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「レフィシア嬢は泣きながら何度も何度も抱き縋り渡すのを躊躇っていた。最後には引き離されるようにして人魚の女王につれて行かれ、その後もずっとこの浜で泣いていたんだ」
「なぜ、そんなことがわかるのよ!まるで見てきたように言わないで!!」

「見たからだ。レフィシア嬢に会い、話もした」
「あり得ないわ!400年も前のことよ。なぜその場にいることができるの?」
「それは、ずっと生きているからだ」
「どういうことよ!!信じない!絶対に信じない!」

 泣いて叫ぶように訴えるルナの声を聞いてアルフの手が震えるのを感じた。

「レフィシア様がを想っていたのは本当よ」

 小さいながらもしっかりとした声がした。
ソレイユがまだ眠るロイドの傍を離れたルナに近づいてきた。

「私の名前はレフィシア様のお子であるソレイユ様からつけられてるの。白髪をした子供にはソレイユとつけるようにされているわ。やっと・・・わかった・・・。あなたの髪につけている飾りの花は苺の花。私たちカラナイ国の王家の王紋に使われている花であり、王女はその花を完璧に刺繍できるように教わるの。苺の花言葉は『幸福な家庭』と言うの」
「幸福の家庭・・・?」

 ソレイユがルナの手をとり、頷いた。

「そう、あなたも私たちの家族ということ。レフィシア様はあなたを忘れてはいなかった。地上にきた時、あなたに気づいて欲しくって、道標にして欲しくてあえて『掟』を作ったんだと思うの。ごめんなさい。ずっと・・・ずっとあなたを一人にして。ごめんなさい。海に戻ることを忘れて地上に生きることを選んでしまって・・・」
「う、うっ・・・」

 二人は抱きしめ合う。

「ソレイユ・・・」

 二人の背後からロイドの声が聞こえた。目が覚めたのだろう。

「ありがとう・・・。ソレイユ。あなたに無理強いをしたわ。・・・海を恐れる者が人魚なわけないわね。そこの泡沫人と幸せになればいいわ」
 
 ルナはソレイユからゆっくりと離れるとロイドの元へ行くよう、そっと背中を押した。

 ルナは涙を拭き、こちらを振り返る。

「さて、きちんと話してもらうわ。アルフ様、フィレーネ。あなたたちは何者なの?」
「そうね、レフィシア様を知っているのであれば二人はいったいどれだけ生きているの?」
「ソレイユ?」
「フィー、あなたが本当にフィレーネであれば、どんな禁忌を犯したことになるの?」

 全く事情がわかっていないロイドを除き、ルナ、ソレイユ、セイネシアがそれぞれ疑問を口にした。

「アルフ・・・いいのか?」

 はやり、リュートはなにか知っているのだろう。
 彼はアルフに対して確認してきた。

「もう、隠すことはない。800年たつ。君の記憶が戻ったし・・・」
「やはり、そうなのね・・・」

 もう一度、ここにきたのは必然だったようだ。
 何もかもを忘れていても、身体に染みついた記憶は私を動かしたようだ。

「だから、なんなの?」

 ルナが歯痒そうに言ってきたので、私は笑いながら言った。

「私は800年前、ここでアルフ・・・リードに会い、人魚としては絶対にしてはならないことをしたのよ」

 


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