異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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幻の大陸アトラ編

149 過去からのメッセージ

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 妖精族の生活が落ち着いたのを見届けて俺達は中央大陸へと戻った。
 そして俺たちは大陸アトラの探検と妖精族救出という成果に熱狂した市民に迎えられたのだった。いや神聖アリス教国だけではない。全大陸で大きな反響を巻き起こしていた。

 確かに大きな成果である。
 また、それ以上に特異な状況からの救出劇に人々は沸いた。加えて、神聖アリス教国独自の派遣ではあったが大陸評議会の主要メンバーが参加していたし、さらには南北大陸の都市国家モニの王子、南方諸国からは妖精族のミリィ王女まで参加しての偉業だとして、大いにもてはやされた。
 そこには、海底探検という、いわば一大スペクタクルをリアルタイムの鮮明な映像で見たという事情もあるだろう。
 当然のように、南方諸国の時と同様のビデオ作品の製作と上映の問い合わせが殺到した。こうなっては作るしかないな。これ、建国二周年記念のビデオ作品にしようかな?

  *  *  *

 アトラ大陸の探検の熱狂も収まったある日の夜、俺はひとり女神湯でこの一年を振り返っていた。怒涛の一年だった。
 春に南北大陸へ行き、秋には南方諸国にも行って、さすがにもうないだろうと思ったら冬にまさかのアトラ大陸の探検だ。いや~、やり過ぎ通り越してる。

 ということで、女神湯で疲れをほぐしていた。

「なんで、一人で入ってんのよ」そこへ美鈴が入って来た。
「おお、美鈴か。お疲れ~っ」
「いま、みんなで二周年建国祭をどうするかって話てたのに」
「うん、まぁ、まだ一月あるし、ゆっくりでいいだろ」

 そんなことを言っていたら、ニーナたちも入って来た。
「もう、リュウジったら待ってたのに~っ」とニーナ。
「そうだよ~っ」とミルル。
「そうです」とセシル。
「そうですわ」とセレーネ。
「はい、姉さま」とアルテミス。
「のじゃ」おいっ。

 なんか、嫁達と入るのも久しぶりだよなぁ。

「あら、遅いじゃない?」とアリス。
「遅いわね」とイリス様。
「遅いのだ」とウリス様。
「リュウジ遅い」
「おいっ」
「もとい、リュウジ怖い」とエリス様。って、いつ来たんだよ女神隊。

 ぽっ

「私も混ぜて」そこに女神シリスも来た。
「シリスさん。お疲れ様~っ」ニーナが声をかける。
「ふふ。ありがとう。それにしても、今回は凄い旅になったねぇ」
「わたしたちも、飛行艇のスクリーンで見てました。凄かったね~!」

 そういえば、ずっとビデオを繋いでたからな。神力フォン恐るべし!

「ほとんど、参加出来なくて残念ですわ」

 セレーネが悔しそうに言うが、さすがに冒険に参加するには早いか。リアルな映像が見えるぶん、参加したくなるのも分かるし、実際転移すれば参加出来るんだけど、そこで自分の役目が無ければ意味がないのも確かだ。

「今回は、現場に大勢いても何か出来たわけじゃないからな」と慰める。
「そうですわね。海底探検ですもの」とセレーネ。

「マスターは、探検家?」あ、そういえば、ミリィがいたんだった。殆ど湯船には入らないけど。
「今回だけな。もうないだろ」
「そうかなぁ?」シリスが怪しいことを言う。
「おいおい。もう無しにしてくれよ」
「でも、ストーン遺跡って謎だらけなんだよね」
「そうなんだ」ニーナも気になるようだ。
「あ~、あ~、聞こえない」

ー ざんね~んっ。女神には効きません~っ。
ー アリスそれはないだろ~っ。神界はブラック過ぎるよ。
ー そうよね~。確かに。

「どの辺が?」美鈴もちょっと気になるらしい。
「ううん。そうね~っ」

 考古学の女神シリスは、威厳のあるポーズをとろうとして腕を組むのだが、裸なので威厳はない。てか、エロいだけだ。

「ストーン神国の歴史って、何か変なのよ」
「変?」

 俺も思い返してみる。

「そもそも、この星って水が多いと思わない?」とシリス。
「いや、そんなことないだろ? 水不足で大変だったんだから」あちこちで治水の手伝いをしたからな。
「ああ、それは最近の話ね。それは、大陸が乾いただけだから。ただ、昔は異常なくらいに雨が多かったみたいなのよね」と女神シリス。
「異常に雨が多かった?」
「二千年より前の話ね。アトラ大陸が沈んだ頃よ。ストーン神国建設が始まる前の話」
「ああ、なるほどな。あのころは雨が多かったのか?」
「妖精族の伝説でもあったでしょ?」
「妖精族の? イリィさんが言ってた話か?」
「そう。ヘプタで洪水に遭い、アトラに逃げて来たって。さらにアトラでも洪水に遭ったわけだけど」
「ああ。その話か」

「そのあと、神力が枯渇した」
「ん? そうなのか?」
「そしてストーン神国の建設は中止になった」
「ああ、不干渉主義が台頭したんだよな」
「その後、この星は乾燥化した」
「ん? 大河が枯れたのは、源流だけの話じゃなかったのか?」
「たぶんね」

「そうか。源流を戻しただけじゃ、元に戻らない訳だな」
「ええ。そうね。で、そのあと魔法共生菌が変異した」
「それは、関係あるのか?」
「恐らくね。もともと、妖精族としか共生していないけど、その妖精族がほぼ絶滅したでしょ?」
「ん、ああ。まぁな」
「一連の事件には、少しずつだけど関連がある気がするの」

「そうなのか? まぁ妖精族と俺は何かと関係することが多いけど?」
「そうね」
「そういや、ヘプタってのは?」
「それは分からない。アトラ大陸より低い場所だと思うけど。それらしい場所が見当たらないのよね」

「そんな訳ないだろ」
「それがないのよ。アトラ大陸は、この星でも孤立した場所でしょ? そこへたどり着ける場所の筈なんだけど」
「あ、でも南方諸国にも妖精族はいるんだから、アトラ大陸とセルー島の中間あたりじゃないか?」

「そう思ったんだけどね。でも、そこには深い海しかないのよ」
「アトラより早く水没したなら、低いサンゴ礁とかじゃないか?」
「そうかなぁ? でも、ラームが育つには本来、山がいいんでしょ?」
「あぁ、そうか。ラームのことを考えると、元々妖精族がいた場所が低い筈はないよな。なんで水に追われる歴史なんだろう?」
「そこが謎なのよ」と女神シリス。

 話は尽きないが、それでも俺は久しぶりの露天風呂を堪能していた。
 露天風呂って、どうやっても楽しくなる不思議な空間だ。

 そんな、のんきなことを考えていたからだろうか? それは突然やって来た。

【リュウジよ、これはメッセージ誘導による通信である。】

 突然、頭の中で声がしたのだ。

「うん? 今、何か言った?」俺はアリスに振り向いて聞いた。
「なんのこと?」とアリス。

【リュウジよ、私はこの世界の担当神である。一時間後に長いメッセージ誘導を送るので準備してほしい】

 なんですとぉ~!
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