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一年
某ラスダン的な町:this spring
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「はぁ。わかったよ。元はと言えばセオが悪いしね」
「え、何の事?」
何だ藪から棒に。
ん? でも、今のロイス父さんの発言からいくと、ソフィア達がロイス父さんに追及してたのって俺の事?
でも変なことしたか? 礼儀作法は“研究室”を使ったから完璧だった筈だし、言葉遣いもそれほど変ではなかったはずだ。
「はぁ。こういう能天気さはどうすべきか……」
「まぁ、良いところだし、ロイスくんたちが頑張ってサポートするしかないね」
「んー。一般常識くらいキチンと教えたいところだけどね。まぁ、個々じゃあ意味はなさないけどね」
「自由ギルドの資料室にある程度のものはあるけど……、いや、確かに意味はなさそうかな。プラスよりマイナスの方が大きそう」
困惑する俺を置いて、ロイス父さんとソフィアは勝手に会話を進めていく。
正直、何のことを言っているのか分からない。
「のお、お二方。そこだけで会話を完結させないで欲しいのだが」
「ああ、悪いね、フェーデ。じゃ、ロイスくん、説明を」
そうソフィアに言われたロイス父さんは俺の方にくる。
「えっ、何するんの!」
そして俺を持ち上げ、机の上に座らせた。
「皆さんがさっき感じた通り、セオは特異能力を持っています」
「ちょっ! ロイス父さん!?」
そして、俺が特異能力を所有している事をばらしたのだ!
「ロイス父さん! 何でばらすの……、あれ、今、みんなが感じたって言った?」
「うん。言ったよ。……、はぁ、その様子じゃ気づいてなさそうだね」
周りを見ると、みんな全くもって驚いてない。本では特異能力はとても稀少だと書いてあったはずだ。
ってことは、みんな知ってたのか。
え? 待って。いつバレた。俺の“解析者”は内心発動系の能力だから、自分から話さない限り、そうバレることはない。
鑑定系の能力ならステータスを覗く事で能力が分かることはあるが、それだって常に警戒して“研究室”に妨害してもらってる。もし、万が一鑑定系の能力で鑑定されたら、その時点で誰が鑑定したかまで分かるようになっている筈だ。
「セオ、さっき自己紹介する時に何をしたか思い出してごらん」
ロイス父さんはなるべく優しく俺に問いかける。
自己紹介? ええー、自己紹介は普通に……
「あ」
「ようやく気が付いたみたいだね。そう、内心発動系の能力は鑑定されない限り、バレないよ。けど、外部発動にしたらそれはバレるよね」
ああーーー! やってしまった!
そうだった。礼儀作法を完璧にするために“研究室”で肉体を制御、つまり能力の行使を外で行ったんだ!
「あーーー。なんで! 先に言ってよ! 注意してよ!」
「はぁ。あれだけ能力に精通していて、それに気が付かない方がおかしいんだよ」
ロイス父さんがアホの子を見るように俺を見る。
やめてくれ、そんな目で見ないでくれ。恥ずかしい。
でも、そんな俺を無視してソフィアはロイス父さんに問いかける。
「で、セオくんには悪いけど、セオくんが所持してる特異能力の詳細は? あと、何でその年で所持ができる理由を。普通は魂魄の許容がないはずなんだから」
そういう事か。だからソフィアは怒っていたのか。魂魄が、つまり、俺の存在があり得ないんだもんな。
でも、その前に気になることがある。
「待って、ソフィア。その前に一つ。確かに俺は“解析者”を行使した。けど、ここにいるみんながそれを分かったの? それこそあり得ないじゃん。外部発動で行使はしたけど、普通それは感知できないじゃん」
そうなのだ。能力だって目に見えて分かる発動ならまだしも、そうでないものなら普通、分からない。
「ロイスくん。セオくんにこの地についてどういう所か説明したことは?」
俺の遮りに、快く待ってくれてたソフィアはロイス父さんに訊ねた。
「あるにはあるけど、まぁ、外に出たことはないから実感はまずないよね」
「ああ、そういうこと。……、いいかい、セオくん」
そして、いつになく真剣な顔で俺の目を覗き込む。
「ここはかつて、アダト森林とバラサリア山脈から溢れ出る魔物によって、魔境とさえ言われていた場所だよ。そしてロイスくんがこの地の領主になるまで、エレガント王国や自由ギルドでも本格的な対処はできなかった。でもね、この地は昔から住んでいる人たちがいる。魔境と呼ばれた場所で生き残ってきた人々がいるんだ」
「もしかして、ロン爺やグレイブ、ルルネネさんとか?」
俺はグリュウさんやアカサさん、ケーレスさんなども見る。
「うん。というより、ボクも含めて全員だね」
「え? ソフィアやラリアさんもなの!?」
自由ギルドの人って派遣だと思ったんだが。そして話が読めてきた。
「今、セオくんが思った通り、普通は派遣だよ。だけど、この地は特殊だからね。っと、それで、ボクたちはこの地を生き残ってきた。それは大変だよ。セオくんが想像するよりはるかに。たぶんそれが実感できるのは来年だと思うけどね。まぁ、それはおいといて、だから、ボクたちは強いんだ。それは戦う強さだけじゃない。逃げる強さ、隠れる強さ、見つける強さ、生き残る強さ。ボクたちだけじゃない。この町の大人はみんな強い。だって、この地で生き延びてきたんだから」
それから、ソフィアは大きく一息つき、言った。
「だから、セオくん。ボクたちは特異能力くらい感じ取れるんだ。それが感じ取れないと死んでしまうから」
その最後の一言は畏れすら抱く重い重い言葉だった。
「ロイス父さん、この町って結構ヤバい?」
俺はその重みに耐えられず、ロイス父さんに訊ねた。
「まぁ、そうだね。さっき、グレイブとの会話で僕が国と戦争できるって言ったけど、この町なら、たぶんこのエア大陸全土まではいけるくらいかな」
クロノス爺。ここはとてもヤバいです。
それくらいはキチンと事前報告をしてほしかったです。
「え、何の事?」
何だ藪から棒に。
ん? でも、今のロイス父さんの発言からいくと、ソフィア達がロイス父さんに追及してたのって俺の事?
でも変なことしたか? 礼儀作法は“研究室”を使ったから完璧だった筈だし、言葉遣いもそれほど変ではなかったはずだ。
「はぁ。こういう能天気さはどうすべきか……」
「まぁ、良いところだし、ロイスくんたちが頑張ってサポートするしかないね」
「んー。一般常識くらいキチンと教えたいところだけどね。まぁ、個々じゃあ意味はなさないけどね」
「自由ギルドの資料室にある程度のものはあるけど……、いや、確かに意味はなさそうかな。プラスよりマイナスの方が大きそう」
困惑する俺を置いて、ロイス父さんとソフィアは勝手に会話を進めていく。
正直、何のことを言っているのか分からない。
「のお、お二方。そこだけで会話を完結させないで欲しいのだが」
「ああ、悪いね、フェーデ。じゃ、ロイスくん、説明を」
そうソフィアに言われたロイス父さんは俺の方にくる。
「えっ、何するんの!」
そして俺を持ち上げ、机の上に座らせた。
「皆さんがさっき感じた通り、セオは特異能力を持っています」
「ちょっ! ロイス父さん!?」
そして、俺が特異能力を所有している事をばらしたのだ!
「ロイス父さん! 何でばらすの……、あれ、今、みんなが感じたって言った?」
「うん。言ったよ。……、はぁ、その様子じゃ気づいてなさそうだね」
周りを見ると、みんな全くもって驚いてない。本では特異能力はとても稀少だと書いてあったはずだ。
ってことは、みんな知ってたのか。
え? 待って。いつバレた。俺の“解析者”は内心発動系の能力だから、自分から話さない限り、そうバレることはない。
鑑定系の能力ならステータスを覗く事で能力が分かることはあるが、それだって常に警戒して“研究室”に妨害してもらってる。もし、万が一鑑定系の能力で鑑定されたら、その時点で誰が鑑定したかまで分かるようになっている筈だ。
「セオ、さっき自己紹介する時に何をしたか思い出してごらん」
ロイス父さんはなるべく優しく俺に問いかける。
自己紹介? ええー、自己紹介は普通に……
「あ」
「ようやく気が付いたみたいだね。そう、内心発動系の能力は鑑定されない限り、バレないよ。けど、外部発動にしたらそれはバレるよね」
ああーーー! やってしまった!
そうだった。礼儀作法を完璧にするために“研究室”で肉体を制御、つまり能力の行使を外で行ったんだ!
「あーーー。なんで! 先に言ってよ! 注意してよ!」
「はぁ。あれだけ能力に精通していて、それに気が付かない方がおかしいんだよ」
ロイス父さんがアホの子を見るように俺を見る。
やめてくれ、そんな目で見ないでくれ。恥ずかしい。
でも、そんな俺を無視してソフィアはロイス父さんに問いかける。
「で、セオくんには悪いけど、セオくんが所持してる特異能力の詳細は? あと、何でその年で所持ができる理由を。普通は魂魄の許容がないはずなんだから」
そういう事か。だからソフィアは怒っていたのか。魂魄が、つまり、俺の存在があり得ないんだもんな。
でも、その前に気になることがある。
「待って、ソフィア。その前に一つ。確かに俺は“解析者”を行使した。けど、ここにいるみんながそれを分かったの? それこそあり得ないじゃん。外部発動で行使はしたけど、普通それは感知できないじゃん」
そうなのだ。能力だって目に見えて分かる発動ならまだしも、そうでないものなら普通、分からない。
「ロイスくん。セオくんにこの地についてどういう所か説明したことは?」
俺の遮りに、快く待ってくれてたソフィアはロイス父さんに訊ねた。
「あるにはあるけど、まぁ、外に出たことはないから実感はまずないよね」
「ああ、そういうこと。……、いいかい、セオくん」
そして、いつになく真剣な顔で俺の目を覗き込む。
「ここはかつて、アダト森林とバラサリア山脈から溢れ出る魔物によって、魔境とさえ言われていた場所だよ。そしてロイスくんがこの地の領主になるまで、エレガント王国や自由ギルドでも本格的な対処はできなかった。でもね、この地は昔から住んでいる人たちがいる。魔境と呼ばれた場所で生き残ってきた人々がいるんだ」
「もしかして、ロン爺やグレイブ、ルルネネさんとか?」
俺はグリュウさんやアカサさん、ケーレスさんなども見る。
「うん。というより、ボクも含めて全員だね」
「え? ソフィアやラリアさんもなの!?」
自由ギルドの人って派遣だと思ったんだが。そして話が読めてきた。
「今、セオくんが思った通り、普通は派遣だよ。だけど、この地は特殊だからね。っと、それで、ボクたちはこの地を生き残ってきた。それは大変だよ。セオくんが想像するよりはるかに。たぶんそれが実感できるのは来年だと思うけどね。まぁ、それはおいといて、だから、ボクたちは強いんだ。それは戦う強さだけじゃない。逃げる強さ、隠れる強さ、見つける強さ、生き残る強さ。ボクたちだけじゃない。この町の大人はみんな強い。だって、この地で生き延びてきたんだから」
それから、ソフィアは大きく一息つき、言った。
「だから、セオくん。ボクたちは特異能力くらい感じ取れるんだ。それが感じ取れないと死んでしまうから」
その最後の一言は畏れすら抱く重い重い言葉だった。
「ロイス父さん、この町って結構ヤバい?」
俺はその重みに耐えられず、ロイス父さんに訊ねた。
「まぁ、そうだね。さっき、グレイブとの会話で僕が国と戦争できるって言ったけど、この町なら、たぶんこのエア大陸全土まではいけるくらいかな」
クロノス爺。ここはとてもヤバいです。
それくらいはキチンと事前報告をしてほしかったです。
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