55 / 65
三章 湯けむり温泉、ぬるぬるおふろ
綾瀬の本音
しおりを挟む「俺の事、絶対裏切らないでって言ったよね……!」
凛の目つきは険しく、今までに見たことが無いくらい激高していた。綾瀬はぴんときた。凛ちゃんは勘がいいから、きっと自分と航のことに気付いたのだ……と。綾瀬は顔をぐしゃぐしゃに歪めてうなだれた。
「ごめん……謝って許されるとは思ってないんだけど……本当に、ごめんなさい……!」
「……な、なんであんなこと、したの……」
航と違って綾瀬はきちんと認めた。そして謝った。その悲愴な面持ち、絶対に何か理由がある……凛の怒りが削がれ、なぜあんなことをしたのかという理由の究明の方が優先された。
「航が……一度だけ、少しだけでいいって言って……つい流れで……。でも、そこで終わるつもりだったんだ……それなのに画像を使って脅されてしまった……」
綾瀬は涙ぐんでいた。身体はがっしりとしていて精悍なのに、思いのほか涙もろいのだ。航ならば人の好い綾瀬を丸め込んで転がすくらい簡単にやるだろう。義理と言えど兄弟。兄の性格ぐらい、弟はきちんと把握している。
おそらく綾瀬の言っていることに嘘はない。凛はそう判断した。そうしたら目の前でしょんぼりとしている年上の人が、急にいじらしく見えてきた。
「そうだったんだね……じゃあさ、お兄ちゃんの事はどう思ってるの?」
「それが、分からない……今まで、友達としか見た事はなかった。でも、好きって言われて……急にそんな事を言われても分からない」
綾瀬はひたすらに真っすぐなので、これもまた嘘ではないだろう。でも何となくわかる。気付いていないだけで、綾瀬もそんなに航の事を悪いとは思っていない事。将来的にはどうなるか分からない。好きな人に自分以外に好きな人が出来る。それは寂しくて胸が痛むこと。
でも、好きな人が一人じゃなきゃいけないなんて、誰が決めたんだろう。三人で付き合っていて……自分だけが二人とも好きでどちらも手に入れたいなんて、わがままだったんだ。
凛もまたしょんぼりしながら綾瀬を抱きしめた。それは初めて綾瀬と身体を重ねた時みたいだった。あの時と何も変わらない。大切に包み込むような優しい抱擁だった。
「……もう、そんな顔してたら許しちゃうじゃん……そうだよね、綾瀬さん……ううん、臨さんは優しいから……」
凛が綾瀬……臨の頭を抱え込むようにして抱きしめる。よしよし、と撫でる。さらさらで少し固い黒髪が揺れる。
「……でも、俺は凛ちゃんとだけこんなことしたい。俺は、君だけが欲しい……」
それはずっと隠してきた本音だった。本当は好きな子の身体を誰かと共有なんてしたくない。でも、凛は綾瀬も航も好き。言ったら嫌われるかもしれない。せっかく両思いになったのに、手放したくない。だけど航と三人でしている時の凛は何よりも綺麗で可愛くて愛おしい。どうすればいいのか分からない。綾瀬も複雑な思いに苛まれていた。
「そうだったんだ……」
「うん……でも、言ったら嫌われるかなって思って言えなかった」
「嫌いになるわけないよ……!」
健気な思いを聞いてしまって凛の心が動く。航と性行為をしたことは絶対許せないが……綾瀬が望んでやったことではないとしたら話は別だ。
「……そこにいるよね、お兄ちゃん!」
凛が鋭い声で綾瀬の肩越しに声をかけた。いつの間にいたのか、航が入り口近くの壁に背を付けて立っていた。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
『僕は肉便器です』
眠りん
BL
「僕は肉便器です。どうぞ僕を使って精液や聖水をおかけください」その言葉で肉便器へと変貌する青年、河中悠璃。
彼は週に一度の乱交パーティーを楽しんでいた。
そんな時、肉便器となる悦びを悠璃に与えた原因の男が現れて肉便器をやめるよう脅してきた。
便器でなければ射精が出来ない身体となってしまっている悠璃は、彼の要求を拒むが……。
※小スカあり
2020.5.26
表紙イラストを描いていただきました。
イラスト:右京 梓様
【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う
R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす
結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇
2度目の人生、異世界転生。
そこは生前自分が読んでいた物語の世界。
しかし自分の配役は悪役令息で?
それでもめげずに真面目に生きて35歳。
せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。
気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に!
このままじゃ物語通りになってしまう!
早くこいつを家に帰さないと!
しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。
「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」
帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。
エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。
逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。
このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。
これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。
「アルフィ、ずっとここに居てくれ」
「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」
媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。
徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。
全8章128話、11月27日に完結します。
なおエロ描写がある話には♡を付けています。
※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。
感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
彼女ができたら義理の兄にめちゃくちゃにされた
おみなしづき
BL
小学生の時に母が再婚して義理の兄ができた。
それが嬉しくて、幼い頃はよく兄の側にいようとした。
俺の自慢の兄だった。
高二の夏、初めて彼女ができた俺に兄は言った。
「ねぇ、ハル。なんで彼女なんて作ったの?」
俺は兄にめちゃくちゃにされた。
※最初からエロです。R18シーンは*表示しておきます。
※R18シーンの境界がわからず*が無くともR18があるかもしれません。ほぼR18だと思って頂ければ幸いです。
※いきなり拘束、無理矢理あります。苦手な方はご注意を。
※こんなタイトルですが、愛はあります。
※追記……涼の兄の話をスピンオフとして投稿しました。二人のその後も出てきます。よろしければ、そちらも見てみて下さい。
※作者の無駄話……無くていいかなと思い削除しました。お礼等はあとがきでさせて頂きます。
淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂
朝井染両
BL
お久しぶりです!
ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。
こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。
合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。
ご飯食べます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる