恋愛サティスファクション

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アビスの入口3

ウィキペディアのお義父さんの項目を最後まで読んでみた感じ。
上前津抗争っていうのがキーポイントみたいだから、さらにそこを調べるか。

ちなみに鈴村さんの名前を検索してもウィキペディアは出てこなかった。
服飾系のニュースはたくさん出てきたけどね。
さすが大人気メンズブランド、ダブルフォルドの総括プロデューサー。
メディアのお仕事もたくさんです。

さて、上前津抗争について。
ウィキペディアも読んだけど、いまいちよく分かんない。
ヤクザ業界の専門用語は難しい。

そうだ。鈴村さんに聞いたら良いんじゃない？
ネットの情報より詳しそう。
リアルタイムでニュースとかも見ていただろうし。
調べろって言ったのは鈴村さんだ。
調べた結果に対する疑問にも答えてくれるよね。

ソファでくつろいでいるところ恐縮ですが。
ミネラルウォーター片手にのんびりしている鈴村さんに質問です。

「上前津抗争ってどんな事件だったんですか？」
「懐かしいね。この傷、すぐそこのマンションで撃たれた痕だよ」

銃撃事件現場の幹部愛人宅マンションにいて、上前津抗争が激化するきっかけになった当時未成年の被害者が鈴村さん！
目の前に当事者がいました！

ソファにゆったりと寝そべる鈴村さんが指差すのは太ももの付け根にある1センチほどの丸い傷。
それ銃創だったんだ。
見た目は普通の傷と変わんない。刺し傷っぽい。

ってか、鈴村さん、1ついいですか。
少し服装がセクシー過ぎるんですけど。

お風呂上がりに傷跡が薄くなるっていう保湿剤を背中に塗るように頼まれて、お手伝いをさせてもらった。
クリームが肌に馴染むのを待って鈴村さんが着たのは、丈の長めなリネンのボタンチュニック。
だけど生成り色のシャツの前ボタンを全開にして羽織ってるだけだから、大事なところが丸見えですよ！

玲司くんだってパンツは履くよ？
もしかしてこのまま下着を履かないで過ごすつもり？？

「せめてシャツのボタンは止めましょうよ」
「ボタンなんて飾りだろう？」
「そのボタンは実用ですよ！」

どう見ても飾りボタンじゃない。
せめて半分はボタン留めてください。

「君と私の仲ではないか。もう傷を隠す必要もないだろう」

傷は隠さなくていいです。
いままで気を使ってもらって僕の方こそ悪かったなって思うし。
信頼関係が結べたんだっていうのも嬉しい。
でも、男性の象徴とかいろいろ隠すべきものがあるでしょう！
普通に歩かないで。恥じらいはどこに置いてきちゃったの！？

お願いだからボタンを留めて。
目のやり場に困るんです。
土下座する勢いで拝み倒してなんとか留めてくれたのは下から2つのボタンだけ。
はだけた胸元や際どい太ももが余計に卑猥になった。

ボタンを留めてくれただけヨシとしよう。
たくさんを求めて押し付けるのも違う。
いまはヤクザについてのお勉強会です。

「上前津抗争について。さて、どこから話そうか。ふふっ」

鈴村さんはいつものように笑うけど。
自分も銃に撃たれて、親しくしてるお義父さんは逮捕されて。
楽しい話にはならないだろう。
それでも話してくれるというのなら。
僕は聞く。どんな真相がそこにあったとしても。