恋愛サティスファクション

可視化ライブラリ

きげんコンチェルト1

お腹がすいて目が覚めた。
太陽はもう昇ってるから朝。5時前でも朝。
早起きしすぎの爺ちゃんかよ。

朝ごはんを食べたい。コンビニでも行こうかな。
隣のベッドで寝てる鈴村さんを起こさないように。
そろりそろりとベッドから起きてリビングへ。

みんなまだ寝てるかと思ったら。
玲司君が起きてた。

「おはよう。早起きだね」
「違ぇ。寝てねぇんだよ」

徹夜？

「圭と一緒のベッドなんて寝たくねぇし。ソファは寝るには狭ぇし」
「無理に起きてるより潔く圭介さんと寝ちゃえば良かったのに。みんなで一緒に寝ることあるじゃん。あれと一緒でしょ？」

三人で並んで寝ることあるんだし、二人で寝るのは誤差だよ。
誤差じゃない？ 男心が分かってない？
ひどいなぁ。僕だって雑魚寝ぐらいしたことある。

「朝ごはんが欲しいからコンビニに行くけど、玲司君もなにかいる？」

お腹がすいてるならお肉を買ってくるよ。
お義父さんのお金だけど。

「欲しいもん言え。オレが買ってくる」
「買い物ぐらい自分で行けるし。どっかに行かないか心配ならついて来ていいから」
「お前が出てった瞬間に圭が起きたらどーすんだよ。誰も手がつけられなくなるぞ。大人しく家にいろ」

僕がほんのちょっと朝ごはんを買いに行くぐらいで大袈裟な。
でも昨日のキレっぷりで圭介さんの地雷は踏み抜いたら危険だって身をもって覚えたので。
玲司君、お使いをお願いします。
レタスサンドとカレーパンとアイスカフェオレ。なかったら適当で。
それにスポーツ紙を全部。昨日の相撲の記事を読みたいから。

玲司君を玄関でお見送りして。
待ってる間、何をしよう。
シャワーでも浴びてようかな。
化粧を落とさずに寝ちゃったのが気持ち悪いし。
サッパリしたらご飯にしよ。

髪のリボンをほどいてリビングのテーブルの上に置く。
そのとき見つけたんだ。
テーブルの上に僕のiPhone。

お義父さんがくれたブラックのiPhone14Pro Maxじゃなくて、圭介さんが用意してくれたシルバーのiPhone14Proの方。
会いたかったよぉ。
連絡先なんてほとんど入っていなくても僕の半身。懐かしい。

やっばい。Twitterを確認しなきゃ。
この数日間。なんにも言わないで落ちてたから、みんなに心配をかけているかも。
毎日おはツイしてくれる子もいたし。
DMも溜まってそう。

玲司君が帰ってくるまで、まだ時間はあるかな？
ささっとタイムラインだけを見ておこう。
って思ったけどLINEがたくさん届いてる。
珍しい。成瀬さんからだ。
なになに？ なにがあったの？

『大丈夫ですか？』
『圭さんと何があったんです？』
『玲司さんにも連絡つかなくて』
『鈴さんはまだ一緒にいますか？』
『佐倉さん無事なら連絡ください』

何度も僕や圭介さんの安否を問うメッセージ。
そして送られてきてる1枚の写真。

これは昨日、鈴村さんが撮った僕と圭介さんだ。
何かがあったとしか思えないこの写真をなんで成瀬さんが？
って、こんなことをするのは、ひとりしかいない。

おい！ 鈴村！ なにをしたんだ！
すやすやと気持ちよさそうに寝息を立ててるんじゃない！
また服はだけてるし。
せめて布団ぐらい被っといてよ！

手で殴るのは僕が痛い思いをするから。
両手で枕を掴んで布団の上から思いっきり殴ってやった。

あの写真は誰に送ったの？ 成瀬さんだけなんてありえない。
お義父さんにも送ってない？
もし柳八関が見てたら枕だけじゃ済まないから。

「ちょっ。サクラ。起こし方が激しいよ」

起こしてるんじゃない！
怒ってるんだ！