悠久の Madrugada〈マドゥルガダ〉 -蒼い闇- 《本編完結》「後日譚」連載開始しました

桜楽-sakura-

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粛正 4 ー慰撫 《サクリファイス》3ー

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 シャッ……シャッ……

 日陰シェイドが、弟の髪をナイフで短く整えたベリーショートにように、シャドウは、日陰シェイドの髪を切っていった。

「リシェ様の言う通りだ……きもが冷えたぞ」
「申し訳ありません」
「いや……始めたからには一気いっきに終わらせねば命取りになりかねない。ーー良くやった」

 粛正に手を掛けられる機会チャンスは多くなく、そして始めたからには一気に終わらせる必要があった。

「血に酔っただけとは思えませんでしたが」
「踊らされた道化が、リシェ様は王より死をたまわるべきだとほざいてくれただけだ。だが」
「……リシェ様に、二度死ねと」
「そう言うことだな。壊れたあるじの心臓をえぐったのだ。粛正しゅくせい契機けいきには申し分なかったが。ーーただあるじが持たなかったのだ」
 待っていれば戻っただろうが、その時間を待つのは危険過ぎた。

 クーデターや、粛正は、その相手に何かを考える時間ーー反撃するための時間を与えないことこそが、鉄則。

「このなりでは、しばらく外に出られません」
「外向きに誰か付ける。お前は万一にそなえて内を固めておけ。何、あるじが戻った以上、時間はそう掛からない。何事も起こさせず終わるだろうよ」
「心得ました」



 §



「……ひどい」
 自分と同じ長さに整えられた日陰シェイドの髪を見た瞬間に出た、弟の第一声がそれだった。ぽろぽろぽろっと、涙がこぼれ落ちた。

シャドウには、シャドウことわりがございます。どうか、ご容赦くだいさい」

「兄さまきっと……早く伸ばせって言うよ…………」

 弟はつぶやき、そして頼み事をする。
シャドウ……どうか、兄さまをお守りください」

「お任せください。ーーどうか、リシェ様はおすこやかにお過ごしくださいますよう」

 一礼いちれいしてシャドウが立ち去ると、日陰シェイドは、弟を抱き上げて湯殿へと運んだ。
 そして、四つ這いアレン・フィーレで、足を開いた姿勢を取らせた。

「手当てを後回しにさせ、申し訳ございません」
 ハーブ水を染ませた更紗さらさず、血を脱ぐう。

「ーーっ! ぅ……」
 ハーブ水が肛門アヌスしたたるだけで傷に染みた。 

「あ……後回しが、どうこう……より、この格好の方が、恥ずかしいよ! っっっ」

 軟膏ローションまとわせた日陰シェイドの指が、肛門アヌスに侵入し、血交じりの兄の精を掻き出した。

「お兄さまなら、“今更”とおっしゃられそうです」

リシェ、恥ずかしいっ! ーーくっ」
「痛い。と声に出して構いません」

「イヤだ! 日陰シェイの馬鹿! 何で
髪切っちゃったのっ! 綺麗だったのにっ! それ、似合わないからっっ!!」

 緊張の糸が切れたのか、まるで八つ当たるかのように、支離滅裂に弟は言い放ち、日陰シェイドは困ったように、苦笑するしかなかった。

「兄さまは意地悪なんだからね! 絶対髪切っちゃったのゆるさないから! 髪が伸びるまであと日陰シェイめられるからっ!!」

 弟の言う通り、兄は日陰シェイドの首筋に付けた噛み跡をめるようになった。

 ーー早く伸ばせよ。

 そして、短くなった髪を暇があれば引っ張った。

 だが、噛み跡が消えても。髪が伸びても。日陰シェイドは兄に首をかき抱かれては、首筋にかかる髪をかきあげられ、口づけされることになった。

 ーー罰だよ、日陰シェイ

 いつも嬉々として、兄は、日陰シェイドの首筋に口づけるようになったーー
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