大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

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■71 変異種リザードマン

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 空から様子を伺っていたら、いきなりこちらに跳躍してきたリザードマン。すごい脚力で私達の所まで届いてしまった。普通のリザードマンならこの三分の一くらいしか飛び上がる事は出来ないはず。それだけ、レベルが上がってるという事だ。

 私達はかろうじて避けることは出来たけれど、咄嗟の事でバランスを崩しバートン様が落ちてしまった。助けようとしたけれど、回転して上から落ちてきたリザードマンに邪魔をされて。

 このままじゃ避けられないと判断し、自らルシルの背から飛び降りた。彼女はくるっと身体を回し避けることが出来たようで、私も風魔法で何とかかわすことが出来た。

 そして、下を見降ろすとバートン様は地面に着地が出来ていたことを確認でき、ホッとした。きっと彼も風魔法を使ったのだろう。彼も錬金術を使えるようだったし。

 バートン様をロックオンしたリザードマン。突進していったリザードマンをタイミングよく上に跳躍して回避。くるっと回り頭と胴体の間、首に剣で突き刺す、筈だったのだが剣は通らなかった。それだけ、皮膚が硬いのだろう。

 それから、すばしっこいリザードマンの気を引く為に動き出すバートン様。私が攻撃してくれると踏んでくれたのだろう。期待に応えなければ。


〝レルドルの種〟『Ignisイグニス』『Glaciesグラシエス』『Ventusヴェントゥス


〝カヴェアの種〟『Terraテラ


 麻痺毒の蔓、そして鉄縄を巻き付け動きを封じる。そして、バートン様が隙間を見つけまた剣を突き刺すけれど……やはり硬い。弱点となる柔らかい場所を探すけれど簡単には見つからない。
 

「バートン様っ!!」


 一声かけると、後退してくれて。絞め上げているリザードマンを、錬成した鉄の板で囲う。何重にも重ねて隙間なく閉める。そして、


Ignisイグニス


 中に火魔法を。絞め上げている蔓も一緒に燃えてくれているだろう。少ししたら空気すらも燃やし尽くす。

 はずだったのだけど……


「……えっ」


 ガンッ、ガンッ、と中から叩く音がしている。そして、囲っている板がどんどん変形していて。何重にも重ねたはず、なんだけどなぁ。これでも駄目なんて。

 すぐに、出てこないよう今度は隙間を作り、上だけ開き同じもので囲う。そして、


〝ソフィートの種〟『Ignisイグニス』『Ventusヴェントゥス』『Tonitrua《トニトルス》』


「――マグマ」


 ドロドロの、1000℃高温の溶融物を流し込み蓋をする。周りも暑い為防壁で囲ってある。これでもちょっと暑いが。

 ゆっくりと、バートン様の立つ地面に降りた。


「大丈夫ですか」

「あぁ」


 数か所に傷を負っていた為にポーションを手渡した。

 これで倒れてくれるといいんだけれど……と思った次の瞬間、地面が揺れ始めた。そして……地面から出てきたのだ。掘ってきたのだろう、私達の目の前まで思わぬスピードで掘ってきて飛び出てきた。


〝カヴェアの種〟『Ventusヴェントゥス』『Terraテラ』『Glaciesグラシエス

 
 咄嗟の事だったけれど、大きな竜巻を錬成し上に飛ばして回避した。これは雷と氷を組み合わせている為、物理攻撃と雷撃がリザードマンに来るだろう。けれど、


「えっ」


 いきなりこちらに落ちてきたのだ。竜巻から出てきた事に驚かされて一歩動くのが遅くなった。隣にいたバートン様が拳で打撃されて飛ばされ、私もすぐ後に尻尾でふっ飛ばされた。


「……ッツゥ……」


 咄嗟にナイフを出して受け止め、土壁にぶつかりそうだった所を寸での所で弾力性のある防御壁で自分を囲い威力を軽減出来た。

 ナイフとは、あの鍛冶屋の親方が作ってくれたものだ。結構硬くて、今のでも全然ヒビすら入ってない。これがなかったらたぶん骨までいったかも。杖も折れてたか。あっぶなかった。

 先ほどの攻撃で所々火傷の部分はあるし、ダメージは受けている。けれど、まだこんなに早く動けるのか。

 バートン様というと、同じく少し遠くに激突していて。辛うじて受け身は取れたらしい、もう立ちあがっている。と、思ったら……



『 我、求めるは貫くつるぎ 』

『 構築 』



 いきなり、錬成陣を展開させていて。何かのコインの様な形の物質を投げ錬成。十数本の鋭利な剣を作り出し周りに浮かせていて。



『 いかずち 』



 雷を剣に纏わせ、飛ばした。リザードマンは避けるけれど何本かは皮膚に当たって。けれど、物理的にはダメージを与えられなかった。けど、今までのとで疲弊しているのだろうか。私達から数歩後退していった。

 
「チッ」


 舌打ちのようなものが聞こえて来たと思ったら、こちらにやってきたバートン様……顔、怖くないですか……? なんか、キレてません? このまま話していいのでしょう、か……?


「レディ、頼みがある。――銀閉氷牢の陣を作ってほしい」

 
 ……えっ。


『 我 求めるは無数の刃 』

『 我を守りし盾 』


 それまでの時間稼ぎは私がする、と。先程の詠唱で無数の剣がリザードマンの周りの空中に浮かされ、バートン様はリザードマンに立ち向かって行ってしまった。

 近づいた事によりリザードマンの拳が向けられたかと思うと、


『 構築 』


 盾として彼との間に板状に変形した鉱石がそれを防ぐ。あれは、トワ鉱石だ。とても硬い。そして、その横から彼がタイミングよく出てきてリザードマンの腕に一刺し。だが、やはり硬い為刺さることが出来なくて。

 もう片方の腕が彼の頭を掴もうとしていたけれど、


『 構築 』


 また間に鉱石の盾が錬成されていた。リザードマンが彼に気を向けている間に、今度はがら空きな背に剣が集中して突き刺さる。やはり中々貫けないけれど、脇の部分が少し切れていて。だけどやはり、決定的な攻撃にはなっていない。


『 我 求めるは硬き壁を射貫く大槍 』


 攻撃を盾を錬成しながら防ぎつつ詠唱を始めた彼。そんなことも出来るんだ、と吃驚してしまう。同時錬成は可能だけれど、あんな状況で作る事は私は出来るだろうか。

 まるで大槍の様な大きく、そして長く鋭利な鉱石を錬成、風魔法を組み合わせて投げ込んだ。リザードマンは避けようとするも、肩に突かれていた。

 リザードマンが、肩の槍を抜いていた時周りに彼がいない事に気が付いたようだ。そして、キョロキョロしているリザードマンの頭上、


『 我 求めるは大地に撃ちこむ大きな杭 』


 頭上から、先程よりも大きな鉱石が浮かんでいて。その上に彼が乗っているのが見えた。

 そして、重力で地上のリザードマンの頭上に堕ちてきたのだ。

 避けきれなかったのだろう、両手で大きな杭を止めるリザードマン。そして、腕力で横に傾け地響きと共に落とされた。

 今までの錬成は、大気、土の中にある、あらゆる物質を使って錬成したものだ。だけど、一度錬成した物をもう一度材料として錬成させる。それを繰り返して作り出している。以前ローレンスに教えたものだ。

 だけど、バートン様はそれを一度の錬成で完成させている。ショートカットしているんだ。そう陣に組み込んでいる。きっと以前からよく使うものなのだろう。

 私もショートカットは使う時はあるけれど、あまり必要ない。収納魔法陣にありとあらゆる素材があるからだ。ただ収納魔法陣から出して錬成すればいい話。

 だけど、接近戦で戦う彼にとっては収納魔法陣を開き、素材を出して、錬成する。その時間がとても惜しい。彼にとって一番重要なのはスピードだからだ。

 だから、周りにあるものを錬成素材として何度も錬成を繰り返し必要なものを作る。そしてショートカットで1回の錬成で済んでいる。だからこそ、接近戦で使うことが出来ているのだ。


 高度な錬成を素早く行い戦いに使用している。それだけ、戦いに特化した錬成を中心としてきたのだろう。

 以前見たことのある、錬金術に必要なあの杖を彼は今持っていないけれど……もしかして、あのレイピア? そう作られているのだろうか。


 私は思った。

 バートン様は、もしかして――



 いや、今は私のやるべきことに集中しよう。



『我 大地の女神ガイアの代理人なり_____』



 その一言で、地面に刺した杖の目の前に陣が広がる。

 とても、とても大きく広がり銀色の光を放った。

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