大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

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■77 久しぶりの王宮

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 数日前、私はバートン様ならぬランディさんを見送った。数日後の聖夜祭でまた会おう。そう言い残してここを去っていった。

 そして、私達は魔鉱車で首都に向かっている。私の他には、サマンサ、ギルバートさんだ。因みにもう一つの魔鉱車にスティーブン、ジョシュ、ローレンス。くれぐれも粗相のないようにとお話するようだ。大丈夫だろうか。

 あと、任務中の第二騎士団は一応湿地帯の件が落ち着いたからと半分が首都に来る事に。その為ご一緒したわけだ。とても大切な行事でありますから、と。


「まさか、王宮に呼ばれるとは……」

「賢者様でありますから」

「祈りを捧げる役目を担っておりますから、おかしくありませんよ」


 そう、聖夜祭で女神ガイアの像の前で祈りを捧げなければならなくなってしまったのだ。祈りを捧げる、とざっくり言われてもなぁ……具体的に何をしたらいいのか分からないから困ってしまう。きちんと出来るのだろうか。


「それで、本当によろしかったのですか?」


 サマンサが聞いてきたのは、あの盗賊の件。白状させたら、雇われたと言っていて。その主は、聞いた事のある名。私の領地のある一人の町長だった。

 普通なら最悪死刑。だって、領主の命を狙わせたんだもん。だけど、「罪を犯したとしても、彼は私の収める領地の領民。殺すなんて出来ないよ」と、牢屋行きに。期限を決めて牢屋生活となった。

 甘い? うん、自分でも思うよ。スティーブンに言われた、牽制の為にするべきですと。でもやっぱり酷いことはしたくないよ。

 ふと魔鉱車の窓の先を見ると、もう王城は目の前まで着いていた。


「お久しぶりでございます、賢者様」

「お久しぶりです、モワズリー卿」


 お出迎えには、モワズリーさんが来てくださった。本当に久しぶりだなぁ、王宮に来るのも。デビュタントから来てないか。

 お荷物はこちらへ、と侍女さん達がサマンサの所へ。私には、陛下がお呼びだとの事で案内役であるモワズリーさんについていったのだった。



 案内されたのはとある応接室。もう既に、陛下がニコニコして座っていて。手招きをされ目の前の席に。


「お久しぶりでございます、陛下」

「うむ、元気そうで何よりだ」


 紅茶を使用人が用意してくれて、それから陛下は人払いをしてくださった。人払いするほどこのあと何か大切なお話があるのだろうか、と思ったのに……


「さて、頑張っているようですね」

「……あのですね、陛下。私はただの男爵ですので……」

「ダメでしょうか、私にとって貴方は命の恩人ですし。そんな御方を敬わせていただくのは当然の事でしょう」

「あ、あの、陛下……ご勘弁を……」

「はっはっはっ、すまない。久しぶりに会えて嬉しかったものでな」


 陛下……酷くないですか、ちょっと。それをする為に人払いをしたんですか。……意地悪。

 ダルベルト卿から聞いたぞ、よくやっているようではないか。と笑顔で褒めてくれる陛下。私一人の力ではないし、ギリギリではあったけれどなんとか湿地帯が一段落してくれてよかった。

 
「陛下、第二騎士団の件、本当にありがとうございました」

「なぁに、我はただ第二騎士団に任務を与えただけに過ぎない。任務遂行の為に協力してくれてこちらこそ助かっている」

「はは、ありがとうございます」


 使えなくなっていたルートを復活させる為とはいえ、その任務には湿地帯のモンスター討伐も含まれている事になる。今の湿地帯を調査し、何ともなくなれば近い内に安心して使える道となるだろう。それまでやるべきことはまだあるけれど。


「さて、ステファニー殿は聖夜祭は初めてだったであっただろう。いきなり頼んで悪かったな」

「い、いえ。ですが、本当に私でよろしいのでしょうか……」


 だって、ここサーペンテインに来て1年も経っていない私が、この大切な行事で重要な役をするだなんて。今までモワズリーさんがしていたのなら、適任者は彼のはず。


「聖夜祭とは、大地の女神ガイアに日頃の感謝を伝えるための行事だ。皆の声を伝える役である。だからこそ、女神ガイアと一番近しい立場の者の役目。今この国での一番近い存在はステファニー殿を置いて他にいないのだ」

「な、るほど……」


 だから、賢者である私になった訳か。まぁ、バートン様ならぬランディさんもいるにはいるけれど陛下達は知らないからなぁ。

 とりあえず、モワズリー卿に明日話をするよう言ってあるから安心してくれ。との事だった。


「期待しておるぞ、賢者殿」

「へっ陛下!?」

「はっはっはっはっ!!」


 そ、そんな事言われたら余計緊張しちゃうじゃないですかぁ!! 絶対わざとですよね!!
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