5%の冷やした砂糖水

煙 うみ

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8.1 露空

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「そういえば星羅、あのふたりが付き合ってるの、いつ気づいたの~?」


中庭を臨む屋根の下のベンチに座って雨宿りしながら、
真子と私はコーヒーを片手にくつろいでいた。

あれ以来、業務の合間に中庭で駄弁るのに味を占めてしまった私たちは、なんだかんだ週に1回は暇なタイミングを見計らって此処にいる。


もちろん、言い出したのは真子だ。

1日に1杯、きめ細かい泡のたったカプチーノを飲めるだけで、幸福度は確実にあがっていると思う。

あるいは、珈琲の有無は全く関係ないのかもしれない。
自由気ままな彼女といるときは、強ばった肩がすとんと落ちる気がする。

今日のように霧雨が降っていても、冬の気配が漂う風が冷たくても、病院の中にいるよりずっと息がしやすい。


「ああ、えっとね。・・・いつだったかな。少し違和感があって」


車椅子に乗っている患者さんと、車椅子を引いている理学療法士が目の前を通りかかり、軽く会釈する。

感染拡大を憂慮して病院全体が面会謝絶の状態だからか、リハビリ中の患者さん以外は人通りのない中庭は閑散としており、何十分居座っていようと、誰かに訝しげな目を向けられることは一切なかった。

ウイルス流行は甚大なマイナスと共に、ほんの少しのゆとりを私たちの日常に与えてくれていた。


「私も途中であれ?って思ったけどあんまり深く考えてなくて。びっくりって感じ」

「・・・うーーん、ほとんど妄想かと思って全然言ってなかったんだけど。

バーで悠馬さん見たときからかな、あれ、もし付き合ってたら辻褄合うかなって」


推理でもなんでもない。

観察と、推測と、ちょっと行きすぎた想像のフレーバーに酔っていただけ。


「悠馬さん、右耳にピアスあいてたから。1個だけ。」
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