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初めての友達と#3
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~祥吾side~
遠征に出てから七日目の夕方。オレこと二宮祥吾は、一週間ぶりに寮へと帰ってきた。
「柊!ただいまー!!この一週間会いたすぎて死ぬかと思ったよーー!!」
バーンと勢いよく柊司の部屋の扉を開くと、そこにいる筈のない人間が居た。
「うるせえな」
「……はあああ!!?何でお前がここに居んだよ!!北大路治良!!」
何故か柊司のベッドの脇の椅子に、北大路治良が腰かけていた。
「仕方ねえだろ。放さねえんだよ、コイツが」
「え?……あ!」
柊司のベッドに近づくと、寝ている柊司の手が、北大路治良の制服の裾をしっかりと握りしめていた。
「なにこれ可愛い!!……じゃなくて、なんで柊がお前の服掴んでんだよ!!お前そこ代われ!!」
「代われるもんならいくらでも代わってやるよ」
「それより、何でそんなことになってんの!?」
そう聞くと、北大路治良が今日の昼間に起きたことを教えてくれた。
柊司ってば、こんなやつと昼過ごすために無茶するなんて……
「お前、過ごす場所くらい考えろよ!柊はあまり長い間外にいられないんだから!」
「……それは悪かったと思ってる」
憤慨し詰め寄ると、北大路治良はばつが悪そうに眼を逸らした。
……ふーん。自覚はあるのね。
「それで、柊の具合は大丈夫なの?」
「ここにくる前に医務室で点滴してもらった。大分落ち着いてる」
「そっか……よかった」
眠っている柊のおでこに手を当てると、まだ少し熱かったけど、呼吸は落ち着いていた。
ほっと胸を撫で下ろす。
「ところで……あんたいつからここに居たの?もしかしてずっとその状態だった?」
「ここに戻ってきたのは大体午後3時くらいだったな」
今は午後5時だ。つまり、柊司は二時間くらいずっと北大路治良の服を放さなかったということになる。
……柊ってば……どんだけこの不良のこと気にいってんのさ……
「……まさか柊が、そんなに懐くなんて……ね」
柊司が、ここまで他人を気に入ったのなんて初めてなんじゃないだろうか。
柊司は今まで、自分の体調のせいで人に迷惑をかけてしまうことを気にして、例え仲良くなれそうな人ができても、敢えて自分から離れることも多かった。
そんな柊司が、北大路治良には自分から近づいているなんて。
今までだったら考えられないことだ。
それを考えると、この北大路治良は悪い人間ではないんだろう。
「……ありがとう。柊を助けてくれて」
「お前から礼を言われるとはな」
「オレだって、柊を助けてくれた人にはお礼くらい言うよ。それにあんたは、柊の『友達』なんでしょ」
そう言うと、北大路治良は意外そうに目を丸くした。
「初対面の時はいきなり敵意向けてきたくせに、いいのか」
「柊から、初めての友達を奪うようなことはしないよ。……柊が、ずっと友達を欲しがっていたのを知ってるから」
……まあ、もちろん、色々と嫉妬はしてるけど。
「だからあんたのことは認めるけど、絶対に柊を裏切るようなことはしないでよね」
「……」
「もし、柊が傷つくようなことがあったら……そのときは容赦なくぶっ潰すから」
柊司には、もう傷ついてほしくはない。
ずっと色んな事をあきらめてばかりだったから。
……もし次そんなことがあった場合には、容赦はしない。
「……そうならないように努力する」
……そう言うってことは、北大路治良もそれなりに柊司のこと、大切に思ってるみたい?
「それならいいけど……あくまで『友達』だからね!『友達』の域を超えたら……わかってんだろうな」
「……そんなつもりねえよ」
ふん、どうだかね!
「ん……」
そのとき、柊の瞼が震え、柊が目を覚ました。
「あれ……、祥……?かえってきてたの……?」
「おはよ、柊。うん、ちょっと前にね。ただいま」
「おかえり……、ゴホ、ゴホッ」
「大丈夫?気分はどう?」
「……だいぶらくになった……」
咳が出てるけど、ちゃんと話せてるし問題はなさそうだ。
オレがホッと息をつく一方、寝起きでぼんやりしている柊司は、そのときようやく側に居た北大路治良の存在に気が付いた。
自分が北大路治良の服をしっかり握っていることも。
それで一気に覚醒したらしい。
「……!?は、ハル!?ご、ごめん!俺……、っゲホゲホッ!!」
「大丈夫だから、落ち着け」
驚いた拍子に咳き込んだ柊司のことを、北大路治良は慣れた手つきで落ち着かせていた。
初めて会ったときといい、今といい、結構北大路治良って介抱慣れてるよね?
「は、はずかし……ごめん、ハル……本当に……」
「気にすんな。今日のことは俺のせいもあるから」
「そ、それは違うよ。俺が自分の体のことすっぱり忘れてたから……」
「いや、俺がもっと気を回せば済む話だった」
……こんな会話聞かされたら、ちょっとどころでなく嫉妬するんですけど?
「あーもーその話は終わり!どっちもどっちだから!とりあえずお前はもう帰れ北大路治良!あとのことはオレがやるから!!」
「ちょっ……祥、そんな言い方は……」
「柊はもう一回寝る!寝ないと治るものも治らないよ!」
「うっ……」
唸る柊司をもう一度寝かしつけ、北大路治良には早急にお帰りいただいた。
……まだ、柊のいちばんは渡さないんだから!!
***
遠征に出てから七日目の夕方。オレこと二宮祥吾は、一週間ぶりに寮へと帰ってきた。
「柊!ただいまー!!この一週間会いたすぎて死ぬかと思ったよーー!!」
バーンと勢いよく柊司の部屋の扉を開くと、そこにいる筈のない人間が居た。
「うるせえな」
「……はあああ!!?何でお前がここに居んだよ!!北大路治良!!」
何故か柊司のベッドの脇の椅子に、北大路治良が腰かけていた。
「仕方ねえだろ。放さねえんだよ、コイツが」
「え?……あ!」
柊司のベッドに近づくと、寝ている柊司の手が、北大路治良の制服の裾をしっかりと握りしめていた。
「なにこれ可愛い!!……じゃなくて、なんで柊がお前の服掴んでんだよ!!お前そこ代われ!!」
「代われるもんならいくらでも代わってやるよ」
「それより、何でそんなことになってんの!?」
そう聞くと、北大路治良が今日の昼間に起きたことを教えてくれた。
柊司ってば、こんなやつと昼過ごすために無茶するなんて……
「お前、過ごす場所くらい考えろよ!柊はあまり長い間外にいられないんだから!」
「……それは悪かったと思ってる」
憤慨し詰め寄ると、北大路治良はばつが悪そうに眼を逸らした。
……ふーん。自覚はあるのね。
「それで、柊の具合は大丈夫なの?」
「ここにくる前に医務室で点滴してもらった。大分落ち着いてる」
「そっか……よかった」
眠っている柊のおでこに手を当てると、まだ少し熱かったけど、呼吸は落ち着いていた。
ほっと胸を撫で下ろす。
「ところで……あんたいつからここに居たの?もしかしてずっとその状態だった?」
「ここに戻ってきたのは大体午後3時くらいだったな」
今は午後5時だ。つまり、柊司は二時間くらいずっと北大路治良の服を放さなかったということになる。
……柊ってば……どんだけこの不良のこと気にいってんのさ……
「……まさか柊が、そんなに懐くなんて……ね」
柊司が、ここまで他人を気に入ったのなんて初めてなんじゃないだろうか。
柊司は今まで、自分の体調のせいで人に迷惑をかけてしまうことを気にして、例え仲良くなれそうな人ができても、敢えて自分から離れることも多かった。
そんな柊司が、北大路治良には自分から近づいているなんて。
今までだったら考えられないことだ。
それを考えると、この北大路治良は悪い人間ではないんだろう。
「……ありがとう。柊を助けてくれて」
「お前から礼を言われるとはな」
「オレだって、柊を助けてくれた人にはお礼くらい言うよ。それにあんたは、柊の『友達』なんでしょ」
そう言うと、北大路治良は意外そうに目を丸くした。
「初対面の時はいきなり敵意向けてきたくせに、いいのか」
「柊から、初めての友達を奪うようなことはしないよ。……柊が、ずっと友達を欲しがっていたのを知ってるから」
……まあ、もちろん、色々と嫉妬はしてるけど。
「だからあんたのことは認めるけど、絶対に柊を裏切るようなことはしないでよね」
「……」
「もし、柊が傷つくようなことがあったら……そのときは容赦なくぶっ潰すから」
柊司には、もう傷ついてほしくはない。
ずっと色んな事をあきらめてばかりだったから。
……もし次そんなことがあった場合には、容赦はしない。
「……そうならないように努力する」
……そう言うってことは、北大路治良もそれなりに柊司のこと、大切に思ってるみたい?
「それならいいけど……あくまで『友達』だからね!『友達』の域を超えたら……わかってんだろうな」
「……そんなつもりねえよ」
ふん、どうだかね!
「ん……」
そのとき、柊の瞼が震え、柊が目を覚ました。
「あれ……、祥……?かえってきてたの……?」
「おはよ、柊。うん、ちょっと前にね。ただいま」
「おかえり……、ゴホ、ゴホッ」
「大丈夫?気分はどう?」
「……だいぶらくになった……」
咳が出てるけど、ちゃんと話せてるし問題はなさそうだ。
オレがホッと息をつく一方、寝起きでぼんやりしている柊司は、そのときようやく側に居た北大路治良の存在に気が付いた。
自分が北大路治良の服をしっかり握っていることも。
それで一気に覚醒したらしい。
「……!?は、ハル!?ご、ごめん!俺……、っゲホゲホッ!!」
「大丈夫だから、落ち着け」
驚いた拍子に咳き込んだ柊司のことを、北大路治良は慣れた手つきで落ち着かせていた。
初めて会ったときといい、今といい、結構北大路治良って介抱慣れてるよね?
「は、はずかし……ごめん、ハル……本当に……」
「気にすんな。今日のことは俺のせいもあるから」
「そ、それは違うよ。俺が自分の体のことすっぱり忘れてたから……」
「いや、俺がもっと気を回せば済む話だった」
……こんな会話聞かされたら、ちょっとどころでなく嫉妬するんですけど?
「あーもーその話は終わり!どっちもどっちだから!とりあえずお前はもう帰れ北大路治良!あとのことはオレがやるから!!」
「ちょっ……祥、そんな言い方は……」
「柊はもう一回寝る!寝ないと治るものも治らないよ!」
「うっ……」
唸る柊司をもう一度寝かしつけ、北大路治良には早急にお帰りいただいた。
……まだ、柊のいちばんは渡さないんだから!!
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