厄介払いで結婚させられた異世界転生王子、辺境伯に溺愛される

楠ノ木雫

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第二章

◇11 サンタさんを信じてたのは何歳まで?

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 ヴィルの誕生日が過ぎ数日後、首都ではクリスマスとお祭り騒ぎとなってるだろう。対してこちらは外は猛吹雪。ホワイトクリスマス? そんな可愛いもんじゃないだろ。

 まぁ、こちらの世界でもクリスマスツリーというものがあって、家ではそれを飾るわけだ。

 ちゃんとプレゼントも用意してるみたいだけど……メーテォスの子供達はプレゼントはサンタさんが持ってきてくれただなんて事を全く信じてはいない。いや、そもそもサンタさんという存在自体知らない。

 例えそんな存在がいるんだと子供の頃教えられたとしても、こんな猛吹雪でプレゼント配りなんで出来ないだろとすぐ分かってしまう。雪だるまより何よりソリに乗ってこっちまで来れるわけがない。

 だったらもう最初から親からのプレゼントだと言ってしまった方がいい、という事だ。何とも夢がない話だが仕方ない。猛吹雪の中外に出られないんだから、これも楽しみであるだろう。ならそれでいいじゃないか。と、いう事だ。


「どうですか、大きいでしょ」

「これ、もしかして自分達で切ってきたのか」

「そうに決まってるじゃないですか!」


 そんな、楽しそうなピモの姿に呆れてしまった。なるほど、ここはそういうところなのかと。

 すごく立派なクリスマスツリー。大広間に飾られたそれは、これから飾り付けがされる事となっている。

 普通の屋敷とかではクリスマスツリーは玄関に飾られるのだが、こんな天気だ、外に出る奴なんて誰もいない。その為玄関なんて使わないからそこに飾っても意味がない。


「飾り付け、如何いかがしましょうか」

「俺決めていいの?」

「もちろんです!」


 毎年使ってる飾り付けの箱が並べられ、そこからたくさんのオーナメントが。へぇ、前世と同じようなものばかりだ。ボール型やドロップ型、それにリボンや、電飾なんてものもある。あ、この星は一番上に飾るやつか。

 さぁどうぞ、と椅子を用意され座りつつツリーとオーナメントを眺めた。とりあえず星は一番上にするとして……まずは電飾か。


「これ電気だろ。節約しなくてもいいのか?」

「これ、電気じゃないんですよ。そのまま光るものなんです」

「へぇ、すごいな」

「他のオーナメントも同じように光るんです。夜になるともっとすごいんですよ」


 まさかのエコなオーナメントだった。すごいな、さすがメーテォスだ。


「ぐるぐる巻きにしますか?」

「大変じゃない?」

「大丈夫ですよ!」


 このツリー大きいから、大きな脚立きゃたつに乗らないといけない。こんなに高かったら落ちるかもしれないのに。と、思ったら下にクッションが敷かれていた。なるほど、事故防止か。

 何人かが脚立に乗って上がり、慎重に電飾を巻き始めた。いや、これ電飾って言っていいのか? 電気じゃないんだろ? 光る紐か?


「へぇ、星が沢山あるな。まぁ、外こんなだから星見れないしな」

「いっぱい飾ります?」

「うん。やっぱり黄色?」

「他の色でも綺麗ですよ。銀色と青なんていかがですか?」


 おいピモ、それ俺の髪と瞳の色だろそれ。キラキラしてて装飾も綺麗だけどさ。まぁご要望にはお応えするか。赤も入れるか。流石に黒はないけどさ。

 俺のセンスが問われたが、いい感じののクリスマスツリーが完成した。最後は一番上に大きな黄色の星をつけて完成だ。

 おぉ~と拍手が湧いたけど、うん、達成感があっていいな。みんな、お疲れ様。


「一回真っ暗にしてみますか?」

「うん、見てみたい」


 と、明かりを消してもらうと……おぉ! めっちゃ光ってる! こんなに光るものなのか! これ電気使ってないんだよな? それなのにここまでなんて。赤や黄色、青や銀色にと綺麗な色がツリーの上で光っている。これは感動ものだな。


「ふっ」

「ひぁっ!?」


 真っ暗闇で、いきなり耳に息を吹きかけられた。びっくりしたのと同時に、変な声が出てしまったことへの恥ずかしさで顔が熱くなってしまい。でもこれが誰の仕業かもバレバレだった。

 明かりをつけてもらうと……ほーらいた! やっぱりヴィルだ!


「……」

「そんな顔するな。ただの悪戯いたずらだ」


 と、軽いキスをしてきた。言い返したいけど言い返せないのがムカつくけど……


「綺麗なツリーじゃないか。リュークはセンスがいいな」

「……」


 と、頭を撫でられた。ただ褒められただけなのに許してしまいそうな自分ってどうなんだよ。はぁ……


「こんな大きなツリー、初めて見ました。結構迫力ありますね」

「まぁ、すぐそこにあった大木だがな。だか喜んでもらえたのならもう一つ用意するか」

「こんな猛吹雪の中? だったらバラの間を飾りつけた方が楽しいでしょ」

「それもいいな。なら一緒にやろうか」

「仕事は?」

「ない。もう終わらせた」


 果たしてそれは本当だろうか。執事に聞いてみるか?

 でもまぁ、楽しそうだしいっか。この人優秀だし。


「まだまだいっぱいありますよ! バラの間にお運びしましょうか!」

「うん、よろしく」


 壁に吊るしたりしたらいいかもしれない。花壇の手前とかに光る紐(?)付けるか。お腹大きいからかがめないけど、そこはヴィルにお願いしよう。

 うん、楽しそうだ。


「早く行きましょう!」

「あぁ。時間はたっぷりあるんだ、慌てるな」

「はい!」


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