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三章 湯けむり温泉、ぬるぬるおふろ

凛は二人のお嫁さん

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 航はそのまま気を失ってしまった。挿入されながらの射精は、身体にかかる負担がとても大きいせいだ。それから何十分経っただろう。航が次に目を覚ますと、布団に寝かせられていた。服は綺麗にされて浴衣を着せられている。

「っ、ん……」

 ぼんやりとした光の中に、小さく義弟の声がした。起きている事がばれないようにして、寝返りを打った。
 まだ凛は花嫁さんの格好をしていた。可愛いからつい買って持ってきてしまった衣装、というか下着を凛は可愛く着こなしている。ぷっくりと膨らんだ乳首を三角形に囲うトップレス。前は清楚なのに後ろは何も布がないえっちなパンツ。二の腕まで覆う手袋と太もものニーハイソックス。穏やかなたれ目。ほくろ。そして行為中は外されていたヴェールを深くかぶっていた。
 それを臨の手がそっとはらって、口づけをする。それはまるで結婚式だった。愛の誓い。凛がしっかりと臨に抱きついていて、臨もまた優しく抱きしめている。やがて唇が離れた。

「……結婚しよっか」
「うん……俺、臨さんのお嫁さんになりたいな……」

 はにかむように笑う凛。それを優しく見守る臨。それはどこにでもいるような普通のカップルのようだった。ちく、と航の胸が痛む。しかしその痛みも二人の性行為をのぞき見しているうちに消えた。

「あ、あん、臨さんのおちんちん、がっちがち……なんでお兄ちゃんのナカに出さなかったの?」
「……凛ちゃんのナカに出したくて我慢してた」
「そうなんだ……えらい、えらい……」

 凛がにっこり笑って頭を撫でた。それはまるで小さな子にするようなふるまい。身体の大きながっちりとしたスポーツマンにするようなものではない。しかし、臨は微笑んでされるがままだ。固い黒髪を、凛の小さな手が撫でる。何度も、優しく。


「凛ちゃん、好き。好きだよ……君を、愛しているんだ。だから、君の為ならどんな事でもする……」


 それはかつて航が凛に囁いた言葉に似ていた。臨が凛と初めて関係を持った日のこと。溺愛。そんな単語が頭をよぎる。
 もう一度キスをして、凛の身体が優しく布団に押し倒される。丁寧に、痛くないようにゆっくり。航の時とは大違いの扱いだった。相手を気遣って、行われる優しいセックス。
 それを航はずっと見ていた。好きな人が好きな子と結ばれるのを、ずっと。


 忘れられない夏の日の記憶がある。


 義父と近所のおじさんのこと。座り込んでドアを見つめる事しか出来なかった、過去の自分。その時みたいに、ただ布団の中からじっと見ていた。

「あっ、あん……おっきい……あ、すき……のぞむさん、だいすきぃ……」
「俺も。俺も好きだよ、凛ちゃん……凛」

 優しいまなざしで凛を見つめた臨が、そう言ってキスをした。腰を動かす。凛の足が逞しい腰に巻き付く。ぐちゅ、ぐちゅ、と音がする。
 ただただ、興奮した。横に自分が寝ているのに、何も気にせず行われる恋人同士の愛情表現。それをただ見ている事しかできない自分。悔しいのに、苦しいのに、胸がドキドキして興奮する。性器が緩やかに勃ちあがり、先走りの汁が下着に垂れる。

 ふと、凛と目が合った。とろんととろけた顔だった。

 航はその凛の顔に、かつて覗き見た義父の顔を重ね合わせる。そして、その後の猛獣のような目も。身体がこわばる。


「あっ、おにいちゃん起きてる……ねえ、おにいちゃんも挿れて? 三人で一緒にしよ……?」


 凛は頬を真っ赤に染めて笑った。その笑顔はまるで野に咲くスミレのようだった。鮮やかな青紫色の花を可憐に咲かせる、春の妖精。
 ぞくぞくとした。でも凛を花にたとえるとしたら、スミレではない。スミレによく似ているけれどもっと禍々しい……ムシトリスミレ。可愛らしい容姿と蜜で昆虫をおびきよせて、粘液で捕まえて逃げられなくしてからじわじわと殺す……蟲喰いの姫君。
 妖しい色香を纏いながら、二人の男を手玉にとる、天然の小悪魔。


「……そうだね、いつまでも三人で一緒にあそぼうね」


 航もまたにっこりと笑って、凛のナカに性器をねじこんだ。はしたない声を上げて乱れる花嫁を臨と共にひしとかき抱いて、航は口角を上げた。

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