56 / 65
三章 湯けむり温泉、ぬるぬるおふろ
兄弟げんか
しおりを挟む「お兄ちゃん! いくら綾瀬さんが好きだからって、脅してなんてやりすぎ!」
「……臨がかつて凛にやったことと同じことを、やり返してみただけだよ。僕だって……ずっと、臨とこういう事をしたいからね……」
航が眼鏡を指で押し上げながら、二人の所へ近寄ってくる。窓から差し込む夕日が長く影を伸ばす。その光のまぶしさで、航の顔はよく見えなかった。
「こうなったの、全部お兄ちゃんのせいじゃん! お兄ちゃんの腹黒!」
「わがまま甘えんぼ凛に言われたくない」
兄弟が珍しくケンカをしていた。原因は臨である。しかし、どうしていいのか分からず……オロオロとしていた。とりあえずカーテンを締めて電気をつけたが、兄弟はまだ色々言い争っていた。
俺のために争うのはやめて……うっかりそう言いそうになったけれど、そんな事を言ったら兄弟に何を言われるか分からない。せっかくの旅行。どうすれば二人が元の仲良し兄弟に戻ってくれるのか……今まであったあれこれを一旦頭の外に押し出して考えるも、アイデアは浮かばない。そんなこんなしているうちに、もう夕飯の時間だった。
「ふ、二人とも! とりあえずご飯を食べよう! ほら、腹が減っては戦はできないって言うし……ねっ!」
何となくそれで強引に押し切った。よく考えたらとんでもないことを言っているけれど、とりあえず兄弟と共に食事が用意してある椿の間に向かう。もちろん、食事中の空気は最悪だったが料理はとてもおいしかった。
おいしく夕ご飯をいただいて部屋に戻るけれど……まだ兄弟はお互いにそっぽを向いている。どうすればいいのか……しかもその時綾瀬はさらに最悪な事を思い出した。
「そういえば昨日チェックインするときに、二日目の二十一時から旅館内の家族露天風呂を予約してたんだった!」
「え?」
「は?」
「ほら、ここ温泉がすごいから入ろうって言って、みんなで頼んだじゃん! あれ、どうしよう!」
時計を見るともう二十時半。もうあと少しで九十分間の露天風呂予約の時間になってしまう。
「そういう気分じゃないし、綾瀬さんだけ入って来れば……」
「あ、凛が行かないなら僕が一緒に行こうかなぁ……」
「はぁ!? 二人っきりじゃん……何考えてるの、お兄ちゃんのばか!」
「普通にお風呂に入るだけでそういう発想する方がどうかと思うよ。じゃあ、行こうか臨。凛はお留守番ね」
「やだやだやだやだ! 俺と一緒に入るの!!」
そんなこんなで二人に引っ張られるようにして、綾瀬は館内の露天風呂に連れていかれることになった。
何でこんなことに……凛と航の顔には顔に大きくそう書いてあるが、流れというものは恐ろしい。気が付けば身体を洗って、みんなで温泉に浸かっていた。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
『僕は肉便器です』
眠りん
BL
「僕は肉便器です。どうぞ僕を使って精液や聖水をおかけください」その言葉で肉便器へと変貌する青年、河中悠璃。
彼は週に一度の乱交パーティーを楽しんでいた。
そんな時、肉便器となる悦びを悠璃に与えた原因の男が現れて肉便器をやめるよう脅してきた。
便器でなければ射精が出来ない身体となってしまっている悠璃は、彼の要求を拒むが……。
※小スカあり
2020.5.26
表紙イラストを描いていただきました。
イラスト:右京 梓様
【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う
R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす
結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇
2度目の人生、異世界転生。
そこは生前自分が読んでいた物語の世界。
しかし自分の配役は悪役令息で?
それでもめげずに真面目に生きて35歳。
せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。
気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に!
このままじゃ物語通りになってしまう!
早くこいつを家に帰さないと!
しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。
「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」
帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。
エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。
逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。
このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。
これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。
「アルフィ、ずっとここに居てくれ」
「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」
媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。
徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。
全8章128話、11月27日に完結します。
なおエロ描写がある話には♡を付けています。
※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。
感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂
朝井染両
BL
お久しぶりです!
ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。
こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。
合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。
ご飯食べます。
嫉妬深い弟が兄にお仕置きするだけの話
丹砂 (あかさ)
BL
軽率なエロの第二弾です。
お仕置きで、大人のおもちゃを入れたままの挿入です。
弟(恋人・執着S)× 兄(恋人・意地っ張りM気質)
気持ち的には『執着・溺愛の弟が臆病の兄を排泄管理して逃げられないようにする話。』の前編かな。
このお話しが大学生頃で、上のお話しが社会人編です。
過去のメモ帳に残っていたので出来心で上げたと、再び著者は言っています。
何だかいつも攻めがなんか、あれで、色々ごめんなさい。
でもまだいくつかメモがあるのでまた今度上げます。
※お話しは繋がっておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる