恋愛サティスファクション

いちむら

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アビスの入口4

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「事の起こりはひとりの男娼だよ。裏柳組が管理してるデリヘルに男娼がいたんだ。一部の好事家に人気があって、新年の初競りで1億の値がついたこともあったね。ご祝儀相場だったけど」

1億円のSEXってどんなだ?
それだけ人気ならきっと美人でSEXも上手な人だったんだろう。
んん? 美人? まさかね。

「組としては高く売れる男娼の価値を高めておきたいわけで。そう客を取ることもしないし、ましてや一見さんの相手なんてさせるわけもない」

昔の花魁にもそういうところがあったらしいね。
まずは食事からって何度も通わせて簡単には身体を許さない。

「そこに小峠会が自分のところの顧客をねじ込んだのさ。グラビアアイドルを多数輩出する事務所の役員だったかな。あんまり品の良くない男でね。いきなり高嶺の花を抱かせろと騒ぐのだ。金ならあると札束は積めても脳みそに品格は詰められなかったのかね」

成金って奴か?
お金があるのが偉いって態度はよろしくないよ。

「小峠会の顔も立てなければならないので、仕方なく一晩だけお相手をすることになったのだが……」

その一晩になにがあったっていうんですか?

「その客はとても手癖が悪くて。男娼に覚醒剤を打とうとしたのだよ。すでに自分も打っていて判断力が落ちていたんだろうね。そういうクスリを使った性を売る者もいるけれど。男娼はそこまで売るつもりはなかったから抵抗をして」

おクスリを使ったSEX。そんなの嫌に決まってる。
圭介さんや玲司君にどんなに頼まれたって覚醒剤を使うのは断固拒否。
どれだけお金積まれたって嫌だ。抵抗やむなし。

「芸能事務所のジャブ中役員は死んでしまったよ。男娼に突き飛ばされて倒れた際にテーブルの角で頭を強く打ってね」

それは正当防衛?
覚醒剤を打たれるってなったら僕だって怖くて暴れる。
でもその結果、人がひとり死んでしまったら。

「小峠会は客を殺されたとあって怒る。裏柳組だってそんな素行の悪い客を寄越すなと怒る。鞘間組内では裏柳組と小峠会どちらにつくのか荒れてね。本来なら客に手をかけた裏柳組が悪いのだけど。小峠会が覚醒剤をシノギにしていると分かっていて受け入れた裏柳組の不手際だしね」

どんなにたちが悪い客でも。
客に手を出してしまうのは悪いこと。
でもそれならなおのこと、クスリを使うような客を斡旋した小峠会の責任は?
裏柳組だけが悪いっていうより、交通事故の過失割合みたいにお互いにこれだけ悪いってならないのか?

「ここで面倒だったのが。渦中の男娼には金払いの良い馴染み客が多くてね。見舞いだとやってきて。小峠会のねじ込んできた客なんて足元にも及ばない大金を払って。一晩過ごすも何もしないで帰っていく。金を払ったなら抱いていけばいいのに。人殺しは抱きたくないのかと勘違いして落ち込んだ心の痛みにこそ見舞いが欲しかったよ」

ファンの人の優しさを面倒だなんて言っちゃ駄目ですよ。
怖い思いしたよねって心配して来てくれたんだし。
無理にSEXしなくていいんだよっていう気遣いを勘違いしちゃったのは悲しいすれ違いだ。

「そうやって加害者であるはずの男娼がチヤホヤされているのを面白く思わないのは分かるが。だからって私を攫って回して撮って売るのは悪手だろう。火に油を注ぐだけだ。そもそもあの頃の私は未成年だぞ。児童ポルノ所持で豚箱に行きたいのか?」

それ言い出したらファンの皆さん、みんなショタコンの犯罪者ですよ!
ってか、やっぱり鈴村さんの話なんじゃん。
未成年売春と覚醒剤と殺人は気持ちが追いつかない。
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