虚弱体質の俺が全寮制学園に入った結果

めがてん

文字の大きさ
13 / 41

初めての友達と#2

しおりを挟む
「ハル!」

軽やかに俺の隣に降り立ったのはハルだった。
どうやらハルは、屋上の入り口の屋根の上に居たらしい。
ハルはため息を吐きながら、ポケットティッシュを取り出した。

「これで拭け」
「あ……ありがとう!助かった!」

ハルの手からティッシュを受け取り、鼻をかんだ。

「ところでお前、何でこんなところに来た?いつも昼は弟と医務室に居るだろ」
「あ、祥は今日から一週間部活の遠征に行ってて……暇だからハルと過ごそうかなって思って探してたんだよ」
「……ああ、そういうことか」

ハルは納得したように頷いた。

「なあハル、祥が居ない間さ……昼一緒に居てもいい?」
「俺は医務室はいかねえぞ」
「俺の診察終わったあとからでいいから!ハルのいるところに俺が行くよ」
「……なら、まあいいけどよ。だが、お前の弟が帰ってくるまでだぞ」
「本当!?やった!」

思わず手を叩いて喜ぶと、「お前いつも大げさなんだよ」とハルが笑った。
その笑顔を見て、心臓がどきりと鼓動を打った。

ハルは滅多に笑わないので、たまに笑顔を見るといつもこうなる。
どきどきとうるさい心臓を抑えつつ、俺はスマホを取り出した。

「あのさ、明日から診察終わったらハルのところいくから、連絡先交換しようよ。その方が行きやすいでしょ」
「ああ……そうだな」

ハルはすんなりと連絡先を教えてくれた。実は結構緊張していたんだけど、拍子抜けした。
俺の、家族以外の連絡先がなかったスマホのメモリに、『北大路治良』の連絡先が加わった。
思わずにやけてしまう。

「なに笑ってんだよ」
「え?べ、別に、なんでもないよ?」

ハルに睨まれ、慌てて取り繕った。
まさか、初めて友達の連絡先を聞けたからにやけてたなんて、口が裂けても言えなかった。

明日からの昼休みが、楽しみだった。


***


次の日から、俺は昼の診察を終えてから、ハルのいる場所へ向かい、そこで過ごした。
屋上で予鈴が鳴るまで話をしたり、中庭でブチ模様の子猫と戯れたり。
ハルといる時間は、驚くくらい穏やかで、落ち着いていて、そして楽しかった。
とても楽しかったから、長時間外に居られないくらい自分の体がとても弱いということも、忘れていた。


――祥吾が遠征に出て七日目の朝。

「……っ、へ、くしゅんっ!……ずずっ」

起き掛けにいきなりくしゃみが飛び出した。
その拍子に出てきた鼻水をかみながら、思わず自分の腕をさする。
なんだか少し悪寒があるように感じた。
どうか気のせいであってくれ、と思いながら、体温計を脇に挟んだ。

――ピピッ、ピピッ。

「……」

俺は体温計の表示を見て、無言でケースに仕舞った。そして、常備している解熱剤を水で流し込んだ。
そのまま制服を手に取り、着替えて寮を出た。
出かけるとき、くらりと一瞬頭がぐらついたが、気のせいだと思い込んだ。

教室に入ると、なんと珍しく、朝からハルが席に座っていた。
驚きつつも、なるべく明るい声でハルに挨拶した。

「ハル!おはよ!今日は朝から居るんだな!」
「……はよ」

ハルはちらりとこちらを見て、眉をひそめた。

「お前……」
「あ、ちょっと俺、トイレ行ってくる!」

ハルの声色が少し低くなり、嫌な予感がした俺は、ハルに何か言われる前にそう言って教室を出た。
そのままトイレの個室でHRが始まるギリギリの時間まで待った。
……ハルにばれてはまずい。

午前の授業は、解熱剤が効いたのか、少しだるさを感じつつも乗り切ることができた。
授業の合間の休み時間、ハルは何か言いたげにしていたものの、朝のように何か言ってこようとはしなかった。
そして、ついに待ちに待った昼休みになった。

「じゃあ俺、一旦医務室行くから」
「……ああ」
「診察終わったら連絡するから!」

いつもならここで医務室へ向かうのだが、今日はいかなかった。
医務室で診察を受けてしまえば、体調が悪いことがばれてしまう。
そうなったら、確実に早退することになる。それだけは避けたかった。

いつもの診察が終わる時間まで、空き教室の隅で体を抱きしめながら待ち、ハルに、今日はどこにいるのかメッセージを送った。

「……っ、くしゅんっ!」

返信を待っている間、悪寒がさらにひどくなった気がしたが、気のせいだとずっと自分に言い聞かせた。

――ピコン。

「!」

返信が送られてきた。

『今どこにいる』

……いつもなら、ハルは自分がいる場所を送ってくるのに。
少し嫌な予感がしつつも、『医務室だけど』と送った。
するとすぐにメッセージが返ってきた。

『今日お前、医務室行ってないだろ』
「っ!」

行っていないのがバレている……?

「……どうしよう」

どう送れば誤魔化せるかわからず、しばしスマホを持ったまま考えてしまった。

――ピコン。
するとまた、ハルからメッセージが来た。

『篠北に、今日来てないことは聞いた』

――ピコン。
さらに続けてメッセージが来る。

『迎えに行くから、場所教えろ』

――ピコン。
『昼なら、また今度いくらだって一緒に居てやるから』

「……」

最後のメッセージを見て、俺は諦めた。
ハルへ今いる場所のメッセージを送って数分後、空き教室の扉が開いた。

「……本当に、お前は……」

ハルは若干息が切れていた。
ここまで走ってきてくれたのか。

ハルは、教室の隅で丸くなっている俺の額に手を当て、そして眉をひそめた。

「ここまで体調悪いなら、休めよ……馬鹿だな」
「……ハルとの昼……今日で最後、だから……」
「最後じゃねえよ。さっき送ったの見ただろ」
「……ホントに、また一緒に昼……いてくれる?」
「ああ、いくらでも居てやるよ。だから今日は帰るぞ」
「約束だから、な」
「わかってる」

ハルに抱き上げられ、その暖かさに一気に気が緩んだのか。
ゆるゆると瞼が下りて行った。


「俺なんかと昼過ごすために、無茶するなんて……本当に馬鹿な奴」


最後、ハルのそんな呟きが聞こえた気がした。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

この変態、規格外につき。

perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。 理由は山ほどある。 高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。 身長も俺より一回り高くて、しかも―― 俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ! ……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。 ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。 坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...