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きげんコンチェルト7
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昨日やるって決めたこと。
その1。お着物の相談。
これは楓さんにお願いするんだけど。
仕立ててもらって1日で破けたなんて。言い難い。けど言わなきゃ直せない。
楓さんの連絡先が入ってるのはお義父さんから貰った方のiPhoneなので。
電池切れで電源落ちてるのをまず充電。
電源入れてみたら。楓さんからの着信でいっぱいだ。えぐい。
すごく話しにくいけど、意を決して通話ボタンをタップする。
「サクラちゃん!」
「はい。佐倉です」
「あぁ。良かった。元気そうな声して。ほんまに良かった」
ワンコールで出てくれた楓さん。
もしかして、僕からの電話を待ってくれていた?
感極まって泣きそうな声してる。
「歳とるって嫌やわ。悪い方に悪い方に考えちゃうもの」
僕との連絡が途絶えたのをそこまで心配してくれてたなんて。
「ごめんなさい。昨日は相撲から帰った後にもいろいろあって、疲れたからすぐに寝たんです。まさか鈴村さんがあんな意地悪なことしてたなんて知らなくて。それも言い訳ですね。すぐに着物の相談の連絡をしていたら良かったんだし」
「ええのよ。寝てたのなら。鈴ちゃんみたいなことにならなくて本当に良かった」
「鈴村さんみたい?」
「サクラちゃんはちょいちょい鈴ちゃんみたいなことするのが心臓に悪いんやわ」
「そんなぁ。似たようなことをしたつもりはないですよ」
鈴村さんと同じことなんてするわけないし。出来ないし。
「もうっ。一緒なのは家を飛び出すところからよ。マンションの3階から飛んだって聞いたときは心臓が止まるかと思ったんやから。鈴ちゃんも上前津の時に事務所の窓から銀杏の木つたって逃げてるんよ。安全のため外に出るなって言われてたのを息が詰まるって夜中に逃げ出して」
変なとこで似てしまった。
脱走ルートに街路樹は隠れた定番?
「鈴ちゃんもちょっとそこまで、すぐに帰るつもりだったはずよ。それを攫われちゃって。あの子、ここぞという時の運を持ってない子だから。お背中見たでしょ? あれがその時の傷なの」
10日間に及ぶ拉致監禁暴行のはじまりは軽い気持ちの外出がきっかけ。
NPOの事務所で鈴村さんがあんなに怒っていたのは、トラウマを刺激してしまった僕の行動によるもの?
「他にも拗らせたストーカーに包丁でお腹刺されたり、苦労が絶えなくて」
出刃包丁で刺した犯人はストーカーだったのか。
敵対者だけに注意してれば良いのじゃなくて。自分に好意を持っている相手にも警戒が必要とか。
なんか良くないものを集めるフェロモンでも出てるんじゃ。
「僕、鈴村さんのことを知ったつもりでいて全然分かってない」
「それは当たり前よ。まだ知り合って1年経ってないでしょう。知らなくて当然なの。こんな短い期間で知ったつもりになれる方が問題よ。これから何年もかけてお互いの理解を深めていきなさい」
僕らはまだまだ理解が浅かったのか。
これから魔女見習いとして徐々に知っていけば良いのだろうけど。
僕、鈴村さんの沼をあんまり覗きたくないな。
「それにしても圭君は愛が重い子だから心配しちゃった。サクラちゃんに酷いことしたんじゃないかって」
「僕は何にも怪我とかしてないし。でも向日葵の着物の袖が」
「それなら安心して。お写真で見ただけだから絶対とは言えないけど。私、直すの得意なのよ」
楓さんはとても古い着物も扱っているし。
鈴村さんも簡単に直るみたいに言ってたから。
ここは信じてお願いしよう。
頼りになる楓さんがいるとはいえ。
同じ過ちを繰り返さないように。
「次からは圭介さんの地雷を踏み抜かないように気をつけます」
「鈴ちゃんから自分の身を守る術を学びなさい。圭君の手網の握り方も。それと娘として使えるコネはどんどん使わせてもらうのよ」
「手綱の握り方。それは知りたい。あと、コネクションも魔女見習いとしてガンガン使っていきます」
「貴方達は似た者親子になりそうやね。サクラちゃんも怒ると殿方の大切なところを切り落とすんやろ? 可愛い顔して怒ると過激やね」
「花見会の時のことですか? それならフリだけだし。本当に切るなんてするわけないじゃないですか」
怖いこと言わないで。
あんなの酔った上での冗談だし。
「そうやねっ。普通は切らないわね。やだわぁ。とにかく。お着物のことは私があんじょうしておくから。あとで預かりに伺うわ」
和やかに話してたのに。
最後は慌てて電話を切られちゃった。
もしや鈴村さんは過去に。
決めつけるのは良くないけど、やっていてもおかしくない。
だって魔女だもん。
その1。お着物の相談。
これは楓さんにお願いするんだけど。
仕立ててもらって1日で破けたなんて。言い難い。けど言わなきゃ直せない。
楓さんの連絡先が入ってるのはお義父さんから貰った方のiPhoneなので。
電池切れで電源落ちてるのをまず充電。
電源入れてみたら。楓さんからの着信でいっぱいだ。えぐい。
すごく話しにくいけど、意を決して通話ボタンをタップする。
「サクラちゃん!」
「はい。佐倉です」
「あぁ。良かった。元気そうな声して。ほんまに良かった」
ワンコールで出てくれた楓さん。
もしかして、僕からの電話を待ってくれていた?
感極まって泣きそうな声してる。
「歳とるって嫌やわ。悪い方に悪い方に考えちゃうもの」
僕との連絡が途絶えたのをそこまで心配してくれてたなんて。
「ごめんなさい。昨日は相撲から帰った後にもいろいろあって、疲れたからすぐに寝たんです。まさか鈴村さんがあんな意地悪なことしてたなんて知らなくて。それも言い訳ですね。すぐに着物の相談の連絡をしていたら良かったんだし」
「ええのよ。寝てたのなら。鈴ちゃんみたいなことにならなくて本当に良かった」
「鈴村さんみたい?」
「サクラちゃんはちょいちょい鈴ちゃんみたいなことするのが心臓に悪いんやわ」
「そんなぁ。似たようなことをしたつもりはないですよ」
鈴村さんと同じことなんてするわけないし。出来ないし。
「もうっ。一緒なのは家を飛び出すところからよ。マンションの3階から飛んだって聞いたときは心臓が止まるかと思ったんやから。鈴ちゃんも上前津の時に事務所の窓から銀杏の木つたって逃げてるんよ。安全のため外に出るなって言われてたのを息が詰まるって夜中に逃げ出して」
変なとこで似てしまった。
脱走ルートに街路樹は隠れた定番?
「鈴ちゃんもちょっとそこまで、すぐに帰るつもりだったはずよ。それを攫われちゃって。あの子、ここぞという時の運を持ってない子だから。お背中見たでしょ? あれがその時の傷なの」
10日間に及ぶ拉致監禁暴行のはじまりは軽い気持ちの外出がきっかけ。
NPOの事務所で鈴村さんがあんなに怒っていたのは、トラウマを刺激してしまった僕の行動によるもの?
「他にも拗らせたストーカーに包丁でお腹刺されたり、苦労が絶えなくて」
出刃包丁で刺した犯人はストーカーだったのか。
敵対者だけに注意してれば良いのじゃなくて。自分に好意を持っている相手にも警戒が必要とか。
なんか良くないものを集めるフェロモンでも出てるんじゃ。
「僕、鈴村さんのことを知ったつもりでいて全然分かってない」
「それは当たり前よ。まだ知り合って1年経ってないでしょう。知らなくて当然なの。こんな短い期間で知ったつもりになれる方が問題よ。これから何年もかけてお互いの理解を深めていきなさい」
僕らはまだまだ理解が浅かったのか。
これから魔女見習いとして徐々に知っていけば良いのだろうけど。
僕、鈴村さんの沼をあんまり覗きたくないな。
「それにしても圭君は愛が重い子だから心配しちゃった。サクラちゃんに酷いことしたんじゃないかって」
「僕は何にも怪我とかしてないし。でも向日葵の着物の袖が」
「それなら安心して。お写真で見ただけだから絶対とは言えないけど。私、直すの得意なのよ」
楓さんはとても古い着物も扱っているし。
鈴村さんも簡単に直るみたいに言ってたから。
ここは信じてお願いしよう。
頼りになる楓さんがいるとはいえ。
同じ過ちを繰り返さないように。
「次からは圭介さんの地雷を踏み抜かないように気をつけます」
「鈴ちゃんから自分の身を守る術を学びなさい。圭君の手網の握り方も。それと娘として使えるコネはどんどん使わせてもらうのよ」
「手綱の握り方。それは知りたい。あと、コネクションも魔女見習いとしてガンガン使っていきます」
「貴方達は似た者親子になりそうやね。サクラちゃんも怒ると殿方の大切なところを切り落とすんやろ? 可愛い顔して怒ると過激やね」
「花見会の時のことですか? それならフリだけだし。本当に切るなんてするわけないじゃないですか」
怖いこと言わないで。
あんなの酔った上での冗談だし。
「そうやねっ。普通は切らないわね。やだわぁ。とにかく。お着物のことは私があんじょうしておくから。あとで預かりに伺うわ」
和やかに話してたのに。
最後は慌てて電話を切られちゃった。
もしや鈴村さんは過去に。
決めつけるのは良くないけど、やっていてもおかしくない。
だって魔女だもん。
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