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アルフと私の会話はこの場にいた誰にも理解されなかった。
いや、一人だけわかった人はいたとは思う。リュートだけは僅かに眉を寄せこちらを見ていた。
「どういうこと?知り合いなの?」
ルナが不思議そうに呟いた。
そうだろう・・・。ずっとアルフと会話を始めて数ヶ月経つというのに、久しぶりに会ったかのような挨拶をするのは違和感しかない。でも、そう言うしかできなかった。
「やっと・・・思い出したんだな・・・」
彼は私の前に立った。
私の感覚からすると、ついこの間別れたはずなのに知らない人が目の前にいるように思え、それが長い年月が経った実感を感じた。
「まさか・・・自分が作った『回復』の呪いが巡り巡って自分が使うことになるとは思わなかったわ。しかも、そのおかげで自分に課せられた《呪いが解けて記憶を思い出すなんて」
皮肉な話だ。
「どう言うこと?フィー。教えて」
セイネシアが訪ねてくる。
自分の記憶が戻った今、隠すことはできなかった。
「私の名前はフィレイネ。800年前、人魚の禁忌をおかし人魚族を追放された魔女なの」
ルナとセイネシアの目が最大までに見開らかれた。
「あの伝説の?まだ生きていたの??」
「フィーが?」
二人の声に身体が震える。どう思われているのか怖かった。
そんな私の肩を彼は引き寄せた。
なぜ、こんなに優しくしてくれるのだろうか。私はあなたに酷いことをしたと言うのに。
「いえ、それもあるけどアルフ様はフィーの知り合いなの?なぜ?意味がわからないわ・・・」
「そうね。でも私の話はあとよ。ルナ」
ルナの名前を呼ぶと本来の目的を思い出したようにルナは厳しい視線を私にむけた。
「そうよね・・・。あなたが大魔女であったのはわかったけど、ソレイユが泡沫人でない理由にはならないわ」
「ええ。でも、私が魔女フィレイネであるからこそいえることが二つある。それは泡沫人であるかどうか見分けることができるということ。そしてそこにいるソレイユはあなたの妹ではないということ」
力尽きたようにずるずるとルナはロイドの傍にいるソレイユを見た。
「妹じゃ・・・ない?」
「その子孫になるわ」
「妹・・・。じゃあ、私のソレイユは?」
「彼女は泡沫人だった。泡沫人としての生を生き抜いたの」
「嘘!嘘よ!だって私の妹よ?私は生きてるの!人魚だからこそ生きてるの。ならば、あの子だって生きていても当然じゃない!?」
「違う。彼女はただの人間だった。あなたたちの母であるレフィシアのお腹でたまたま二つの命に別れてしまった。あなたは人魚として生まれ、双子であったソレイユは人間として生まれた。ただそれだけのこと」
ルナは首を激しく振る。
認めたくないのかもしれない。それでも事実は変わらない。
「人間?じゃあ、泡沫人だったソレイユは・・・」
一番認めたくないだろうが、私ははっきりと言った。
「あなたが初めて海の上に来た時にはもう死んでいたでしょう」
人魚が始めて海の上に来れるのは100歳の誕生日を迎えた時になる。人間の寿命は人魚に比べてはるかに短い。
そう考えると初めからルナがソレイユに会うことなど不可能だったのだ。
「じゃぁ、なんのためにずっと家族を求めていたのかわからないじゃない。私は何者よ!人魚としても中途半端な私はどうすればいいのよ!私を捨てた家族に恨みを返すことも一人でないことを証明することもできないなんて・・・、、」
砂を掴み浜に拳を何度も打ちつけた。
ルナは家族を欲していたのだろうか・・・。
愛情を求めていたのか・・・。その為に泡沫人になりたいと思ったのだろう。いや、きっとどちらでも良かったのかもしれない。彼女は彼女でありたかったのだ。
「君の母であるレフィシアは泣きながら君を海に還していたよ・・・」
そうもらしたのはアルフだった。
心のどこかで『やはり知っていたのか』と思ってしまった。
いや、一人だけわかった人はいたとは思う。リュートだけは僅かに眉を寄せこちらを見ていた。
「どういうこと?知り合いなの?」
ルナが不思議そうに呟いた。
そうだろう・・・。ずっとアルフと会話を始めて数ヶ月経つというのに、久しぶりに会ったかのような挨拶をするのは違和感しかない。でも、そう言うしかできなかった。
「やっと・・・思い出したんだな・・・」
彼は私の前に立った。
私の感覚からすると、ついこの間別れたはずなのに知らない人が目の前にいるように思え、それが長い年月が経った実感を感じた。
「まさか・・・自分が作った『回復』の呪いが巡り巡って自分が使うことになるとは思わなかったわ。しかも、そのおかげで自分に課せられた《呪いが解けて記憶を思い出すなんて」
皮肉な話だ。
「どう言うこと?フィー。教えて」
セイネシアが訪ねてくる。
自分の記憶が戻った今、隠すことはできなかった。
「私の名前はフィレイネ。800年前、人魚の禁忌をおかし人魚族を追放された魔女なの」
ルナとセイネシアの目が最大までに見開らかれた。
「あの伝説の?まだ生きていたの??」
「フィーが?」
二人の声に身体が震える。どう思われているのか怖かった。
そんな私の肩を彼は引き寄せた。
なぜ、こんなに優しくしてくれるのだろうか。私はあなたに酷いことをしたと言うのに。
「いえ、それもあるけどアルフ様はフィーの知り合いなの?なぜ?意味がわからないわ・・・」
「そうね。でも私の話はあとよ。ルナ」
ルナの名前を呼ぶと本来の目的を思い出したようにルナは厳しい視線を私にむけた。
「そうよね・・・。あなたが大魔女であったのはわかったけど、ソレイユが泡沫人でない理由にはならないわ」
「ええ。でも、私が魔女フィレイネであるからこそいえることが二つある。それは泡沫人であるかどうか見分けることができるということ。そしてそこにいるソレイユはあなたの妹ではないということ」
力尽きたようにずるずるとルナはロイドの傍にいるソレイユを見た。
「妹じゃ・・・ない?」
「その子孫になるわ」
「妹・・・。じゃあ、私のソレイユは?」
「彼女は泡沫人だった。泡沫人としての生を生き抜いたの」
「嘘!嘘よ!だって私の妹よ?私は生きてるの!人魚だからこそ生きてるの。ならば、あの子だって生きていても当然じゃない!?」
「違う。彼女はただの人間だった。あなたたちの母であるレフィシアのお腹でたまたま二つの命に別れてしまった。あなたは人魚として生まれ、双子であったソレイユは人間として生まれた。ただそれだけのこと」
ルナは首を激しく振る。
認めたくないのかもしれない。それでも事実は変わらない。
「人間?じゃあ、泡沫人だったソレイユは・・・」
一番認めたくないだろうが、私ははっきりと言った。
「あなたが初めて海の上に来た時にはもう死んでいたでしょう」
人魚が始めて海の上に来れるのは100歳の誕生日を迎えた時になる。人間の寿命は人魚に比べてはるかに短い。
そう考えると初めからルナがソレイユに会うことなど不可能だったのだ。
「じゃぁ、なんのためにずっと家族を求めていたのかわからないじゃない。私は何者よ!人魚としても中途半端な私はどうすればいいのよ!私を捨てた家族に恨みを返すことも一人でないことを証明することもできないなんて・・・、、」
砂を掴み浜に拳を何度も打ちつけた。
ルナは家族を欲していたのだろうか・・・。
愛情を求めていたのか・・・。その為に泡沫人になりたいと思ったのだろう。いや、きっとどちらでも良かったのかもしれない。彼女は彼女でありたかったのだ。
「君の母であるレフィシアは泣きながら君を海に還していたよ・・・」
そうもらしたのはアルフだった。
心のどこかで『やはり知っていたのか』と思ってしまった。
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