恋愛サティスファクション

可視化ライブラリ

おねがいピックミー6

「この程度で嫉妬に狂うとはまだまだ青いね」

鈴村さんがそれ言う？
悪いのは勝手に撮って投稿してる鈴村さんじゃん。
これって違法アクセスで訴えられないかな。
僕のインスタ触っていいなんて言ってない。

「お母様とかヤクザとか以前に。鈴村さんは僕が保護されたNPOに所属している相談員ですよね？ 僕の安全を蔑ろにして仕事放棄ですか？ この件が落ち着いたら泰葉さんに鈴村さんの相談員としての適性を相談させてもらいますから」

僕を一時的に保護して、恋人との話し合いに同行してくれるってことでしたよね？
なんで話をこじらせるようなことをしてるんですか？　
信頼を裏切ったんだから、相応の報いは受けてもらいますよ。
泰葉さんも鈴村さんを庇うようならまとめてSNSで告発してやる。
さっきの僕と圭介さんの写真はなかなかにセンセーショナルだから炎上するはず。
消し炭になるまで燃えるよ。

「私の社会的立場を攻めるとは目の付け所が素晴らしい。行動の理由を説明して納得してもらわないといけないね」
「一理あって納得が出来たら。泰葉さんに報告するのは保留します」

それがヤクザ的な理論だったとしても。
理由を伴う行動だったら理解しよう。

「鈴村に丸め込まれてんじゃねぇよ。それっぽい理屈貼り付けても。結局は愉快犯だからな」

たしかに。悪気なく楽しそうだったからと鈴村さんなら言いそうだ。
でも、それは僕と鈴村さんの間の問題なんで。

玲司君は玲司君でたっくさん問題が山積みなこと忘れてない？

「なに他人事みたいに。僕は玲司君にも怒ってるんだからね」
「さっき助けなかったことか？ 圭もキレてたし、あれはムリだって」
「それは別に。いざとなったら僕の希望より圭介さんの意向を優先するんだなってだけだし」

これは怒りじゃないよ。諦めだよ。
怒る価値すらない事実だ。
僕が怒ってるのは。

「部屋のカメラのことは玲司君も知ってたよね？ 主犯が圭介さんだとしても、玲司君も共犯だから」

思い起こせば。
電話がかかってくるタイミングとか怪しかった。
ちょうど良すぎていたのは、僕のことを監視していたからじゃない？
二人して僕のことを仲間はずれにして。
僕はどっちにも怒ってる。

「他にも僕だけ知らされていないことが多そうだし。その辺のことは明日聞かせてもらいます」

宣告はした。続きは明日。
今日はもう疲れたし。僕は寝たい。

「寝るなら一緒に寝よー」

圭介さんが腕枕するよってポーズで誘ってくるけど。
一緒に寝るわけないし。
添い寝なら玲司君がしてあげたら？

「盗撮犯ふたりで仲良く手を繋いで寝なよ。僕はリビングのソファでも借りる」

めちゃくちゃ嫌そうな顔してるけど。
ふたりとも同じ顔して仲良しじゃん。

そもそも家を出た理由がまだ何も解決してないのに、何事もなかったかのように仲良くできると思っているのがおかしい。

「今日はもう疲れたから。明日、部屋のカメラのこととか、他にもいろいろ。しっかり聞かせてもらうまで。ふたりで反省しててください」

ソファで寝るつもりだったけど。
ツインのゲストルームがあったので、遠慮なくお借りして。
名古屋の仮拠点的な部屋っぽいのに豪華だとかは考えちゃだめ。
その答え合わせは明日すればいいんだ。

破れた袖の相談も。
割れたiPhoneの修理も。
ホテルに置きっぱなしの荷物のことも。
全部明日で。

化粧を落とすのもめんどくさい。
着物は脱いで適当なシャツを借りよ。
おやすみなさい。今夜は夢も見たくない。