29 / 41
兄と弟#3
しおりを挟む
「……あんた、何時から居たの」
「つい先ほどだよ~。君が急にアンニュイな感じになっていたから、気になって座っちゃった。ごめんね?」
むふふ、と若干気持ち悪く笑った生徒会会計は、ずいっと距離を詰めてきた。
「で、君はお兄さんの恋人になりたいんでしょ?その胸中、もっとオレに聞かせてよ!!」
「……は?いやなんであんたに言わないといけないわけ」
「こういうのって、人に話した方が軽くなるし、整理できたりするでしょ~?ね、ね!話してごらんよ!」
何故か鼻息の荒い生徒会会計に若干引きつつも、オレは前、この生徒会会計に恋愛相談をすると成功するという話を聞いたのを思い出した。
「……いや、流石にここではちょっと恥ずかしいんですけど」
「あ、そうか、確かにそうだよね~。ここ教室だもんね?じゃあ、今日の放課後、寮のオレの部屋に来て!たっぷり受け止めてあげるからさ!」
「はあ……」
そして会計は、ルンルンと今にもスキップしそうな感じで教室から出て行った。
……変な奴。
そのあとは特に何も起こることなく、放課後となった。
本来ならここで部活の放課後練習へと向かうが、柊司の調子が悪い時のオレは全然やる気がないとわかっている顧問から、今日は出なくていいと言ってもらえたのでそのまま寮へと戻ってきた。
会計の部屋に行く約束をしているが、まず一旦柊司の様子を見に行くべく、寮の自分の部屋の扉の前に来た時、部屋の中から声が聞こえた。
「……シュウ、平気か」
「うん……だいじょうぶ……頭痛いだけだから」
「そうか……無理はするなよ」
「うん……ありがとう」
部屋から聞こえてきた柊司の声は、頭の痛みで辛そうだけど、それでも嬉しそうだった。
それを聞いたオレは、部屋に押し入ろうとしたのをやめた。そしてそのままその場を離れた。
オレは会計と話をする気分にもなれず、結局寮を出て、高等科の敷地内を充てもなく歩いた。
朝から降っていた雨はいつの間にか上がっていたけど、オレの気持ちは天気とは裏腹に、沈む一方だった。
……わかってたけど、わかってたけどさ。
北大路治良が、柊司にとって特別な存在になってることは。
でも、悔しい……
今まで、一番柊司の側に居たのは、オレだ。
一番好きなのも、オレだって自負がある。
でも、柊司にとっては、オレはただの弟。
わかってても、つらい……
この、双子っていう、近いのに遠い関係がつらい。
あてもなく歩いた先の人気のない建物の裏手に座り込んだ。
――そんな傷心状態のオレの心をさらに波立たせるものが現れた。
「……ん?お前は……」
現れたのは、生徒会会長――北條亮介だった。
「お前は……、二宮祥吾だな。二宮柊司の弟の」
「……そうですけど……」
会長は何故かオレのことを知っていた。直接会ったことはないはずなのに。
「どうしてこんなところに居る?こっちはゴミ捨て場しかないが……」
「別に……散歩してただけですけど」
どうしてこんなところに居るって、こっちの台詞なんですけど。と思いつつ会長を見たら、彼が『生徒会室』というラベルの貼られたゴミ箱を手に持っているのに気付いた。
……この人、生徒会長のくせにゴミ捨てさせられてんのかよ。
ゴミ箱を凝視したら、会長はハッとなってゴミ箱を体の後ろに隠した。
いや、今更隠しても意味ないだろ……
「……会長でも、ゴミ捨てに来るんですね?てっきり他の役員とかにやらせてんのかと……」
「い、今、他の役員は全員生徒会室に居ないんだ。だから仕方なく俺が捨てにきただけなんだ!」
「別に言い訳しなくてもいいじゃないですか」
金持ち学校の生徒会長はそういう雑用とか絶対にしないと思ってたから、ちょっと好感度は上がったぞ。
「ま、まあいい。それより……お前に、伝えてほしいことがあるんだが」
「は?誰に?何を?」
「二宮柊司に、この前の新歓会でのデート権行使の件について、謝罪したいんだ」
「……!」
その言葉でオレは思い出した。
この男が、この前開催された新入生歓迎会で、柊司のことを俵担ぎして運んだ挙句にデート権まで行使しようとしたことを。
後にデートは会長の方から取り下げられたけど、そのことで柊司が一時期、会長の親衛隊からいやがらせを受けた。
柊司がいやがらせを受けていたという事実は到底許せるものじゃなくて、それを知ったときにオレは会長へ直談判しようとしたけど、これ以上事を荒立てたくないと言った柊司の意思を尊重して、オレもそれ以上の追及をやめた。
結局そのあとは、会長からも親衛隊からも謝罪も何もないまま時が過ぎていたけど……
「俺の軽はずみな行動が、お前の兄に迷惑をかけた。それを謝罪したかった。すまなかった」
「……それ、オレに言われても困るんですけど?」
謝罪したいという気持ちが会長にあったことについては驚いたが、それを本人じゃなくオレに伝えるっていうのはおかしいんじゃないのか。
そう言うと会長はばつが悪そうに眼を逸らした。
「俺もできることなら、二宮柊司に直接会って謝罪したいんだが……俺が直接二宮柊司に会ったら、また角が立つんじゃないかと思ったからな……」
「……まあ、それは確かにそうですね」
行動を常にいろいろな人間から見られている生徒会長は、自由に動ける立場にない。
いくら謝罪するためとはいえ、また直接柊司に会って、それを親衛隊にでも見られたら、以前の二の舞になる。
「だがここは人気がないからな……偶然とはいえ、お前に出会えて、謝罪の気持ちを伝えられてよかった。ではな。そろそろ戻らないといけないからこれで……」
「あ!待ってください!一つ聞きたいんですけど!」
話を終えて去ろうとした会長を呼び止めた。
「つい先ほどだよ~。君が急にアンニュイな感じになっていたから、気になって座っちゃった。ごめんね?」
むふふ、と若干気持ち悪く笑った生徒会会計は、ずいっと距離を詰めてきた。
「で、君はお兄さんの恋人になりたいんでしょ?その胸中、もっとオレに聞かせてよ!!」
「……は?いやなんであんたに言わないといけないわけ」
「こういうのって、人に話した方が軽くなるし、整理できたりするでしょ~?ね、ね!話してごらんよ!」
何故か鼻息の荒い生徒会会計に若干引きつつも、オレは前、この生徒会会計に恋愛相談をすると成功するという話を聞いたのを思い出した。
「……いや、流石にここではちょっと恥ずかしいんですけど」
「あ、そうか、確かにそうだよね~。ここ教室だもんね?じゃあ、今日の放課後、寮のオレの部屋に来て!たっぷり受け止めてあげるからさ!」
「はあ……」
そして会計は、ルンルンと今にもスキップしそうな感じで教室から出て行った。
……変な奴。
そのあとは特に何も起こることなく、放課後となった。
本来ならここで部活の放課後練習へと向かうが、柊司の調子が悪い時のオレは全然やる気がないとわかっている顧問から、今日は出なくていいと言ってもらえたのでそのまま寮へと戻ってきた。
会計の部屋に行く約束をしているが、まず一旦柊司の様子を見に行くべく、寮の自分の部屋の扉の前に来た時、部屋の中から声が聞こえた。
「……シュウ、平気か」
「うん……だいじょうぶ……頭痛いだけだから」
「そうか……無理はするなよ」
「うん……ありがとう」
部屋から聞こえてきた柊司の声は、頭の痛みで辛そうだけど、それでも嬉しそうだった。
それを聞いたオレは、部屋に押し入ろうとしたのをやめた。そしてそのままその場を離れた。
オレは会計と話をする気分にもなれず、結局寮を出て、高等科の敷地内を充てもなく歩いた。
朝から降っていた雨はいつの間にか上がっていたけど、オレの気持ちは天気とは裏腹に、沈む一方だった。
……わかってたけど、わかってたけどさ。
北大路治良が、柊司にとって特別な存在になってることは。
でも、悔しい……
今まで、一番柊司の側に居たのは、オレだ。
一番好きなのも、オレだって自負がある。
でも、柊司にとっては、オレはただの弟。
わかってても、つらい……
この、双子っていう、近いのに遠い関係がつらい。
あてもなく歩いた先の人気のない建物の裏手に座り込んだ。
――そんな傷心状態のオレの心をさらに波立たせるものが現れた。
「……ん?お前は……」
現れたのは、生徒会会長――北條亮介だった。
「お前は……、二宮祥吾だな。二宮柊司の弟の」
「……そうですけど……」
会長は何故かオレのことを知っていた。直接会ったことはないはずなのに。
「どうしてこんなところに居る?こっちはゴミ捨て場しかないが……」
「別に……散歩してただけですけど」
どうしてこんなところに居るって、こっちの台詞なんですけど。と思いつつ会長を見たら、彼が『生徒会室』というラベルの貼られたゴミ箱を手に持っているのに気付いた。
……この人、生徒会長のくせにゴミ捨てさせられてんのかよ。
ゴミ箱を凝視したら、会長はハッとなってゴミ箱を体の後ろに隠した。
いや、今更隠しても意味ないだろ……
「……会長でも、ゴミ捨てに来るんですね?てっきり他の役員とかにやらせてんのかと……」
「い、今、他の役員は全員生徒会室に居ないんだ。だから仕方なく俺が捨てにきただけなんだ!」
「別に言い訳しなくてもいいじゃないですか」
金持ち学校の生徒会長はそういう雑用とか絶対にしないと思ってたから、ちょっと好感度は上がったぞ。
「ま、まあいい。それより……お前に、伝えてほしいことがあるんだが」
「は?誰に?何を?」
「二宮柊司に、この前の新歓会でのデート権行使の件について、謝罪したいんだ」
「……!」
その言葉でオレは思い出した。
この男が、この前開催された新入生歓迎会で、柊司のことを俵担ぎして運んだ挙句にデート権まで行使しようとしたことを。
後にデートは会長の方から取り下げられたけど、そのことで柊司が一時期、会長の親衛隊からいやがらせを受けた。
柊司がいやがらせを受けていたという事実は到底許せるものじゃなくて、それを知ったときにオレは会長へ直談判しようとしたけど、これ以上事を荒立てたくないと言った柊司の意思を尊重して、オレもそれ以上の追及をやめた。
結局そのあとは、会長からも親衛隊からも謝罪も何もないまま時が過ぎていたけど……
「俺の軽はずみな行動が、お前の兄に迷惑をかけた。それを謝罪したかった。すまなかった」
「……それ、オレに言われても困るんですけど?」
謝罪したいという気持ちが会長にあったことについては驚いたが、それを本人じゃなくオレに伝えるっていうのはおかしいんじゃないのか。
そう言うと会長はばつが悪そうに眼を逸らした。
「俺もできることなら、二宮柊司に直接会って謝罪したいんだが……俺が直接二宮柊司に会ったら、また角が立つんじゃないかと思ったからな……」
「……まあ、それは確かにそうですね」
行動を常にいろいろな人間から見られている生徒会長は、自由に動ける立場にない。
いくら謝罪するためとはいえ、また直接柊司に会って、それを親衛隊にでも見られたら、以前の二の舞になる。
「だがここは人気がないからな……偶然とはいえ、お前に出会えて、謝罪の気持ちを伝えられてよかった。ではな。そろそろ戻らないといけないからこれで……」
「あ!待ってください!一つ聞きたいんですけど!」
話を終えて去ろうとした会長を呼び止めた。
74
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
この変態、規格外につき。
perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。
理由は山ほどある。
高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。
身長も俺より一回り高くて、しかも――
俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ!
……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。
ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。
坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる