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■70 敵襲
しおりを挟む昼食には、バートン様とギルバートさんをお呼びした。
「あまりおもてなしが出来なくてすみません、お口に合いましたでしょうか」
「あぁ」
第二騎士団の方々もそうだったけれど、こういった貴族の方をお泊めする事は初めてだった。何とかスティーブンとサマンサのお陰で準備とかは出来たけれど……何か至らない点があっただろうか。と思ったけれど、大丈夫そうで良かった。
いつもはテーブルに並ぶのは丁度良い量の料理達だけど、伯爵であるギルバートさんだったりアスタロト公爵が一緒だから普通の貴族達の食事に合わせてテーブルいっぱいに並べてある。あぁ、勿体ない。……とは口には出せない。
そう思いつつお肉を食べようとナイフで切り口に運ぼうとした時、私の持つフォークが止まった。
感じたのだ。
それは、私の中ではあり得ない事で。まぁ、世の中あり得ないことなどないのだけれど……ちょっとやそっとじゃ起こりえないことが起こってしまったのだ。驚きで思わず席を立ってしまった。
そんな私の様子に、バートン様やギルバートさん。そして隣にいたジョシュやローレンス、周りに待機していた侍女達も驚きを隠せない。
「どうした、レディ」
私は、視線をある方向に向けた。建物の中だから見えるはずがないのだけれど、テーブルの少し離れた所にいたルシルが私の肩に乗ってきて同じ方向に視線を向けていて。
「し、湿地帯の、結界が……」
「っ!? 破壊されたのですか……!?」
私は、頷くしか出来なかった。翠水晶で作られた結界は、ちょっとやそっとじゃ破壊などできない代物だ。そんな結界を、モンスターが破壊したのか。いや、人間の可能性もあるかもしれない。……中に入る理由は分からないけれど。
でも、それを壊すだけの力を持っているモノがいるのは確かだ。それに、結界が破壊された事で出入口が出来てしまった。そこからモンスターが出てくる可能性もある。私達は大体湿地帯のモンスターは狩ったけれど……まだ残っている場所もある。まさか……
「全部か」
「いえ、一部分です。……領民が住む村に一番近い位置です……そ、それに、すぐそこに町もあって……」
ど、どうしよう。い、今から行っても……一体何体のモンスターがいるだろうか。村に、町もあって領民達が沢山いる。襲ってきたら絶対死傷者もいるはずだ。そんなの、そんなのっ……「レディ」……!?
「そちらは動けるな?」
「はい、すぐに」
「分かった、二手に分かれて向かってくれ」
「あっ……私は近い村の方に……!!」
ルシルで空から行けば早く着くし、様子も見れる。結界を壊したのが誰なのかも分かるだろうし……
「君の聖獣で行くのなら、私も乗せてくれ」
君が一番早く着くだろう、一人にさせる訳にはいかない。と言われてしまって。分かりました、と答えた。
ギルバートさんは急いで部屋を出ていき、スティーブンは部屋の窓を開けてくれた。私がお願いしたのだ。
「ししょー……」
不安そうな目を向けてくる、私の大切な弟子達。そして、使用人達も。大丈夫だから、待っててね。と弟子達の頭を撫でルシルに飛び乗ったのだった。
「お気をつけて」
「うん……!!」
今、二人乗っているけれど出せる一番のスピードで向かってくれるルシル。少しして見えてきたのは、一番近い村。良かった、モンスターは来てない。と思ったけれど……
「……いた」
少し遠くではあるけれど、あれは……だいぶいる。どうしてこんなに? とは思うけれど今は、『展開』
〝ドワールアの種〟
『Aqua』『Glacies』『Lux』
『Creare』
モンスターと村との間に、巨大な壁を作った。あのサーペンテイン首都の城壁に使われていた碧鉱石だ。それを、私の身長の4倍の高さまで伸ばし錬成した。
「レディ」
バートン様が、両側に半分くらいの高さの足場を作ってくれと言ってきた。これくらいなら、ウルフの脚力なら軽く飛び越えられるとの事。あの高さなら、他のモンスターは足場があっても飛び越えられない。もしいたとしても彼らが上手くやれる、との事だった。
『Terra』
これで大丈夫だろう、それよりも私達は……
モンスターの大軍の中に、一際大きな身体のモンスターを見つける。あれは……リザードマンだ。だけど、私の知っているモノとは全然違う姿だ。
〝カヴェアの種〟『Ignisイグニス』『Luxルクス』
大量の粘着糸を大きな網にして大群の頭上に降らせた。大体は、粘着糸に絡まって身動きを取れなくなっていて。だけど、大きなリザードマンはただの糸同然のように払っていて。まぁ、期待はしていなかったけれど。
〝カヴェアの種〟『Terra』
リザードマンの足元に鉄縄を錬成、2本を絡みつけたけれど……先を掴まれて引き千切られてしまった。まさか、これを引き千切られるなんて思ってなかった。凄い力だ。
「まるで効かないな」
「はい……一筋縄ではいかないでしょうね」
けれど、絶対にこの壁には近づけてはいけない。きっと、あの結界はこのリザードマンが破壊したのだろう。この壁はあの翠水晶結界よりは硬いけれど……でも絶対とは言えない。
絶対に、守り抜かなきゃ。
みんなの為に。
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