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第二章

◇22 もしかして一つに決められなかったとか?

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 ヴィルからの3つのプレゼントはどれもすごく綺麗で、もらって嬉しかった。ん、だけど……向こうにあるテーブルに積み上げられた、プレゼントボックス。あれは何だ。


「奥様奥様! こちらもどうぞ!」

「これ、誰から?」

「私達使用人と、あと領民達と、あとルファニス様からもいただきました」

「……マジか」


 これ、全部か。てか、俺知らなかったんだが。まぁ隠してたんだろうけどさ。

 さ、全部開けましょう。そう言い出したピモ。ソファーにヴィルと二人で座り、一番前にあったひときわ豪華なプレゼントボックスを手に取った。あ、ルファニスさんからだ。


「……うわぁ、すげぇ」

「はぁ、ルファのやつ……」


 入っていたのは……箱と同じようなピンク色をした、ブローチか? 5枚の花びらが付いたピンクの花。桜っぽいかな。でも……これ宝石だよな。宝石で花が作られてるんだが……このピンクの宝石は、きっと高額のものなんだろうなぁ……一体宝石いくつ付いてるんだ? ピンクと、白と……


「……これ、俺貰っちゃっていいんですか?」

「あいつがリュークにプレゼントしたんだ、好きにすればいい。宝石商に持っていったらいい値で売れるぞ」

「何てこと言うんですかっ!!」


 はぁ、とりあえずこれは白の間に置いておこう。こんな高額の恐ろしいものをプレゼントにして送ってくるなんて、流石大富豪の家の夫人だ。

 よし、次だ。

 プレゼントをヴィルと一緒に開けていくと……置き物だったり、ベビーグッズだったりと色々あって。


「……白ヒョウ?」

「だろうな」


 白ヒョウのぬいぐるみ。しかも俺が抱えるくらいのデカいやつ。これ、使用人だよな。一体誰だ。しかもすっごく上手いんだが。これ手作りだろ。すげぇな。

 さぁ次だ、と思い手を伸ばしたら……見つけてしまった。プレゼントボックスに付けられていたカードに書かれていたものを。


「……これ、ボレス達の仕業か。ピモ」

「はい」


 名前がずらりと書かれていた。見覚えのある名前ばかりだ。そして、その中にはボレス、テワール、タリシスの名前も。そう、これは全員元離宮にいた使用人達の名前だ。あ、こっちにも。

 元離宮使用人からは、2つのプレゼントボックスが。これ、一体どうしたんだ。


「任せられたんですって」

「え?」

「冬ごもりになる前に三人が何回か首都に行っていたのはご存じでしょう? その時だと思います。3人が代表で用意したそうですよ」

「……そ、っか……」


 全員、だよな。ここに書かれてる名前。まじか。嫁いだんだからそういうの気にしなくていいのに。まぁ、結婚先聞いてだいぶ心配してたってタリシス達言ってたしな。

 けど、まさか用意されてるなんて思ってもいなかったから、結構驚いてるけど、嬉しくないわけじゃない。ありがとう、みんな。

 そして、箱を開けてみたら……おいおい、ぬいぐるみかよ。これ、くまか? 結構大きいな。となると、もしかして俺が妊娠した事言ったのか? まぁ代表で買ってきたみたいだけどさ。それと、もう一つは……


「これは、クラリネットか」

「……あの野郎」


 まさかの、クラリネット用の楽譜だった。一体これ何枚あるんだ? まぁ簡単そうなものばかりだけど。


「確か、クラリネットを持っていたな」

「……何で知ってるんです」

「こんなにずっといるのだから知らないほうがおかしいだろう」


 あ、はい、そうですか……


「……弾きませんからね」

「ダメか?」

「ダメです」

「残念だ。なら、気が向いた時に聞かせてもらおう。出産後、楽しみにしてる」


 はぁ、ったく。やってくれたな。まぁもう知ってたみたいだけどさ。

 元離宮使用人達はみんな退職したんだったっけ。実家に帰ったり、再就職したり。みんな、元気かな。プレゼントありがとう、と直接は言えないけれど、とりあえずタリシス達に言っておこう。それでいっか。


 ヴィルと楽しく話しながらのプレゼント開けをしていたらもう時間が早く進んでしまっていて。昼はバラの間で摂り、夕食は食堂で。だけど……またまた模様替えかよ。しかも料理は豪華すぎるんじゃ? と思いたいくらいだった。まぁ、みんなが俺のために頑張ってくれたんだからありがたく受け取っておこう。

 けど、困った事が一つ、いや、二つ。


「さぁ、プレゼントだ」

「一体これいくつ目ですか」


 またまたプレゼントが登場した。夕食の時にも貰ったのに、さぁて寝るぞって時にまた渡された。

 中身は……とても高価そうなボックスだった。手のひらサイズで、青に金色の装飾がされている。これ、もしかして……


「リューク、こっちを向け」


 そう言って、耳に付いていたスノーホワイトのピアスに手を触れた。寝る前だから外さないといけないんだが、いつもはヴィルがしてくれる。もうお決まりだ。そして、外したスノーホワイトを、さっきのボックスのふたを開けて中に入れたのだ。なるほど、アクセサリー入れか。


「ありがとうございます、ヴィル」

「あぁ、気に入ってくれたのならそれでいい」


 なんか、今日は色々と貰ってばっかりだった。いっぱい誕生日おめでとうって言ってくれて、心を込めて用意してくれたプレゼントも貰えて、美味しい料理もふるまってくれて。これ以上のものはないな。


「リューク、まだだぞ」

「え?」


 そう言って、ベッドの端にヴィルと並んで座る俺に軽く抱きしめてきたヴィル。いや、まさか。


「最後のプレゼントだ」

「……マジですか」

「あぁ」


 そう言って、俺にキスをしてきた。あぁ、なるほど。プレゼントは私♡ ってやつか。この前のヴィルの誕生日の時にあったあれな。でも俺それいいんだが。


「今日貰った中で一番のプレゼントにしてやる」


 そう言って、押し倒されてしまったのだ。

 もしかしてさ、他のみんなからのプレゼントと張り合ってる? いや、それはないか。

 はぁ、しょうがないか。そう思いつつ、ヴィルの首に手を回して思いっきり抱きしめたのだ。

 一番のプレゼント、なんてさぁ……ヴィルと一緒にいる時間自体が嬉しいプレゼントだったんだけどな。ほら、普段は仕事で忙しいんだからって遠慮がちなところがあったけれど、今日は誕生日だからヴィルを遠慮なく独り占め出来たんだ。

 それが一番の誕生日プレゼントだったかな。

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