大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

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■18 謁見

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 それから、毒に侵されていた公子も無事に完全回復。町の人達にも全員に解毒薬がいきわたった。

 そして、アケケ草が生えていた水源の近くと森にあるウェスラーの木には私が錬成させて作った種が植えられた。

 ムルシアという植物の種である。アケケ草とウェスラーの花粉に含まれる毒素を中和してくれるだろう。

 完全に、とは言えないけれど何とか解決できたのだった。

 そう、そこまでは良かった。





「あの、これに乗るんですか……」

「おはようございます、錬金術師様」

「あ、はい、おはようございます……」


 見たこともない凄く高そうな、王族が乗るような乗り物が宿泊しているルナンさんの宿の目の前に停まっていた。

 朝から焦っているルナンさんに引っ張り出され外に出たらこれがあったのだ。

 そしてそれに乗っていたのは、あの日の甘党お兄さ……ダルベルトさん。国王様がお呼びです、だって。


「絶対に、これに乗らなきゃダメですか……?」

「え?」

「だって、私平民ですよ……歩きじゃだめですか……?」

「錬金術師様を歩かせるなどあり得ませんよ!?」

「えっ……」


 という事で、強制的に乗せられてしまった。

 私がこんなすごいのに乗る所を見た周りの人達は吃驚しているだろうね。当の本人である私も口から心臓が出そうだよ。


「王様に私が会えるなんて……こんな格好でいいんですか?」

「お気になさらず、陛下も了承しておりますよ」

「う”っ……」


 そして、遠目でしか見た事がなかった王城に訪れる事になってしまったのだ。

 知っているダルベルトさんが近くにいてくれたことは助かるけれど。






 初めて近くで見る王宮はとても圧巻。迫力が凄い。流石王族が住んでいる城だと言いたくなるくらい凄い。

 凄く綺麗な装飾をされた壁や柱や、手入れが施された美しい庭やらが視界に入ってきて余計緊張させられる。


「さぁ、陛下がお待ちですよ」


 大きな扉の前。ここが謁見室とやらなのね。

 そして、静かに開かれた。

 視線が、一気に集まる。

 赤く細長い絨毯が敷かれ、その両端にこの国を支えているのであろう偉い人達が並ぶ。あ、あの王宮騎士団統括のリンデルバート元帥も並んでる。

 そしてその先に、何段か上に鎮座する王と目が合った。隣にはよく似た若い男の人がいる。ご子息様だろうか。


「ッッッ!?」


「……?」


 驚いたようで、いきなり立ち上がった国王陛下。隣に並ぶ人たちも驚いていて。



「如何いたしました……?」

「あ、あぁいや、何でもない」



 何事もなかったように座った国王陛下。

 そして、向こうへ進んでくださいと言わんばかりに促すダルベルトさん。

 真っ直ぐ歩けという事だよね。じゃあ、どこまで歩いていいのだろうか。

 すると、


「錬金術師殿」


 謁見室に響く、王の声。

 その人物に、少し笑った顔で手招きをされてしまった。

 周りの人達は困った顔をしている。

 視線が下になってしまったが、静かに歩きだす。

 これくらいで、いいのかな……? 誰かストップって言ってください。


「肩の力を抜いてくれて構わないぞ」

「も、申し訳ございません……」

「よい」


 王様が、心の広い人で良かった。


「は、初めまして、錬金術師のステファニーと申します。こちらは、聖獣のルシルです」


「初めまして、か……」


「え?」


 ボソリと呟かれた国王陛下。聞き取れはしなかったが、何だか寂しそうな顔をしている。


「我はアース王国第12代目国王ルブリケータ・ラブリタ・シェルラート・アグリジェンドラだ」


 その瞬間、周りがざわつく。王様が自ら名乗ったからだろうか。


「ほぅ、話には聞いていたがそれはまさしくグリフォンであるな。驚いた」


 やっぱり、皆さんそう言う反応をするのね。そんなに珍しいのか。まぁ、この国付近にはいなかったし。


「先日の討伐作戦に、モルティアート侯爵領の疫病の件、実に大儀であった。それと、王宮騎士団にポーションの提供もしてくれているとも聞いた。そうであろう、リンデルバート元帥」

「はい」


 えっ……名前伏せてって言ったじゃないですか!! 秘密厳守って言ってくれましたよね!?

 ちらっと見ると目を合わせてくれない元帥さん。え、王に訪ねられてしまったら答える以外の選択肢がなかったって事……? い、一番偉い人ではあるけれどさ、お約束しましたよね!?


「礼を言おう」

「あ、ありがたき幸せにございます」


 こ、これで合ってる……?


「して、褒美を与えたいと思っているのだが……何がいい。申してみよ。屋敷でもいい、領地でもいい、爵位でもいいぞ」

「……そ、れは、身に余るものでございます。私には管理できません……」

「ほぅ、ならそれに加えて優秀な人材を付けてやろうではないか」


 そ、それは……ただの錬金術師如きにそんなもの……ん??


「……王様は、私がこの国に定住することをお望みなのですか?」



「「「「っ!?」」」」

「……ほぅ」



 この大陸には〝五公大賢者〟の称号を持つものがいるけれど、この国には一人もいないって聞いた。けど、この大陸で力を持つ二国にはそれぞれいるとも。

 そんな国々がもしこの国に攻め込んできたのなら、確実にこの国は負けてしまうだろう。

 それか、強いモンスターが来ても終わりか。

 だから、かな?

 けれど、私は賢者ですらないし……


「私は、ただの錬金術師です」

「何を言っている、ウガルルムを一人で倒すようなものは、賢者でない訳ないだろう」

「……え?」


 そう、なの……?

 いやいやいや、まさかそんな訳。


「その頭飾り、丁度隠れている額の部分に何がある?」

「あ、これは……」


 丁度額の真ん中に、白い花の刺青のようなものが入っている。知らず知らずに浮かび上がっていたものだ。当たり前のことだけれど、何かを介さないと見えない為いつ出来たのかは分からない。

 お師匠様に、あまり見せるなと言われて簡単に作った頭飾りをつけていたけれど……見せていいものか。


「白い紋章ではないのか?」

「あ……」

「合っているようだな。それがあるのなら賢者で間違いない」


 へ、へぇ……知らなかった。


「それで、どうだ? この国にとどまってくれると言うのなら、特別待遇をしよう。用意できるものなら何でも用意しよう」


 特別待遇なんて、恐れ多いな。


「……特別待遇なんて、いらないですよ」

「……」

「私は、今のこの暮らしが気に入っています」

「ほぅ」

「……あっ、そういえばウガルルムの死骸って回収したんですよね。でしたら鱗だけ、2枚、いや、せめて1枚だけ分けていただけませんか?」

「ウガルルムの鱗、だけでいいのか……欲のないものだな」


 その時、王様はちらっと並んでいる大臣? 達の一人を見た。本当に一瞬だった。何故? だとは思ったけれど、王様はすぐに視線を私に戻した。


「お安い御用だが、何に使うのだ?」

「布団を作ろうかと」


「「「……は?」」」


「安眠間違いなしのふかふかお布団です!」


 シィーン。と静まり返った謁見室。






「アッハッハッハッハッハッハッハッ!!」


 お、おぉ、爆笑されてしまった。

 本当に安眠できるのよ? 疲れなんて吹っ飛ばせるくらいの素敵なお布団なんだから。


「では、すぐに用意しよう。それと、依頼をしても良いだろうか」

「依頼、ですか」

「我にも作ってくれないか? 最近眠りが浅くてな、中々疲れが取れないのだ」


 わぁ! 王様もですか!


「喜んでお作りいたします!」

「それは良かった。では、報酬として家を作ってやろう」

「えっ」

「場所や間取りも言ってくれ、あぁ、錬成に必要な植物を育てられる温室も用意しようではないか」

「えっ!?」

「先程引き受けてくれたのだから、すぐに用意してやろう」

「い、家だなんて……」

「王の使用する布団ぞ? これくらいは当たり前ではないか。依頼の報酬はきっちり払う、基本だろう?」


 この王様、策士か……


「あり、がとうございます……」

「よろしく頼むぞ」

「はい……」

「それと、これを受け取ってはくれぬか」

「え??」


 隣に立っていた男の人から、小さな箱を貰った。開いてみたら、掌サイズの……ブローチ? 十字になってる。

 これは、プラチナホワイトに、ミスリルかな。それに凄い繊細な彫刻がされている。真ん中は、パール!? こんなの貰っていいの!?


「受け取ってくれ。ちょっとした気持ちだ」

「は、はぁ……ありがとうございます?」


 周りのどよめきは何なんだろう……?


「では、またな会うとしよう。――デイム・ステファニー」


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