドラー様。私はマキーナルト領の守護兵団団長、グレイブと申します」
厳つい顔とは相も似つかない優しい声音で、グレイブは語りかけるように話し、一礼する。
「私は放浪兵団副団長、ルルネネと言います」
それに続いてルルネネさんも俺に一礼する。
そして、十分な時が経った後、二人は顔を上げてた。
「二人とも改めて、よろしく」
「はい」
「ええ」
そして二人が座り、次に立ち上がったのはラリアさんだった。
「私も改めましてですが、ラート町支部冒険者ギルドマスター兼ラート町支部自由ギルド副マスターをしているラリアと申します。種族は殻翼族です。これからも、どうぞよろしくお願いしますわ、セオドラー様」
肩書が長い。
「こちらもよろしく、ラリアさん」
……、ん? あれ?
そう言えば今、ラリアさんは冒険者ギルドマスターと自由ギルド副マスターっていたよな。
あれ? 自己紹介が終わってないのは残り一人だが、もしかして……
「そう! セオくん、正解だよ! ボクこそが自由ギルドマスターであるソフィアさ! ふふん」
またしても机の上に仁王立ちするソフィア。さんはいらん。精神的に同年代だ。
手を腰に当てて、ふんぞり返っているさまはとても大人には見えない。どう考えても小学生である。
「ロイス父さん。大丈夫なの?」
俺はたまらずロイス父さんに聞いた。
「いや、確かにそう思うのも仕方ないと思うけど、あれでも実力はあるんだよ。ついでに人望も」
「ふーん。そういうもんな――」
「ねぇ、ロイスくん?」
あ、やべっ、て感じな顔をするロイス父さん。にこやかに睨み付けるソフィア。
「セオくんもだよ! 何頷いてるの?」
あ、こっちにも飛んできた。ソフィアはふしゃーって猫の威嚇の仕草でこちらを睨む。
「マスター。そんなことはどうでもいいので、早く自己紹介を済ませてください」
が、ラリアさんに止められる。
「むぅ、そんな事って……」
「どうせ、全然気にしていないんでしょ」
「まぁ、そうだけど……。はぁ、しょうがない。セオくん。ボクの種族は小人族。つまり、成人になっても子供くらいの身長しかないだけで中身は立派な大人だよ。というか、この中で一番最年長なんだから」
つまりロリバ――
ヒュン
俺の目の前に短剣が刺さっていた。“高速思考”を持つ俺が追えないほどの速さでナイフを放ったのだ。
「おいセオ! なにか?」
鬼の凶相と心胆を寒からしめる声。
「何でもないです。すみません」
恐ろしい。
そして、遅れて滂沱の冷や汗が流れ出る。
ホント、禁句は絶対に考えてはいけない。もちろん口にもしてはいけない。
これ絶対。ゼッタイ。
「うん。よろしい。じゃ、ロイスくん。説明よろしくね?」
それから一転して子供の如き無邪気な笑顔をロイス父さんに向けるのだった。
ロン爺が座ったと同時にとてもやる気のない声が響き渡った。
その声の主はゆらりゆらりと赤の尻尾を揺らし、ダルそうな赤の猫目で俺を一瞥する。彼女は赤猫族だった。
「初めまして、セオ様。あたいはアカサ。冒険者ギルドの向かい側にあるアカサ雑貨店の店主をさせてもらってるよ。日用品に工具、武器なんかもおいてるよ」
「鉱物はおいてあるの?」
俺がそう問いかけるとアカサさんはだらんと下げていた耳をピンと立てた。
ライン兄さんが鉱物を町の何処で買ってきているか知らないんだよな。
「ああ、勿論さ。何なら、能力石や特異石、アーティファクトもおいているよ」
「それホント!?」
「ああ。まぁ、その分値段は高いがね」
それでもいい。とても朗報である。
ん? でも、それって自由ギルドでもできないか?
と、そう思った瞬間、アカサさんがニヤリと笑った。
「セオ様。今度、どんな鉱物を一つプレゼントするから、あたいと話さないかい。……いいよな、ロイス様」
「良いけど……」
「よし。セオ様。必ず来てくれよ」
そう一方的に俺に言いつけた後、アカサさんはドカッと席に座り寝てしまった。赤猫の尻尾が呼吸に合わせて揺れている様はとても見ていて和む。
だが、いいのかそれで。怒られないのか?
と思って周りを見たがみんな気にしてなさそうである。いつもの事なのだろう。
「次は俺か」
そう声を上げたのは熊だった。
おっと違う。熊の様な男だった。
「初めまして、セオドラー様。俺はグリュウ。グリュウ食堂・宿屋の店主だ。自慢だがお前さんのところの料理人と引けはとらない、いや、それ以上にうまい料理が出せると自負している。だから、一度は飯を食べに来てくれ」
「わかったよ」
それからグリュウさんは俺を少し睨み。
「ああ、それと、俺は種族は森熊族だ」
そう言ってグリュウさんは座った。
なるほど。熊と思ったことがバレていたと。
てか、ホント。何で思った事が、こう、筒抜けなんだろう。ポーカーフェイスは得意なのに。
はぁ。
あ、ところで、今思ったんだが、この町の人って軽いな。いや、重いのと軽いのどっちがいいかと言われたら軽い方が断然いいんだが。
何というか意外である。
「では、俺か」
俺の考えを他所に筋肉ムキムキの老人が立ち上がった。ぶっちゃけ、アラフォーくらいに見える。
「俺の名はケーレス。ケーレス工房の長だ。大工から鍛冶まで何でもしている」
凄みのある声音で会議室を響かせ、ケーレスさんは座った。
「よろしくお願いします。ケーレスさん」
「ふんっ」
おっと。ガワは不愛想な人のようである。瞳の奥から感じるものはもっと別の優しいものではあるが。たぶん職人気質みたいなものだろう。そういうのでまとめるのは良くないが、一応、そのカテゴリーにおいておこう。
それから次に、二人の人物が立ち上がった。
「では、私たちか。……、改めまして、セオドラー様。私はマキーナルト領の守護兵団団長、グレイブと申します」
厳つい顔とは相も似つかない優しい声音で、グレイブは語りかけるように話し、一礼する。
「私は放浪兵団副団長、ルルネネと言います」
それに続いてルルネネさんも俺に一礼する。
そして、十分な時が経った後、二人は顔を上げてた。
「二人とも改めて、よろしく」
「はい」
「ええ」
そして二人が座り、次に立ち上がったのはラリアさんだった。
「私も改めましてですが、ラート町支部冒険者ギルドマスター兼ラート町支部自由ギルド副マスターをしているラリアと申します。種族は殻翼族です。これからも、どうぞよろしくお願いしますわ、セオドラー様」
肩書が長い。
「こちらもよろしく、ラリアさん」
……、ん? あれ?
そう言えば今、ラリアさんは冒険者ギルドマスターと自由ギルド副マスターっていたよな。
あれ? 自己紹介が終わってないのは残り一人だが、もしかして……
「そう! セオくん、正解だよ! ボクこそが自由ギルドマスターであるソフィアさ! ふふん」
またしても机の上に仁王立ちするソフィア。さんはいらん。精神的に同年代だ。
手を腰に当てて、ふんぞり返っているさまはとても大人には見えない。どう考えても小学生である。
「ロイス父さん。大丈夫なの?」
俺はたまらずロイス父さんに聞いた。
「いや、確かにそう思うのも仕方ないと思うけど、あれでも実力はあるんだよ。ついでに人望も」
「ふーん。そういうもんな――」
「ねぇ、ロイスくん?」
あ、やべっ、て感じな顔をするロイス父さん。にこやかに睨み付けるソフィア。
「セオくんもだよ! 何頷いてるの?」
あ、こっちにも飛んできた。ソフィアはふしゃーって猫の威嚇の仕草でこちらを睨む。
「マスター。そんなことはどうでもいいので、早く自己紹介を済ませてください」
が、ラリアさんに止められる。
「むぅ、そんな事って……」
「どうせ、全然気にしていないんでしょ」
「まぁ、そうだけど……。はぁ、しょうがない。セオくん。ボクの種族は小人族。つまり、成人になっても子供くらいの身長しかないだけで中身は立派な大人だよ。というか、この中で一番最年長なんだから」
つまりロリバ――
ヒュン
俺の目の前に短剣が刺さっていた。“高速思考”を持つ俺が追えないほどの速さでナイフを放ったのだ。
「おいセオ! なにか?」
鬼の凶相と心胆を寒からしめる声。
「何でもないです。すみません」
恐ろしい。
そして、遅れて滂沱の冷や汗が流れ出る。
ホント、禁句は絶対に考えてはいけない。もちろん口にもしてはいけない。
これ絶対。ゼッタイ。
「うん。よろしい。じゃ、ロイスくん。説明よろしくね?」
それから一転して子供の如き無邪気な笑顔をロイス父さんに向けるのだった。
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