厄介払いで結婚させられた異世界転生王子、辺境伯に溺愛される

楠ノ木雫

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第二章

◇17 ここは素敵な家だな

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 それから月日が経った。クリスマスが終わり一応年明けはしたんだが……


「年明けより冬明けの方が重要だろ」


 さも月が変わるかのような感覚で年を越してしまった。まぁ料理長にお願いしてお雑煮は食べたが。あぁ、あとおしるこ?

 相変わらず外は吹雪。早く冬明けにならないかなぁ。

 とりあえず、俺は身体を暖かくして無理せずヨガと散歩、栄養満点な食事をしてよく睡眠をとる日々だ。いやぁ、こうお腹が重いと肩が凝って仕方ない。妊婦さんの苦労がよく分かる。


「寒くないか? 疲れてないか? 体調はどうだ?」

「屋敷の中暖かいですし、全然大丈夫ですよ」


 今日も、俺の散歩に乱入してきた人が一人。ヴィルだ。仕事を放っぽり出して何をしてるんだと言いたいところではあるが、だいぶ心配した顔で俺の手を握ってくるから仕方ない。


「何かあったらちゃんと言うんだぞ」

「はいはい」


 つい最近、ピモから聞いたんだが、ヴィルは仕事の合間に育児・出産系の本を熟読しているらしい。


「旦那様も初めての事ばかりで戸惑っている部分もおありでしょうからね。旦那様なりに努力なさっていらっしゃるのですよ」


 なんて事を言っていた。ヴィルが戸惑うなんて事あるのか? このヴィルが。まぁ初めての事ではあるけれど。妹であるルファニスさんとは3歳差だから、ルファニスさんが生まれた時は覚えてないんだろうし……

 でもまぁ、嬉しいっちゃ嬉しい。俺達のために頑張ってくれてるんだもんな。ちゃんとしたパパになるために。

 頼もしいだろ? カッコいいパパだろ~。なんて思いつつ、お腹を撫でてみた。うん、動いた。早く出てきてパパと会おうな。


「リュークはここに入った事はあるか?」

「いえ、こっちの貴重品室には入ったことありません」

「見てみるか?」

「いいんですか?」

「この屋敷でリュークが入ってはいけないところなど一つもないからな。キッチンと鍛錬場は別として」


 あ、やっぱりそう言うのか。言わなかったらこっそりキッチンに行こうかななんて思ってたり思ってなかったり。すみませんね、食いしん坊で。

 この屋敷には貴重品室が二つある。一つは、あの肖像画や蓄音機ちくおんきなどが沢山あったあの部屋。そしてもう一つは、この部屋だ。

 ここにも絵とかあるのかな。なんて思いつつ期待を膨らませる。そして、ヴィルが貴重品室の部屋のドアを開けると……


「えっ……!」


 つい、そう言ってしまった。想像とだいぶかけ離れた景色が広がっていたからだ。どうしてこんなものがこんな所にあるんだ、と。


「メーテォスの夫人達は色々と良い趣味をしていたからな。貴重品室にはそういったものが残されているんだ」


 ここメーテォス家の夫人となったアメロ達は他とは違った趣味を持っていた。

 この国では、アメロは仕事をしないのが当たり前。だからお茶会やパーティーを開いて周りと交流を深めたり、買い物を楽しんだりというのが普通だ。

 代々メーテォス夫人達はタウンハウスよりも領地のお屋敷を好んだらしいから、アウトドアはあまり出来ない。……というか興味がなかったらしい。

 ある人は読書を、ある人はガーデニングを、ある人は絵を、と様々だ。俺は何だろうと考えると……読書と編み物? まぁ、離宮にいた時色々やったしな。

 そして、とある夫人はこれを趣味にしていたらしい。広い部屋に残されていたものは……


「こ、これ、ビリヤードですか……」

「3代前のメーテォス夫人はゲーム好きだったそうだ」


 部屋に残されていたのは、いわゆるビリヤード。その他にも、これはルーレットか。あと、トランプもある。ここはカジノか? そうとしか思えない。まぁ、部屋の壁紙は俺の私室とかと一緒だから変な感じがするけどさ。

 そして、奥に設置されていたショーケースを見つけた。その中に入れてあったもの、それは……


「す、ごい……これ、チェスですか」


 正方形にマスが区切られた白と黒のチェスボードと、その上に乗せられた綺麗な駒。


「あぁ。ガラス製だそうだ。わざわざ作らせたらしいぞ」

「……メーテォス辺境伯様が?」

「腕のいい職人をしらみつぶしに探して作らせたそうだ」


 あぁ、ここにもいた。愛妻家の執着心丸出し辺境伯。

 でも、思った。こういう、カジノみたいな所には男性しか行かない。アメロはそんな遊びはさせてもらえないんだ。未婚の時には花嫁修業、結婚したら周りの交流。だいたいそれくらいだ。まぁ、アメロがゲームをするとしたら……お茶の飲み比べ? 飲み当てるやつ。

 だけど、この3代前のメーテォス夫人は……これをやりたかったんだろうな。

 ここにあった肖像画も、アメロのご夫人が描いたものが数枚あったそうだ。絵を描くことは、貴族のアメロはやらない事。プロの男性に描いてもらうのが普通だ。

 ここは野蛮人の家だと言われているけれど……そうじゃない。自由な家だ。やらせてもらえないものを、ここでは存分にやらせてもらえる。それだけ、旦那さんが愛してくれてたんだ。


「……これ、途中ですね」

「そうだな。だが、もう打つ手はないな」

「チェックメイト、ですか」

「あぁ」


 へぇ……でも、そのままにしてあるのはどうしてだろう。まぁ、3代前の人だから分からないけれど……

 この部屋に並べられた物達は、俺はよく分からないものではあるけれど……とても綺麗だ。

 ショーケースの他にも、綺麗なチェスセットがいくつかある。もしかしたら、当時の夫人は旦那さんの他にも使用人達とも遊んでいたのかな。


「……ヴィル、チェス教えてください」

「いいぞ。バラの間でやろうか」

「はい!」


 本当に、ここはとても自由な家だ。

 趣味や好きなものは人それぞれだ。アメロだから、夫人だから、なんて事で我慢させられる事もある人達がこの家で羽を伸ばして自由に生活出来ていたって事かな。

 俺としても、離宮では何不自由ない生活をしていたけれど、色々と制限はされていた。でも、ここに来てから本当に自由で、知らない事をさせてもらえたり、楽しい生活をさせてもらえてる。

 本当に、ここは素敵な家だな。

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