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■76 彼の願い
しおりを挟むとても静かな、新月の夜。
とある建物の、庭に佇む石像。
その石像を動かす人物がいた。
ギギギ……と音を立てズラすと、置かれていた場所に陣が書かれている地面が見えた。
『 』
サーペンテインの言語とは違う言葉を発し、陣が紫に光り発動する。
すると、空間が現れ地面の下に続く階段が出現。
そして、カツ、カツ、と音を立てて彼は降りていったのだ。
何段か降りていくと、開けた空間に辿り着く。
手に持っていたランタンに明かりとして火をつける。
とても広く、壁には沢山の本の棚。植物、薬品、鉱物。そんなものが置かれていた。
つんっ……とした消毒液の匂い。甘い匂い。そんなものがこの部屋に充満している。
そして部屋の奥に、とても大きな透明な箱がある。
その中には、とあるものが入っていた。
「あぁ……」
それは、人の身体。
だが、今は氷漬けされている状態だ。
彼は、その人物をうっとりと、愛でるかのような目で見る。
「もう少しなんだ。だから、きっと、きっと、連れ戻して見せる……
それまで、彼女の元で待っていてくれ――」
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