上 下
89 / 209
第15章 ボクたちの前世

087 紅姫、黄花、青紫の神器

しおりを挟む
17日目 AM  11:00  朝
《2日に一度の会議: 偶数日の予定、本日は無し。

 一番権利者: 真々美。
  アリムは目を覚ました。》





絵美
「なら、どうして?
 しかも、名前を呼び捨てにするなんて。」

 絵美は、名前を呼び捨てされて、不機嫌ふきげんさを隠しきれなかった。

アリム
「知っているひとと似ていたので、思わず声に出ました。
 お気にさわったなら、お許しください。」

真々美
「絵美、すまない。
 わたしの顔に免じて、許して欲しい。」

絵美
「真々美、逃がさないように押さえてて。
 すぐに戻るわ。」

 絵美は部屋から出て行った。

 しばらくすると、戻ってきた。
 カセイダードスーツ 防着ぼうちゃくモードの試作品を着て、シルバーソードを抜いて、アリムの喉元のどもとに近づけた。

☆ 女王
☆ 「そして、カセイダードスーツの試作品です。
☆  最終的には、水・火・音・電・防の5モード《青・赤・黒・黄色・白》に変化できる予定ですが、試作品ですから、防御モードの1形態《白》だけです。
☆ 
☆ 061 13日目 女王の想い 絵美、真々美さん へ 参照

冬香
「絵美様、それはやりすぎでは?」

オルア
「絵美様、ゆるしてください。
 わたしがしかりますから。」

真々美
「アリム、知らないだろうが、絵美のことを呼び捨てにしてもゆるされる男性は、絵美のお父様とりゅうくんとサークだけだ。」

アリム
「やはり、この剣は、シルバーソードの試作品ですね。
 りゅうゴットは、白沢絵美様のために、作ったのですね。
 すると、その衣装は、カセイダードスーツ 防着ぼうちゃくモードの試作品ですか?」

絵美
「あなた、どこのスパイなの?
 言わないなら、すわよ。」

アリム
「白沢絵美様にし殺されるなら、ぜいたくな死に方ですね。
 オルア、真々美、冬香、 迷惑をかけて、ごめんね。

 御手おてに掛けるのは、わたしだけにしてもらえますか?」

 絵美は、シルバーソードをさやに戻した。

絵美
「真々美、冬香さん、アリムさんを取り押さえて。」

 オルアは、戦闘態勢で身構えた。

絵美
「大丈夫よ、オルアさん。
 不安なら、オルアさんが見てくれる。

 くわしい情報を見るときは、目をのぞき込む必要が有るって、冬香さんから学んだわよね。
 アリムさんの前世の情報を代わりにのぞいてくれるかな?」

オルア
「わかりました。
 アリム、じっとしていてね。」

 オルアは、アリムの目をのぞき込んだ。

オルア
「前世の情報は、・・・
 ああ、ここね。

 ひとつ前の前世は、
 Alim Victoryroad Walker
 です。

 前世も、アリムだったのね。
 すごい偶然ね。」

絵美
「オルアさん、その前は?」

オルア
「その前の前世は、
 Red Soldier Alim
 です。

 わあ、見ている私も恥ずかしくなってきた。」

アリム
「オルア、もう言わないで、恥ずかしいよ。」

絵美
「その前は?」

オルア
「竜は、分かるけど、次はなんて読むのかな。
 豪快ごうかいごうって書いてあります。」

絵美
「やっぱりね。
 わたしのカセイダード隊員番号は?
 答えて、アリムさん。」

アリム
「358だったと思う。」

絵美
りゅうくん、あなた、竜くんの転生体なのね。
 でも、竜くんは理系だった。

 だから、正性知識を1800まで覚えようとするはずないのよ。
 だれに習ったの?」

アリム《竜 豪の転生体》
「サークです。
 カセイダード大学 人文系 首席のサークです。
 1つ前の前世で習いました。
 使用する訓練というか精神修養せいしんしゅうようは、ナームからです。」

絵美
「ある程度、なぞが解けたわ。
 もう1つ質問よ。

 わたしは、もうすぐ死ぬのですか?
 死因しいんは?」

アリム
「答えたくありません。」

絵美
「答えて!」

アリム
「白沢絵美様がサークと楽しそうに笑っているところを見て、嫉妬しっとのあまり、撃ち殺してしまいました。」

絵美
「それは、変ね。
 竜くんは私のことなんて興味も関心も無いはずだけれど。」

アリム
「精一杯、格好をつけて、関心がないふりをしていました。
 絵美に気付かれないように、いつも遠くから見てました。」

絵美
「えっ、そうだったの。
 知らなかったなあ。
 そんなに私のことが好きだったの。」

アリム
「はい、大好きです。
 素直になれなくて、すみません。」

絵美
「えー、そうなんだあ、わたしの片思いじゃなかったのよね。
 帰ったら、押さなきゃ。
 あ、そう言えば、このカセイダードスーツとシルバーソードも竜くんが泣きながら急いで作ってくれたのよ。
 サアが言うには、
  「作らないなら絵美と会わせない」
って言ったら、すぐに作ったんだって。」

 絵美は、身体をくねくねさせて、うれしそうにしている。
 それとは、対照的に、オルアは暗黒のオーラをまとっていた。

オルア
「真々美、冬香、アリムをそのまま押さえておいてね。

 はー、烈風れっぷう正拳せいけんき 当て留めあてどめ。」

 当て留めでも、アリムにはかなり効いたようで、胃液いえきいた。

オルア
「この浮気者うわきもの。」

アリム
「3つ前の前世のことを言われても、そのころは出会って無いじゃないか?」

オルア
「わたしを探す気が無かったっていうの?
 ひどすぎるわ。
 薄情者はくじょうもの

 うわーん、こんなひとだとは思わなかった。」

 オルアは、座り込んで泣いてしまった。

アリム
「オルア、その今はオルアが一番好きだから許してください。」

オルア
「いまは? とは、どういう意味?
 3つ先の来世まで、わたしが好きだと言いなさい。
 そうすれば、今回はゆるすわ。」

アリム
「現世と3つ先の来世まで、オルアが大好きです。」

オルア
「そう? じゃあ、約束してもらうわ。」

 オルアは、アリムに口づけをした。

オルア
「3つ先の来世までナイトバインドします。
 受けますか?」

アリム
「はい、受けます。」

オルア
「よろしい。」

アリム
「でも、ボクが女性に生まれたり、不細工ぶさいくだったり、年の差が大きすぎたら、どうするのですか?」

オルア
「それは、心配しないで。
 アリムが転生するときは追いかけるから、大丈夫よ。」

アリム
「そうですか?
 では、よろしくお願いいたします。」

オルア
「よし、これにて、1件落着ね。」

真々美、冬香 こころの声
『『逆にオルアが不細工に転生したときは、どうするんだろうか?
 いや、とりあえず、オルアの機嫌が直ったから良しとしよう。』』

絵美
「アリムに、この際、教えて欲しいんだけれど、竜くんて、どうやったら、デートに来ると思いますか?」

アリム
「次のセリフを言ってくれませんか?

 毎日、いそがしいのね。
 でも、世界で一番の格好かっこういい男性なら、彼女とのデートの時間は最優先で割り当てすると思うんだけどなあ?

 と言えば、時間をあけますよ。」

絵美
「それでいいの?
 簡単ね。
 でも、どうして、デートに誘ってくれないんだろう。」

アリム
「恋愛経験値が、幼稚園初等レベルしかないので、「デートに誘う」というコマンドが無いのです。」

絵美
「それは、予想外ね。
 理系って、ひととの関わり方を知らないので、カセイダード大学のカリキュラムも変えなきゃね。」

アリム
「人文基本3学問は、理系にも習わせた方が良いと思います。
 サークから、まず学ばされましたから。」

絵美
「いい方法ね。
 ほかには?」

アリム
「オルアさんの知恵を借りる方が良いと考えます。」

オルア
「えっ、わたし?」

アリム
「うん、そうなんだ。
 ボクはオルアさんから、
   おはようからおやすみまで一緒にいます!
って、宣言してもらって、とてもうれしかったんだ。

 だって、一緒にいることが自然になるようにしてくれたんだよね。

 オルアさんは、ボクにとって人生の救命きゅうめいボートだよ。」

オルア
「えっ? そうなの?
 もう早く言ってよ。

 だったら、もっと一緒に居る時間を増やせたのに。」

 オルアは本当に上機嫌だ。

真々美、冬香 こころの声
『『オルアが、ストーカーになりそうだ。』』

アリム
「じゃあ、オルアは、これからもボクといっしょに居てくれますか?」

オルア
「もちろんよう。」

 オルアは、アリムの腕に抱きついた。

アリム
「それでね、オルアにお願いがあるんだ。」

オルア
「なになに、何でも言って。」

アリム
「ボクはオルアのおかげで、とってもしあわせなんだ。」

オルア
「うんうん、それで?」

アリム
「3つ前の前世のボクも幸せにしてくれないかな?」

オルア
「どうして欲しいの?」

アリム
「白沢絵美様に、ボクのような恋愛経験値が足りない男性をリードするテクニックを伝授して欲しいんだ。
 でも、ダメかな? 機密事項かな?」

オルア
「えー、アリムが頼むなら、そうしたいけれど。
 絵美様になにかを教えるなんて、思い上がりもいいところよね。」

絵美
「オルアさん、あなたを恋愛れんあい師匠ししょうと呼ばせてください。」

オルア
「絵美様に、そんな風に言われるなんて、光栄こうえいです。
 向こうで、お話しませんか?」

絵美
「ありがとう、オルアさん。
 じゃあ、真々美、冬香さん、ちょっとはずすわね。」

オルア
「アリム、じゃあ、行ってくるね。」

アリム
「オルア、ちょっと待ってくれる?
 これから、美術館のような宝物庫のような場所に行きたいんだ。
 真々美と冬香にお願いして、行ってきてもいいかな?」

オルア
「なにか大事な用事なのね。
 がんばってね。

 わたしは絵美様と竜様の仲がうまく発展するように、絵美様との作戦会議を頑張るわ。」

アリム
「オルア、ありがとう。」

オルア
「良いってことよ。 じゃあね、真々美、冬香、アリム。」

 絵美とオルアは、嵐のように去って行った。




 なんかつかれた真々美と冬香であったが、気を取り直そうとしていた。

真々美
「それで、アリムが行きたい場所は、どんなところなんだ。」

アリム
「ルナが言うには 重要な神器とも言えるアイテムがあるそうなんだ。
 それは美術品のようなものなんだけれど、見る人が見たらわかるんだけど、
 ほかの人には燃やすゴミにしか見えないそうなので、早く回収しなきゃダメだそうなんだ。

 この近くに来ているんだって、心当たりはありますか?」

真々美
「うーん、燃えるごみのような神器かあ。
 もしかすると、あれかな?
 冬香?」

冬香
「そうね、モンテハート大公爵の遺品の中にあるのかもしれないわ。」

 冬香はメラニィに連絡して、宝物倉庫の前にある準備室に入る許可を得た。

冬香
「メラニィさんもシュウピンさんも立ち会えないけれど、わたしたち3人が入ることは手配連絡してくれたわ。
 持ち出したいものがあれば、持ち出してもいいけれど何を持ち出したか?は、書面に残してほしいって。」

真々美
「ありがとう、冬香。
 アリム、さあ見に行こうか?

 お目当ての物でもあるのか?」

アリム
「紅姫、黄花、青紫の神器だそうだよ。
 今は、燃やすごみのようなガラクタにしか見えないけれど、魂だけでも回収した方が良いそうです。」

真々美
「アリムに見てもらうことにして、正解だったな。
 これも、アリムの前世の知識からか?」

アリム
「ううん、真々美、冬香、オルアが前世で使用していたものだよ。
 気になるものはなかった?」

冬香
「紅姫、黄花おうか、青紫が私たちの前世の名前だとは夢にも思ってなかったわ。
 でも、前世を知った今なら、感じ取れるものがあるのかしら?」

アリム
「見て触ったら、分かるかもしれないそうだよ。
 ただし、見るだけでは無理だって。」

冬香
「見て触りましょうか? 真々美。」

真々美
「そうだな。」





 宝物ほうもつ倉庫そうこの準備室に着いた。

??? 思念波
『紅姫! 紅姫!
 来てくれたのか?

 わたしに気付いてくれ。』

 アリムは、赤い短刀の前にいた。

アリム 
「これかなあ?
 形はよく似てるんだけど、こんなに小さくはなかったなあ。」

??? 思念波
『小僧! いや、小娘か?
 どっちでもいい、そこをどけ?
 わたしは、紅姫に用があるんだ。
 お前はじゃまだ。』

真々美
「アリム、お目当てのものはあったか?」

アリム
「ざっと、見た中では、これが紅姫の愛刀 【妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる】だと思うんだ。
 ただ、小さすぎるし、細すぎるし、迷うんだけれど。」

妖刀斬 紅丸 思念波
『おみそれしました。 どこぞの名家の御曹司おんぞうしでしょうか? それとも、お嬢様じょうさまでしょうか?
 私に気づいていただけるとは、ただものとは思いません。
 どうか、どうか、紅姫に私をにぎるようにおつたえください。』
 
真々美
「どうした? アリム。」

アリム
「なんだか、ものすごい手のひら返しをされて態度たいどを変えられたような気がする。
 まあ良い方向にというか、尊重そんちょうする方向だから、いいんだろうけれど。

 この細くて小さい刀は、紅姫の愛刀 【妖刀斬 紅丸】で間違いないようだ 。

 長い年月で、魔力がれてしまって、声が出せないのだと思う。」

妖刀斬 紅丸 思念波
『おっしゃるとうりでございまする。
 どうか 紅姫に私を握るように おっしゃってください。』

真々美
「アリムの小説が、私たちの前世の話だったとは、今も驚きだな。
 それで? 私はどうすればいい?」

アリム
「左手で、剣の握りの部分を、右手でさやの一周巻いてある金属部分を持ってくれますか?」

真々美
「こうだろうか?」

 真々美は壊さないように、やさしく 【妖刀斬 紅丸】 を持った。

アリム
「その場所で合っています。
 とても強力な武器なので、真々美の後ろに回ってもいいですか?」

真々美
「ああ、構わないぞ。」

アリム
「剣のさやの剣のつばに近い方にある、この丸い突起部分なんですが、これは、抜刀ばっとうするときに、敵に叩きつけて攻撃するためにあります。」

妖刀斬 紅丸 思念波
『おっしゃるとうりでございまする。
 人を見かけで判断して申し訳ない。
 あなた様は かなりの博識でいらっしゃる。
 もしかして、どこぞの優秀な剣の道の者でいらっしゃるでしょうか?』

真々美
「だから、わたしの後ろに来たいと言ったのか?」

アリム
「そうなんだ。
 真々美が剣を抜いたと同時に前世の記憶がよみがえって、もし僕が目の前にいたら、目の前にいる僕を攻撃してしまうかもしれないから。」

真々美
「攻撃していたらどうなる?」

アリム
「 【妖刀斬 紅丸】 は、刀身だけでなく、剣のさやも強力な武器なんだ。
 まるい突起部分は遠心力が乗せられるから、僕なんか即死だよ。
 それに、 【妖刀斬 紅丸】の刀身は、触れただけで斬ってしまうんだ。」

真々美
「素晴らしい名刀だな。
 アリムは本当に物知りだな。」

アリム
「ルナが教えてくれたんだよ。
 それに、悪霊や風など実体のないものも斬ることが出来るんだって!
 しかも、本来の姿に戻ったら、声を出して話すこともできる。
頭が良くて賢い、頼りになる最高の相棒だったそうだよ。」

妖刀斬 紅丸 思念波
『おっしゃるとうりでございまする。
 ルナ様のお知り合いでございましたか?
 ルナ様、いや月夜様はいま、何処いずこに?』

 アリムは、【妖刀斬 紅丸】をじっと見ながら話しかけた。

アリム
「ごめんね。
 さっきから色々と話しかけてくれているような気がするんだけれど、ボクが聞き取りできる周波数範囲の外の思念波みたいで、なにも聞こえないんだ。
 がっかりさせて、ごめんね。

 紅姫の転生体である真々美が魔力を込めたら、普通に話すことができると聞いているので、もう少し待っててね。 無視しているわけじゃないから、気を悪くしないでね。」

冬香
「ねえ、もしかして、ふたりはさっきから、その短刀と話をしているの?」

アリム
「この短刀について話をしているけれど、この短刀と話すことはできていないんだ。
 テレパシーを感じるけれど、ボクが聞き取れる範囲の外なんだ。

 もしかして、冬香は聞こえるの?」

冬香
「この短刀からは聞こえないけれど、なにかから呼ばれている気はするのよ。」

アリム
「やっぱり、そうなんだね。
 紅丸が目覚めてくれたら、黄花と青紫の神器の場所を教えてくれるはずなんだ。
 だから、もう少し、待っててくれますか?」

冬香
「ええ、大丈夫よ。
 待っているわ。
 あと、どれくらい掛かりそう?」

アリム
「真々美が上手く魔力を伝えられたら、10分後から30分後くらいかな?」

冬香
「かなり幅が有るのね。」

アリム
「長い間、絶食ぜっしょくしていた人に食事をしてもらうようなものだから、すこしずつらさないとこわしてしまうからね。」

冬香
「まるで、妖刀ようとうね。」

アリム
「そうだよ。
 妖刀の中でも最上級で、意思がある正義の妖刀なんだ。」

冬香
「それは、楽しみね。
 邪魔じゃまして、ごめんなさい。

 少しはずして休憩きゅうけいしても良いかしら。」

アリム
「気が回らなくて、ごめんね。
 うん、休憩してきてくれると助かる。
 どれくらい待たせるか分からないからね。」

冬香
「じゃあ、できたら、呼んでね。」

真々美
「ああ、すまない、冬香。」

アリム
「真々美、それじゃあ、両手から少しずつ魔力を流してくれますか?」

真々美
「こんな感じかな?」

アリム
「そうですね。
 そして、左手から紅丸、紅丸から右手の方向に電流を流すような感じで。」

真々美
「電流と電子の流れは逆だよな。」

アリム
「そうだよね、混乱するよね。
 性魔力のトゥートを流す感じでお願いします。」

真々美
「どうだろうか?」

妖刀斬 紅丸 思念波
『おお、何百年ぶりであろうか?
 紅姫の魔力が私の中を駆け巡るのは、もっと流してくれ。』

 10分経過・・・

真々美
「なんだか、手がくたびれてきた。」

妖刀斬 紅丸 思念波
『ふう、だいぶ慣れてきたな。 もっと強く流してくれ。』

アリム
「そろそろかなあ?
 真々美、少しずつ握るちからと流す魔力を増やしてくれますか?」

真々美
「どれくらいまで強く握っていいんだ。」

アリム
「刀が折れないくらいで、出来るだけ強く。」

真々美
「もっと具体的に言ってくれないか?」

アリム
「真々美がボクの刀を握って、痛いと言わせた半分くらいのちからでお願いします。」

真々美
「それは、分かりやすいたとえだ。
 じゃあ、これぐらいだな。」

 真々美は両手で強く握るとともに、魔力を強く流した。

妖刀斬 紅丸
「い、痛い、紅姫、力が強すぎる。」

真々美
「本当に話す剣なんだな。」

アリム
「ご気分はいかがですか?
 紅丸さん。」

妖刀斬 紅丸
「おお、おぼっちゃま、いや、お嬢様、どちらがよろしゅうございますか?」

アリム
「紅丸さんが呼びやすい方でいいよ。」

紅丸
「では、お嬢様。
 燃やされる危ないところを救っていただき、感謝の念に耐えません。

 それにしても、紅姫、私の声が聞こえなかったのか?」

真々美
「まったく、聞こえなかった。」

紅丸
「なんということじゃ。」

真々美
「ゆるせ、紅丸。
 こうして、アリムの判断を待っただけでも上出来と思うてくれ。」

紅丸
「お嬢様は、アリム様とおっしゃるのですな。
 これから、よろしくお願い申し上げます。」

アリム
「よろしくね。 紅丸さん。」

真々美 こころの声
『アリムは男性だということを後で教えることにしよう。』

真々美
「冬香を呼びに行こうか?」

11:35





冬香
「真々美、見つかったの?」

真々美
「ああ、腰に差している刀だ。」

冬香
「ずいぶん長くて大きいわね。 こんなのあったかしら?」

真々美
「あの短い刀が大きくなったんだ。」

紅丸
「拙者、紅丸べにまると申す。 もしかして、黄花殿か?」

冬香
「前世は、黄花おうかと呼ばれる医者だったそうです。」

紅丸
「黄花殿の相棒である、聴診丸ちょうしんまるも向こうで待っておりますぞ。
 案内いたしまする。 紅姫、わたしの言う方向に行ってくれ。」

真々美
「ああ、この方向で良いか?」

紅丸
「分かっておるではないか?
 黄花殿、ここでござる。」

 日本酒のおちょこのように小さい糸電話のようなものがあった。

冬香
「もしかして、聴診器なの?
 こんなに汚れるまで使い続けていたのね。」

紅丸
「黄花殿は、この糸電話の片方を患者の胸に当て、もう片方を自分の耳に当てて、患者と会話をしておられた。 患者自身が言葉に出来ぬことを聞くことができると話されていました。
 そして、風呂に入るときでさえ、肌身離さず持ち歩いておられました。」

冬香
「わたしが聴診器を持ち歩かないと落ち着かないのは、前世からだったのね。
 聴診丸、待たせてごめんね。
 聴診丸?」

紅丸
「残念ながら、聴診丸には意志はござらぬ。
 それでも、黄花殿はいつも、おっしゃられていた。
  聴診丸ちょうしんまる、ありがとう。
  あなたのおかげで、また患者を救えたわ。
って、それはそれは優しい笑みを浮かべて、美しい声でねぎらっておられた。」

冬香
「じゃあ、お守りとして、持ち歩くことにするわ。」

紅丸
「そうしてやってくだされ。
 そういえば、青紫は何処いずこでござるか?」

アリム
「ほかの用事で、ここにはいないよ。
 もしかして、青紫の神器の場所も分かるの?」

紅丸
「当然である。
 紅姫、行ってくれ。」

真々美
「ああ、ここか?」

紅丸
「目の前にあるソロバンが青紫の神器、【音色ねいろ算盤そろばん】ですじゃ。
 青紫は商売を始める前に、いつもソロバンで計算をされていた。
 わたしには良く分からないがソロバンの音色で、その商売の良し悪し、儲かるか儲からないかではなくて、世のため人のためになるかならないかが分かると話されていた。
 青紫の判断のおかげで、人の世を踏み外したものも多くが救われておった。

 もちろん、儲けることを第一とされていたが利益が少なくても、多くの人が救われるような商売を優先させておった。」

アリム
「じゃあ、このソロバンはボクが持ち帰ってオルアに渡してもいいですか?」

冬香
「良いわね。」

真々美
「ぜひ、そうしてやってくれ。」

紅丸
「今日は、まことにめでたい日じゃ。
 紅姫が戦って、皆を守り、黄花の医術、青紫の商才が集まることで、なにも困ることは無く、無双で無敵状態だった。
 おお、ルナ様、すなわち月夜様にもお会いできるのでしょうか?」

アリム
「ルナは他の世界にいるんだって、真々美たち、つまり、紅姫たちに別れの挨拶をして、3種の神器である紅丸たちの探し方をボクに教えてくれて、どこかに帰ってしまわれました。」

紅丸
「そうでござるか。
 月夜殿にお会いできないことは悲しいが、拙者たちのことを気に掛けてくださっていたとは、拙者、涙が止まらぬでござる。 月夜殿はお元気そうでしたか?」

アリム
「とっても、明るくて元気そうだったよ。」

紅丸
「それは、よかったでござる。
 ということは、月夜殿は、アリム様に後を託されたのですね。

 月夜殿よりもルナ様の方がアリム様に近い響きですな。
 ルナ様に向けていた忠誠をアリム様に向けることに致します。

 これから、よろしくお願いいたしまする、アリム様。」

アリム
「うん、よろしくね。 紅丸さん。」

紅丸
「もったいのうござる、ルナ様と同じように、紅丸と呼び捨てでお願いします。」

アリム
「じゃあ、よろしくね。 紅丸。」

紅丸
御意ぎょい
 紅姫、これからはアリム様のためにちからを尽くそうぞ。」

真々美
「そうだな、それと現世の名前もそのうち、覚えるようにしてくれ。」

紅丸
「紅姫と呼んではいかんのか?」

 なんだか寂しそうだ。

真々美
「真々美と言う名も、覚えてくれると嬉しいな。」

紅丸
「どのような文字を書きますか?」

真々美
まことまことうつくしいと書いて、真々美だ。」

紅丸
「それも、良い名ですな。
 紅姫は真々美様と覚えておきまする。」

冬香
「時代劇が好きな絵美様と話が合いそうね。」

アリム
「真々美、冬香、時間を割いてくれてありがとう。」

真々美、冬香
「「こちらこそありがとう。」」

 真々美、冬香、アリムは持ち出した宝物を書面に書いて、宝物倉庫の準備室を後にした。

11:55

【まめ知識】
  030 アリムさんの小説を読ませて!
  030-2 アリムさんの小説 「男の娘のボクは万能で最強です。」
で、話題にあがる小説と関係しています。

関連作品
 仲間の美女3人と万能で最強のちからを手に入れました。神様にボクの「異世界アイデア」を採用された対価です。
 https://kakuyomu.jp/works/16818093078010169705
をお読みいただければ幸いです。

 紅姫、黄花、青紫の神器については、

妖刀斬ようとうざん 紅丸べにまる
  【011 紅姫に会おう(3)妖刀斬 紅丸】をお読みください。

聴診丸ちょうしんまる
  【017 黄花はどこだ(3)たすけて、聴診丸】をお読みください。

音色ねいろ算盤そろばん
  【030 青紫の商才(10)音色のソロバン】をお読みください。


【読者様へ】

 あなたの10秒で、この作品にパワーをください。
「お気に入りに追加」 【 ↓ 】 お願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで日間・週間・月間総合1位獲得!ありがとうございます。 社畜として働き、いつものように寝て起きると、俺はゲーム『ブレイブクエストファンタジー』とよく似た世界のモブ『ゲット』に転生していた。俺は物語序盤で盗賊に襲われて死ぬ運命だ。しかも主人公のダストは俺を手下のようにこき使う。 「主人公にこき使われるのはもうごめんだ!死ぬのもごめんだ!俺がゲームのストーリーを覆してやる!」 幼いころから努力を続けていると、ゲームヒロインが俺に好意を寄せている? いや、気のせいだ。俺はしょせんモブ! 今は死亡フラグを解決する!そして次のステップに進む! 一方、同じく転生したダストは主人公キャラを利用して成り上がろうとするが、ダンジョンのお宝はすでに無く、仲間にするはずの美人キャラには見限られ、努力を嫌ったことでどんどん衰退していく。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

異世界で勇者をやって帰ってきましたが、隣の四姉妹の様子がおかしいんですけど?

レオナール D
ファンタジー
異世界に召喚されて魔王を倒す……そんなありふれた冒険を終えた主人公・八雲勇治は日本へと帰還した。 異世界に残って英雄として暮らし、お姫様と結婚したり、ハーレムを築くことだってできたというのに、あえて日本に帰ることを選択した。その理由は家族同然に付き合っている隣の四姉妹と再会するためである。 隣に住んでいる日下部家の四姉妹には子供の頃から世話になっており、恩返しがしたい、これからも見守ってあげたいと思っていたのだ。 だが……帰還した勇治に次々と襲いかかってくるのは四姉妹のハニートラップ? 奇跡としか思えないようなラッキースケベの連続だった。 おまけに、四姉妹は勇治と同じようにおかしな事情を抱えているようで……? はたして、勇治と四姉妹はこれからも平穏な日常を送ることができるのだろうか!? 

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

処理中です...