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■51 新しい弟子達
しおりを挟む夜会から数日後、同じような忙しい日々を送っていた。
同じような、と言ってもあんなに詰め詰めでやっていたレッスンがゆっくりとなってスケジュール的には少しゆとりのある感じだけれど。
「あまり根を詰めてはお体に障りますよ」
「うん、分かってるよ。ありがとう」
あの夜会で言われた事。言われっぱなしは嫌だとちょっとムキになっているのは自分で分かっている。けれど……
「ステファニー様、お客様がご到着いたしました」
「うん、ありがとう。応接室にご案内して」
そう、今日はお客様がいらっしゃることになっているのです。その人物とは……
「お久しぶりです! マルギルさん!」
「久しぶりだなぁ。あぁ、こりゃ敬語にしなきゃならんか。もう男爵様だ」
「今まで通りで構いませんよ。わざわざここまで来てくださってありがとうございます」
「そんなもん気にすんな、元気そうで安心したぞ」
そう、今日は薬草店店主マルギルさんをご招待しました。あの護衛任務から色々立て込んでいたから、だいぶお久しぶりです。
「それでだ、ポーションの材料の件だったな」
「えぇ、王宮とモダルさんのお店にポーションを納品する件について相談して、以前より量が増えましたので出来ればマルギルさんの方で素材を定期的に購入したいと思っていまして」
数が増えて、以前よりも増えて今まで納品していなかった最上級のものも納品する事になってしまった。もうだいぶ感謝されてしまったわけだ。リンデルバート元帥とモダルさんに。
「なぁーるほど。だいぶ量が多いな、大丈夫か」
「あら、心配してくださるのですか?」
「ちげぇよ、途中で契約切られちまったらこっちが困っちまうじゃねぇか」
「はは、相変わらずですね。大丈夫ですよ、ジョシュアもいますし、この屋敷にも習いたいって人達がいるので」
そう、最近錬金術のお手伝いをしてくれる人達が増えたのだ。
最初は、何かお手伝いをさせていただけませんかというサマンサの声。そしてどんどん増えていった。知らないうちにあの短い杖を購入していたらしい使用人達がジョシュアに少しずつ教えてもらっている所を聞いたり目撃したり。
私に聞きに来てくれてもいいんだけどなぁ……とちょっと寂しくしていた時にサマンサが色々と質問に来てくれて本当に嬉しかった。
今ではポーション作成やジョシュに教えているタイミングで色々な人が来てくれるようになってだいぶ嬉しいのだ。
火魔法は、厨房や暖炉に。水魔法、風魔法は洗濯に、土魔法は庭仕事に使っているらしくて。錬金術に置いて、まずは魔法の方を使いこなすのが基本だ。錬成する時間が最初は遅いから、その間魔法を持続させる必要がある。だから、普段の仕事の作業に魔法を使い練習しているようで。
「ほほぅ、弟子が沢山増えちまったわけだ」
「弟子だなんて、私を師匠と思ってくださっている方がいるでしょうか……?」
「いやぁ? 分かんねーぞ、そこのねーちゃん見てみ」
え? サマンサの事? と思い視線を向けると、ちょっと恥ずかしそうなニッコリ顔で此方を見ている。ほんと? 私を師匠だと思ってくれてるの……?
「な? 良かったじゃねぇか」
「あ、はは、嬉しいものですね」
「先が楽しみだ。それじゃ、これで契約はどうだ?」
「そうですね……」
それからスティーブンを交えて交渉。何とかまとまってくれて契約成立となったのだ。
「もっとゆっくりしていっても構いませんよ、お部屋を用意します」
「気ぃ遣わんでもいい、店の事もあるかんな。じゃあこれからよろしく頼むぞ」
「わかりました、よろしくお願いしますね」
「帰ってから出来るだけ早く送ってやるよ」
「助かります」
また遊びにでも来てくださいねと一言言うと笑って帰っていった。これで収入は何とかなるだろう。
「ステファニー様!!」
「……?」
夕方に、少し焦ったサマンサが書斎に入ってきた。そんなに慌ててどうしたのだろうか。
「お、お客様が……」
「……?」
「そんな予定はなかったようだが」
「えぇ、スティーブン殿」
「名は?」
「えぇと……ローレンスと」
ローレンス……えっ?
思い当たる人物が一人。
私はすぐにその場に駆け付けた。
「やぁーっぱり貴方だったのね!!」
「お久しぶりです!!」
以前私の家に何度も来たことのある、ローレンス・ケルトニア伯爵子息だ。
何でこんな所に……そう言おうとした時に何かを取り出した。出したのは、以前私がプレゼントに渡した鉢に植わっている植物〝ティフォラシーラ〟
以前は茶色の幹だけだったものが、白くなり葉が生えピンクの小さい花が沢山開いている。
「どうですか」
「……」
私が、これと一緒に〝コラミア石〟を渡した意味が伝わったようだ。
これは、毎日マナを注ぎ込まないと成長しない。錬成の際使われる浄水を与え、光合成の為に光魔法をかけなければいけない。そして、この〝コラミア石〟で錬成し土に栄養を与える。
大きなサイズの石を渡したから、砕いてから大体1週間に1回錬成し栄養を与えなければいけない。だいぶ手のかかる植物なのである。だけど、錬金術の練習にはもってこいの代物だ。
「そうだね、良い仕上がりだよ。で、その様子じゃこれを見せる為だけにここまで来たわけじゃないよね?」
「はい! どうか弟子にしていただけませんか!」
ほら、やーっぱり。首都で会った時に一体何回言われただろうか。
「言ったよね、貴方にはやる事があるんじゃないって。まさか家出したんじゃ…」
「その通りです!」
「……」
「でも、もうあの家は弟のケインが継ぐことになりました。弟は父上達が思っているほど出来ない子じゃない。俺以上に優秀な奴です。やっと父上達がケインを見てくれるようになって、だからもう大丈夫だと思って家出してきました」
「はぁ、全く……」
「大丈夫ですよ、俺が家出するって言っても何も言わなかったんですから。恐らく行き先も分かっていると思います」
「それで、弟子になりたいと?」
「駄目、ですか?」
全く……そんな顔されちゃったら……と、溜息をしながら収納魔法陣を開き杖を取り出した。
『展開』
『Ventus』
『Aqua』
『Terra』
魔法を組み合わせながら混ぜて彼の出した〝ティフォラシーラ〟も巻き込んでいく。出来上がったのは……
「わぁ……杖!!」
彼の身長よりちょっと短いくらいの、緑の杖が出来上がった。
「これにはローレンス、貴方のマナが沢山注ぎ込まれてる。だから使いやすいと思うよ。これからよろしくね」
「ほっ本当ですか!? ありがとうございます!!」
こんなに喜んでくれるなんて思わなかった。ジョシュよりもお兄さんだから、彼にとっても良い仲間が出来て良かった。
「さ、皆に挨拶しに行こうか」
「はいっ! これからよろしくお願いします! 師匠!!」
おぉ、私を師匠と呼んでくれる人がもう一人増えた。これから、ジョシュとローレンスが弟子となった訳だけれど……これからの屋敷での立ち位置をちゃんと決めなければだなぁ。
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