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恋愛サティスファクション
召しませゴクドー1
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結論。
楓の姐さんは呉服屋さんでした。
とくにアンティーク品を多く扱ってるんだって。
お店の中には綺麗な着物がいっぱい。
僕は着物のことは詳しくない。
だけど、新品みたいに綺麗なアンティークの着物を見れば、丁寧に扱われてるんだろうなってのは分かる。
それと楓って名前はお店の名前で。本名は違う。
呼ぶときは楓和装店の女主人さんなので“楓の姐さん”とか“楓さん”って呼べばいいらしい。
なんか任侠映画っぽくてカッコ良い。
着物をキリッと着こなしてるのも相まって、本物の姐さんみたいだ。
「佐倉、楓の姐さんは本物だぞ」
「えっ? そうなの?」
「元は舞台女優だったんだけど、いわゆるヤクザのイロになって引退するときにこの店もらったんだとよ」
「へぇ。貰えるお店ってクラブみたいな夜のお店とかそういうのなんだと思ってた。こういう呉服屋さんも貰えるんだね」
「この店が取り扱ってるのなんて、高級アンティークか、新品のも作家の一点物とかだろ。金持ちの道楽じゃなきゃやってらんねぇよ」
そういうものなのか。
なんとなく高そうだとは思ってたけど。
そして、そんな高級な着物を僕が今から着るとか。良いのかな。
たしかに花見会に着物なら正装になるだろう。
鈴村さんから簡単に説明を受けた楓さんは圭介さんのことも知ってるみたいで。
「圭君の花嫁さんのお披露目にうちの振り袖を着てもらえるなんて名誉やわ」って喜んでお店の奥で着付けの準備を始めてる。
僕は男で嫁ではないって言ったのに聞いてくれなかった。
とにかく目出度いの一言で全部流された。
うちの親ぐらいの年齢なのに(女性の年齢なので正確には確認していない)パワフルな人だな。
鈴村さんも楓さんのお手伝い。
着せてもらうのは振り袖なんだけど、準備から大変そう。
ってか、僕は女物の着物で確定なんですね。
紋付き袴を貸してもらえるとは思ってなかったけど。
メンズの着物ってないの? あるよね? 僕だって浴衣なら着たことあるし。
そんでもって、僕はというと。
着付けの前に化粧するように言われたので、お借りしたメイク道具一式と玲司君をお供にスタッフルームに。
化粧はあくまでナチュラルに。
髪の毛はウィッグとか使わずにそのままで。
あとで髪飾りも用意してくれるって。
でも、振り袖に合わせたナチュラルメイクは難しくない?
盛って誤魔化せない分、ベースから丁寧に塗り込んでいく。
それを見て玲司君は下手なメイクさんより上手だって褒めてくれた。
それは嬉しい。日々の鍛錬の成果だね。
「さて、化粧は済んだかい? うん。綺麗だ。君はよく化けるね。素体がシンプルなのが良いのか」
鈴村さんが綺麗だと言ってくれるけど。
まったく誉められた気がしないのは何故?
スタッフルームから今度は着付けも出来る和室に案内された。
玲司君は着付けの手伝いが出来ないから外で待ってるって。
ずっと運転してくれてたし、少し休んでてね。
それにしても。このお店、店舗の大きさは普通なんだけど奥が広いな。
普段からこういう着付けやメイクのサービスもやっているのかな。
和室では楓さんが僕を待っててくれた。
「急なお願いで着物を用意していただき、ありがとうございます。僕、着物は浴衣しか着たことなくて、よく分かってないですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ末永くよろしくお願いいたします。本当にお行儀の良い子やねぇ。鈴ちゃんが贔屓にしちゃう気持ちも分かるわぁ」
「別に贔屓になどしていない。馬鹿共の尻拭いをしているだけだ」
その馬鹿共って、圭介さんと玲司君のこと?
「鈴ちゃんはいくつになっても天の邪鬼やねぇ」
「楓さんは黙って仕事をしていれば良いのだよ」
鈴村さんのことを子供扱いしてるし、もしかして楓さんは僕の想像より歳上?
いや、女性の年齢はブラックボックス。触れない方が安全だ。
「はいはい。美人さんが怒ると怖いわぁ。さあ、サクラちゃんもそんな遠くにおったら着付けできないやないの。こっちにいらっしゃい」
「はいっ」
楓の姐さんは呉服屋さんでした。
とくにアンティーク品を多く扱ってるんだって。
お店の中には綺麗な着物がいっぱい。
僕は着物のことは詳しくない。
だけど、新品みたいに綺麗なアンティークの着物を見れば、丁寧に扱われてるんだろうなってのは分かる。
それと楓って名前はお店の名前で。本名は違う。
呼ぶときは楓和装店の女主人さんなので“楓の姐さん”とか“楓さん”って呼べばいいらしい。
なんか任侠映画っぽくてカッコ良い。
着物をキリッと着こなしてるのも相まって、本物の姐さんみたいだ。
「佐倉、楓の姐さんは本物だぞ」
「えっ? そうなの?」
「元は舞台女優だったんだけど、いわゆるヤクザのイロになって引退するときにこの店もらったんだとよ」
「へぇ。貰えるお店ってクラブみたいな夜のお店とかそういうのなんだと思ってた。こういう呉服屋さんも貰えるんだね」
「この店が取り扱ってるのなんて、高級アンティークか、新品のも作家の一点物とかだろ。金持ちの道楽じゃなきゃやってらんねぇよ」
そういうものなのか。
なんとなく高そうだとは思ってたけど。
そして、そんな高級な着物を僕が今から着るとか。良いのかな。
たしかに花見会に着物なら正装になるだろう。
鈴村さんから簡単に説明を受けた楓さんは圭介さんのことも知ってるみたいで。
「圭君の花嫁さんのお披露目にうちの振り袖を着てもらえるなんて名誉やわ」って喜んでお店の奥で着付けの準備を始めてる。
僕は男で嫁ではないって言ったのに聞いてくれなかった。
とにかく目出度いの一言で全部流された。
うちの親ぐらいの年齢なのに(女性の年齢なので正確には確認していない)パワフルな人だな。
鈴村さんも楓さんのお手伝い。
着せてもらうのは振り袖なんだけど、準備から大変そう。
ってか、僕は女物の着物で確定なんですね。
紋付き袴を貸してもらえるとは思ってなかったけど。
メンズの着物ってないの? あるよね? 僕だって浴衣なら着たことあるし。
そんでもって、僕はというと。
着付けの前に化粧するように言われたので、お借りしたメイク道具一式と玲司君をお供にスタッフルームに。
化粧はあくまでナチュラルに。
髪の毛はウィッグとか使わずにそのままで。
あとで髪飾りも用意してくれるって。
でも、振り袖に合わせたナチュラルメイクは難しくない?
盛って誤魔化せない分、ベースから丁寧に塗り込んでいく。
それを見て玲司君は下手なメイクさんより上手だって褒めてくれた。
それは嬉しい。日々の鍛錬の成果だね。
「さて、化粧は済んだかい? うん。綺麗だ。君はよく化けるね。素体がシンプルなのが良いのか」
鈴村さんが綺麗だと言ってくれるけど。
まったく誉められた気がしないのは何故?
スタッフルームから今度は着付けも出来る和室に案内された。
玲司君は着付けの手伝いが出来ないから外で待ってるって。
ずっと運転してくれてたし、少し休んでてね。
それにしても。このお店、店舗の大きさは普通なんだけど奥が広いな。
普段からこういう着付けやメイクのサービスもやっているのかな。
和室では楓さんが僕を待っててくれた。
「急なお願いで着物を用意していただき、ありがとうございます。僕、着物は浴衣しか着たことなくて、よく分かってないですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ末永くよろしくお願いいたします。本当にお行儀の良い子やねぇ。鈴ちゃんが贔屓にしちゃう気持ちも分かるわぁ」
「別に贔屓になどしていない。馬鹿共の尻拭いをしているだけだ」
その馬鹿共って、圭介さんと玲司君のこと?
「鈴ちゃんはいくつになっても天の邪鬼やねぇ」
「楓さんは黙って仕事をしていれば良いのだよ」
鈴村さんのことを子供扱いしてるし、もしかして楓さんは僕の想像より歳上?
いや、女性の年齢はブラックボックス。触れない方が安全だ。
「はいはい。美人さんが怒ると怖いわぁ。さあ、サクラちゃんもそんな遠くにおったら着付けできないやないの。こっちにいらっしゃい」
「はいっ」
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