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第二章

◇23 新年あけまして……?

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◇2ヶ所だけ変更点
 都市を街に、結婚式を夏に変更しました。


◇◆◇◆

 メーテォス辺境伯領の、一年で一番忙しい大仕事。それは……冬越し後の雪かきである。


「旦那様、奥様、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」

「あぁ」

「あ、うん、今年もよろしく……」


 月日は経ち、外のゴーゴー音が聞こえなくなった。冬越しが終わった合図だ。

 けれど、驚くほどのとんだ時差である。今はもう5月のはずなんだが。新年、ではなく冬越しあけましておめでとうございます、が正解だろ、ここは。まぁ、1月の新年を迎えても領地のみんなは一緒に住んでる人達にしか言えないからな。一人で住んでる人は誰にも言えないし。

 そう思うと、冬越ししてからようやく一年が始まる、って言われたら納得するな。


 新年のあいさつをした後は、屋敷の使用人達はとある場所に集まっていた。これから大仕事である雪かきが始まるのだ。

 いつもの仕事はそこそこにして、手分けして雪かきをするらしい。


「ヴィルはやらないんですか?」

「毎年、当主なんだからやるなと言われているからな。それよりも、ピモがいないのだからリュークの世話係が必要だろう。なら俺がやらないで誰がやるんだ」


 そう言って、ソファーに座る俺に抱き着いてくる引っ付き虫。これのどこが世話係なんだかよく分からん。


「寒くはないか」

「あったかいですよ」


 ヴィルで。

 というかそれ、毎年言うけど「俺がやったほうが断然早い」とか言って結局雪かきをやってたってピモに聞いたのだが。どうせ雪かきするんだろうけど立場上言わなきゃいけないって。あと、ヴィルめっちゃ力あるからだいぶ助かるって。

 でも今年はこんな様子でやる気はないみたいだから、今みんな大変だろうなぁ。あまり力がないアメロだって手伝ってるのに。


「それより、話し合う事が山ほどあるだろう」

「それは教会を掘り起こしてからでしょ」


 そう、結婚式の事だ。夏にやる予定なんだけど、まずは教会を掘り起こさなければ始まらないわけで。冬越しの最中から準備は順調に進んでいるから、あとは外でやる事をしないといけない。

 とりあえず俺は、ミヤばぁさんにお会いして衣装のサイズチェックだ。またお腹が大きくなってサイズが変わってるだろうからな。だから早くお会いしないといけないんだけど……この雪だからなぁ。


「心配するな。これから晴れが続いてすぐに雪が溶ける。ミヤばぁの家の玄関も、工房もすぐ掘り起こされる」

「おばあちゃんですから、雪かき大変でしょ」

「あそこには大男の息子と孫がいるからそれは心配ない」


 お、大男……ヴィルも結構体デカいけど、ヴィルの言う大男とはどれくらいのサイズなんだろうか。気になる……

 まぁ、とにかく早くミヤばぁさんにお会いしないといけないな。


「……よし、じゃあ俺これから応援に行ってきます」

「必要ない」


 いや、俺まだ誰を応援しに行くとは一言も言ってないんだが。


「みんな雪かきしてるんですよね? 俺まだ散歩してないですから、散歩がてら応援しに行くんですよ。だから、ヴィルは力あるから雪かき参戦してください。ほら、俺に世話係がいなくても近くにいれば何かあっても大丈夫でしょ?」

「……」

「早く雪かき終わらせないと、結婚式がどんどん遠ざかってしまいますよ。いいんですか? 俺のパンツドレス姿、早く見たいでしょ」

「見たい」


 おい、そこ即答かよ。真顔で即答だなんて逆に怖いな。どれだけ見たいんだよ。

 逆に俺は恐ろしくて仕方ない。タキシード姿のヴィルを見たら失神するんじゃないのか?


「よし、じゃあ行きますよ」


 と、ヴィルの手を握って引っ張っていった。よしみんな、頼れる助っ人を用意したぞ~!

 ……まぁ、実を言うとヴィルが雪かきをしない理由が俺だから、なんか申し訳なかった、というのもあるけどな。なんか、ごめん。


 そして、俺達を見た使用人達は……心の中で泣いていた。奥様、ありがとうございます!! と。


「よ~しみんな頑張れ~!」

「「「はいっ!」」」


 屋敷内の人達全員が一致団結した瞬間だった。

 俺もやりたいなぁ、と思ってるけれど仕方ない。なんか仲間外れ感があるけれど……応援を頑張ろう。

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