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こうどうマーチ2
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怖い予想は一旦置いておいて。
今日やる予定。
その2、iPhoneの修理とその3、ホテルの荷物について。
この2つの件を片付けちゃおう。
お義父さんに電話繋がるかなぁ。
「おぅ。サクちゃんか」
「おはようございます。佐倉です。いまお電話大丈夫ですか?」
「えぇぞ。えぇぞ。なんかそっちは大変なことになっとるなー」
「僕はそこまで。圭介さん達は大変そうだけど」
断続的に聞こえてくる着信音が問い合わせの多さを教えてくれる。
僕には関係ない事だけど。
「僕、お義父さんに謝らなきゃいけなくて」
「どーした?」
「もらったiPhoneの画面にヒビ入っちゃいました。あとでショップに直しに行こうとは思ってるんですけど。ごめんなさい」
「そんなもん気にするな。修理も儂がやっとくで、あとで新しいのを届けさせる」
「そこまではさすがに」
「ええんだよ。ちょうど渡したいもんもあるから若いのを使いに出す。ちょっと待っとれ」
SiMの登録やデータの移行は自分で出来るかって聞かれた。
ちょっと前まで仕事でやってたし簡単だよ。
「それとホテルの部屋に置いてある僕の私物なんですけど。もう少しだけ預かってもらえますか?」
「そんなもん、いくらでも置いとけ。あの部屋はサクちゃんのものだからな。家出したくなったらいつでも使えー」
昨日の今日で家出をするつもりはないけど。
話し合いの結果次第では頼らせてもらおう。
保険は多い方がいい。
新しいiPhoneと荷物を待ってる間。
読み飛ばした新聞の記事でも読んでいようかな。
新聞の地方面。高校野球の県大会優勝候補を紹介するニュース。
もうそんな時期か。愛知も参加校が多い。神奈川と同じぐらい。
東西で分けてくれたらいいのに。
トーナメント表の200近い参加校。
地域によってたどり着くまでの差がある夏の甲子園。
誕生日はちょっと嫌いだ。
あの夏の決勝戦を思い出すから。
新聞を畳んでテーブルの端に積み上げる。
頭を使うのに疲れた。文字ももう読みたくない。
少し休もうとテレビをつけたら。高校野球の愛知県大会をローカル局が中継していた。
高3の夏。県大会の決勝で負けたあと受験を理由に野球から離れて。
しばらくはテレビで見るのすら避けていた。
引退直後の頃はグラウンドから聞こえる音すら聞きたくなくて。
とくに好きでもない流行りの曲をイヤホンで聞くぐらい。
けれども時間がたった今。高校球児を見てチャンネルを変えたりテレビを消すほどでもない。
ブラスバンド部の演奏。癖のある場内アナウンス。金属バットの乾いた音。
そして、ミットでボールを受けたときの重く沈んだ音で思い出される手のひらの感覚。
豆が潰れても絆創膏を貼った上にテーピングを巻いて。
どんなに痛くてもボールを捕らないなんて選択はなかった。
頼まれるのが嬉しくて僕はキャッチャーミットを構えたし。豆が潰れる度に手の皮も厚くなっていった。
もう手の皮はふやふやになってしまったけれど。僕のどこにも球児の面影はない。
意外と見ていられるな。もっとツライかと思ってた。
懐かしさすら感じる。
ぼんやりと試合を見てると手が寂しくなった。
思い立って、圭介さんの仕事部屋にお邪魔する。
『圭介さん、紙をちょうだい』
電話中にごめん。でもスコアを付けたい。
記録員としてベンチに座らせてもらっていた癖が体に染み付いてるみたいで落ち着かないんだ。
真っ白なコピー用紙を束ごともらう。それに3色ボールペン。
ラフに格子の線を引いて、選手の名前を書いた。
試合の途中からだけどスコアブックを付けよう。
今日やる予定。
その2、iPhoneの修理とその3、ホテルの荷物について。
この2つの件を片付けちゃおう。
お義父さんに電話繋がるかなぁ。
「おぅ。サクちゃんか」
「おはようございます。佐倉です。いまお電話大丈夫ですか?」
「えぇぞ。えぇぞ。なんかそっちは大変なことになっとるなー」
「僕はそこまで。圭介さん達は大変そうだけど」
断続的に聞こえてくる着信音が問い合わせの多さを教えてくれる。
僕には関係ない事だけど。
「僕、お義父さんに謝らなきゃいけなくて」
「どーした?」
「もらったiPhoneの画面にヒビ入っちゃいました。あとでショップに直しに行こうとは思ってるんですけど。ごめんなさい」
「そんなもん気にするな。修理も儂がやっとくで、あとで新しいのを届けさせる」
「そこまではさすがに」
「ええんだよ。ちょうど渡したいもんもあるから若いのを使いに出す。ちょっと待っとれ」
SiMの登録やデータの移行は自分で出来るかって聞かれた。
ちょっと前まで仕事でやってたし簡単だよ。
「それとホテルの部屋に置いてある僕の私物なんですけど。もう少しだけ預かってもらえますか?」
「そんなもん、いくらでも置いとけ。あの部屋はサクちゃんのものだからな。家出したくなったらいつでも使えー」
昨日の今日で家出をするつもりはないけど。
話し合いの結果次第では頼らせてもらおう。
保険は多い方がいい。
新しいiPhoneと荷物を待ってる間。
読み飛ばした新聞の記事でも読んでいようかな。
新聞の地方面。高校野球の県大会優勝候補を紹介するニュース。
もうそんな時期か。愛知も参加校が多い。神奈川と同じぐらい。
東西で分けてくれたらいいのに。
トーナメント表の200近い参加校。
地域によってたどり着くまでの差がある夏の甲子園。
誕生日はちょっと嫌いだ。
あの夏の決勝戦を思い出すから。
新聞を畳んでテーブルの端に積み上げる。
頭を使うのに疲れた。文字ももう読みたくない。
少し休もうとテレビをつけたら。高校野球の愛知県大会をローカル局が中継していた。
高3の夏。県大会の決勝で負けたあと受験を理由に野球から離れて。
しばらくはテレビで見るのすら避けていた。
引退直後の頃はグラウンドから聞こえる音すら聞きたくなくて。
とくに好きでもない流行りの曲をイヤホンで聞くぐらい。
けれども時間がたった今。高校球児を見てチャンネルを変えたりテレビを消すほどでもない。
ブラスバンド部の演奏。癖のある場内アナウンス。金属バットの乾いた音。
そして、ミットでボールを受けたときの重く沈んだ音で思い出される手のひらの感覚。
豆が潰れても絆創膏を貼った上にテーピングを巻いて。
どんなに痛くてもボールを捕らないなんて選択はなかった。
頼まれるのが嬉しくて僕はキャッチャーミットを構えたし。豆が潰れる度に手の皮も厚くなっていった。
もう手の皮はふやふやになってしまったけれど。僕のどこにも球児の面影はない。
意外と見ていられるな。もっとツライかと思ってた。
懐かしさすら感じる。
ぼんやりと試合を見てると手が寂しくなった。
思い立って、圭介さんの仕事部屋にお邪魔する。
『圭介さん、紙をちょうだい』
電話中にごめん。でもスコアを付けたい。
記録員としてベンチに座らせてもらっていた癖が体に染み付いてるみたいで落ち着かないんだ。
真っ白なコピー用紙を束ごともらう。それに3色ボールペン。
ラフに格子の線を引いて、選手の名前を書いた。
試合の途中からだけどスコアブックを付けよう。
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