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第2章 女神さまの慈悲 スリーカー(1回限定)
007 治療と若返りの薬
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オルア:
「では、朝食も済んだから、わたしの部屋に来てください。」
アリム:
「昨日、会ったばかりで早すぎない?」
オルア:
「水回りに対する考え方を確認することは早い目が良いでしょう。」
アリム:
「そうですね。」
『期待した自分がはずかしい。』
オルアはやさしく微笑んだあと、こう思った。
『よしよし、順調にわたしを意識しているな。
てつなぎ、見つめあい、ハグ、キス、ナイトバインド
少しずつ進めていこう。』
◇
オルアは、アリムを部屋に招き入れて、水回りを見せた。
トイレ、風呂場、洗濯機置き場、台所、洗面所、ベランダに案内して、排水溝のフタを外して、中の状態まで見せた。
オルア:
「どうですか?」
アリム:
「とっても綺麗ですね。 わたしは、ここまで掃除しません。」
オルア:
「ふむ、あとで貴方の部屋も見せてくださいね。」
アリム:
「はい。 お手柔らかにお願いします。」
(注)
部屋に入ってから1日も経っていないから汚れる訳がないのだが、家事能力を測るために、全部屋同じ程度に汚してあった。
オルアは、アリムに椅子に座るようにうながした。
そして、テーブルの上に、小さな皿を出して、1粒の薬を出した。
アリム:
「これは? まさか、自決用の毒ですか?」
オルア:
「ブッブー、不正解です。
若返りの薬です。」
アリム:
「まさか、子供から抽出した悪魔の薬。」
オルア:
「そんな訳ないでしょう。
ひとり若返らせても、ふとり老けさせたら、差し引きゼロで無意味です。
カセイダード王国の科学力があればたいていのことは出来ます。
栄養食品、サプリメントの延長のようなものです。
クラスター限定使用です。」
アリム:
「わたしは、そのクラスターとかいう資格は知らないです。」
オルア:
「心技体が一定以上に達した者に贈られる称号ですね。
わたしが指導すれば、2~3年後に合格するでしょう。
一気に進めたいので、質問は待ってくれますか?」
アリム:
「はい、お願いします。」
オルア:
「まず、あなたには、30才若返っていただきます。
これは若返りの薬で、1粒で10年若返ります。
ただし、個人差があるので、ひとによっては、さらに若返る危険があります。
そして、老化する薬の需要は無いため、開発されていません。
だから、1粒ずつ飲んで、効果がでるまで1~3日間を待ちます。
ここまでで、質問は?」
アリム:
「その最初の1粒がこれで、30才若返って、20才代の身体に戻るまで飲むですね。
もし、効果が少ない場合は、3粒ではなく5粒飲むことになるかも知れないということですか?」
オルア:
「そうです。20才代の身体に戻って若返っていだだきます。
医師の予想では、アリムさんは通常より多く若返る可能性が高いそうです。」
アリム:
「それは、なぜですか?」
オルア:
「実年齢より、かなり若く見えるからです。
つぎに治療ですが、若返ったあとで行います。
色盲に関しての赤錐体と緑錐体の遺伝子は、私の遺伝子がコピペして上書きされます。
脳内にインストールする処理プログラムは、わたしの処理プログラムを7段階くらいで、上書きされます。
その前に、現行のアリムさんの処理プログラムを万が一に備えてバックアップします。
インプットとアウトプットの仕様を確認してタイプが異なる場合は、同タイプの方の処理プログラムをインストールすることになります。
わたしのプログラムが適用できる場合は、経過観察をわたしの経験で確認できるから進行が楽になります。
」
アリム:
「わたしが気をつけることは?」
オルア:
「わたしを信じて、指示通りにすること。
疑問点や不安があれば聞くこと。
わたしが信じられなくなった場合は、医師に告げてくだされば、他の者が担当します。
つまり、サポートがわたしではなくなるので、お別れです。」
アリム:
「成功しますよね。 危険は無いですか?」
オルア:
「アリムさんがおひとりで周囲に誰もいないときが危険ですね。
なにかあったとき誰も発見できなくなります。
おはようからおやすみまで、わたしと一緒にいれば安全ですね。」
アリム:
「それは、お風呂やトイレの時もですか?」
オルア:
「わたしと一緒にお風呂に入りたいですか?」
アリム:
「あなたがそうしても良いと思うくらい、わたしを好きになってくれたら入りたいです。」
オルア:
「今すぐは無理ですね。
前向きに考えておきますので、期待して待っててくださいね。」
オルア こころの声:
『アリムさんの言質を取りました。
最高のタイミングと演出を用意しよう。』
アリム:
「はい。待ってます。」
『少しでも長く、オルアさんのことを好きでいられますように。』
アリムは、天に祈った。
オルア:
「では、若返り薬の最初の1粒をお飲みください。」
アリム:
「お水を頂けますか?」
オルア:
「あっ、ごめん、すぐに用意するね。」
◇
司会の部屋に、面接を担当した2人組と医師が来ている。
司会:
「面接、ご苦労だった。」
2人組:
「ありがとうございます。」
司会:
「受けた印象は?」
2人組は顔を見合わせる。
お互いに相手に言わせようとしている。
どちらも言いたくないようだ。
あきらめた責任者が答える。
面接責任者:
「わたしとわたしの家族、親族、友人のパートナーにすることは拒否します。」
司会:
「素晴らしい答えだな。
理由は言いにくいだろうから、感じたことを教えてください。」
面接責任者:
「会話履歴が汚すぎます。
ここまで裏表がある人間がいると知ると人間不信になります。
ライバルを蹴落とすために、仲間外れにする、嫌がらせをする、悪評を流す、悪いうわさ話を創作する。
いじめの的を決めて団結しようとする。
自分が被害者で無ければ、他人が犠牲になっても仕方ない。
他人を侮辱して弱らせて支配しようとする。
性欲に忠実で、【女性】を「性の対象か性の対象外か」でしか見ていない。
自己肯定感が低いわりに自尊心が高く傲慢で、運良く手に入れた社会的地位や合格した大学などのランクで他人を見下し、値踏みし、言うことを聞かせるために、暴言、暴力、風評被害など、関わりたくないです。」
司会:
「それでも、ひとりくらいは良さそうなのがいると思うが、いないのか?」
面接責任者:
「一晩なかよくして、さよならする習慣はないです。
非常食にさえなりませんね。」
司会:
「イケメンや美男子、美少年は何人かいたと思うが?」
面接責任者:
「毒キノコを食べる方がまだマシですね。」
医師:
「健康そうな個体とか、鍛え上げられた個体はいませんか?」
面接責任者:
「関心無いので、面接動画をご覧になって、ご確認お願いします。」
司会:
「いや、すまない。 相当、嫌な思いをしたようだな。 ゆっくり休んでくれ。」
面接責任者:
「たまった皿洗いや洗濯物を片づける方が有意義でした。
有給休暇を1週間ください。」
司会:
「面接が丸1日だから、その3倍の3日間の有給休暇を取ってくれ。
結果発表などの事後処理は済ませておく。
急ぎの案件については、机の上に紙に書いて貼っておいてくれ。」
面接責任者と面接準備者:
「ありがとうございます。
休み明けは新しい気持ちで頑張れそうです。
3日間でたまった家事を終わらせるぞ。」
司会、医師:
「そんなに嫌だったのか?」
2人は仕方なく、面接の様子を2倍速で手分けして確認した。
司会:
「良し、オルアにも手伝わせよう。 呼び出せ。」
医師:
「はい、よろこんで。」
オルア:
「アリムさんが捨てられる子犬のような目で見つめてきてつらかったです。
若返り薬の経過観察があるので、となりの部屋に来てもらっています。」
そう言って、オルアは見守り画面を手元に置いた。
3人は、面接の動画を見て気持ち悪くなった。
司会:
「こいつらは、面接官の目ではなく、どこを見ているんだ?」
医師:
「胸の谷間と足と、顔をなめるように見ていますね。」
オルア:
「胸を見るなとは言いませんが、アリムさんのように理性で目を合わせようとする努力が欲しいですね。」
司会:
「自慢話が多いな。
大学教授、公務員や一部上場企業の役付けだとか。」
医師:
「ベッドテクニックの技術自慢は最低ですね。
10から20程度の知識しか知らないくせに。」
オルア:
「30までの知識が限度でしょうね。
男の人や美女でさえ、200までの正性知識を覚えているのに。
無知って最大のしあわせかもしれませんね。」
司会: 「いっしょに暮らすメリットがないな。」
医師: 「ひとりで本を読む方がマシですね。」
オルア: 「そう考えると、アリムさんは大当たりですね。」
司会: 「良さそうか?」
医師: 「こころの傷が深そうですが、どうですか?」
オルア:
「アリムさんの部屋を見たところ、水回りの掃除と料理などは許容範囲ですね。」
司会: 「不満は、なんだ。」
医師: 「見えないところの清掃に気を回す余裕が無い様子ですか?」
オルア:
「たとえば、おふろの排水溝の髪の毛トラップと浴槽は掃除するのですが、お風呂の壁や天井の汚れは気にしないそうです。」
司会: 「まあ、汚いところを掃除してくれれば、いいじゃないか?」
医師: 「そうですよ。 神経質なくらいに綺麗好きだと、大変ですよ。」
オルア: 「だから、許容範囲内です。」
司会と医師は心の中で叫んだ!
『贅沢言うな。代わってくれーーーー』
◇
アリムは別室で、ひとり作業をしていた。
手伝えることが有れば良いけれど、有難迷惑だろうから静かに待っていよう。
幸い、パソコンとスマホを持ち込めたから、退屈はしない。
明日公開する Your TV 動画の原稿と次の問題を解いたり、スマホゲームのノルマや公開マンガのチェックをしよう。
いままでひとりだったから、自分のところに帰ってくる人がいると考えただけで嬉しいと感じていた。
◇
司会の部屋では、面接動画の確認を終えていた。
司会:
「MiniApp社のtalkGETを知っていれば、知識量が自慢にならないことに気付けないかな?」
医師:
「光元国では一流でも、カセイダードでは下の方ですからね。」
オルア:
「自分の価値レベルが高いと自信を持つことは良いことですが、相場を知って欲しいですね。」
司会:
「実際のところ、カセイダードが移民を受け付けて審査する理由は、他国では無価値だが、こちらでは価値がある者を拾うためだ。」
(注)
かっこいいひとは誰が見ても格好いいの。
かっこ悪いひとは誰が見ても格好悪いの。
あなただけに、格好いい人はいないの。
という格言があるが、価値観が独特なため可能性が有るはずでした。
医師:
「募集要項には月14万Versil支給と書いてあるのですが、見ていないのですかね。」
(注)
このお話までの時点では、1Versil= 1丸(光元国の通貨)で両替している。
オルア:
「それは最低基準で、優秀な者には別待遇があると思い込んでいるのでしょうね。」
司会:
「全員不合格ということで、船を引き返して、お土産持たせるとするか?」
医師:
「相手のプライドを傷つけないように、配慮しなければなりませんね。」
オルア:
「ダメなものはダメということで、慎重に検討しましたが~という定型文で、全員同じ方が無難ですよ。
理由を言うと返って面倒になります。」
はあー、無駄な時間を過ごしてしまった。
3人は疲れ切っていた・・・
ピーっ、ピーっ、ピーっ
オルア: 「アリムさん? 倒れている!」
◇
アリム:
「オルアさん、苦しいよお、助けて。」
とてもか細い声でマイクに届かなかった。
「では、朝食も済んだから、わたしの部屋に来てください。」
アリム:
「昨日、会ったばかりで早すぎない?」
オルア:
「水回りに対する考え方を確認することは早い目が良いでしょう。」
アリム:
「そうですね。」
『期待した自分がはずかしい。』
オルアはやさしく微笑んだあと、こう思った。
『よしよし、順調にわたしを意識しているな。
てつなぎ、見つめあい、ハグ、キス、ナイトバインド
少しずつ進めていこう。』
◇
オルアは、アリムを部屋に招き入れて、水回りを見せた。
トイレ、風呂場、洗濯機置き場、台所、洗面所、ベランダに案内して、排水溝のフタを外して、中の状態まで見せた。
オルア:
「どうですか?」
アリム:
「とっても綺麗ですね。 わたしは、ここまで掃除しません。」
オルア:
「ふむ、あとで貴方の部屋も見せてくださいね。」
アリム:
「はい。 お手柔らかにお願いします。」
(注)
部屋に入ってから1日も経っていないから汚れる訳がないのだが、家事能力を測るために、全部屋同じ程度に汚してあった。
オルアは、アリムに椅子に座るようにうながした。
そして、テーブルの上に、小さな皿を出して、1粒の薬を出した。
アリム:
「これは? まさか、自決用の毒ですか?」
オルア:
「ブッブー、不正解です。
若返りの薬です。」
アリム:
「まさか、子供から抽出した悪魔の薬。」
オルア:
「そんな訳ないでしょう。
ひとり若返らせても、ふとり老けさせたら、差し引きゼロで無意味です。
カセイダード王国の科学力があればたいていのことは出来ます。
栄養食品、サプリメントの延長のようなものです。
クラスター限定使用です。」
アリム:
「わたしは、そのクラスターとかいう資格は知らないです。」
オルア:
「心技体が一定以上に達した者に贈られる称号ですね。
わたしが指導すれば、2~3年後に合格するでしょう。
一気に進めたいので、質問は待ってくれますか?」
アリム:
「はい、お願いします。」
オルア:
「まず、あなたには、30才若返っていただきます。
これは若返りの薬で、1粒で10年若返ります。
ただし、個人差があるので、ひとによっては、さらに若返る危険があります。
そして、老化する薬の需要は無いため、開発されていません。
だから、1粒ずつ飲んで、効果がでるまで1~3日間を待ちます。
ここまでで、質問は?」
アリム:
「その最初の1粒がこれで、30才若返って、20才代の身体に戻るまで飲むですね。
もし、効果が少ない場合は、3粒ではなく5粒飲むことになるかも知れないということですか?」
オルア:
「そうです。20才代の身体に戻って若返っていだだきます。
医師の予想では、アリムさんは通常より多く若返る可能性が高いそうです。」
アリム:
「それは、なぜですか?」
オルア:
「実年齢より、かなり若く見えるからです。
つぎに治療ですが、若返ったあとで行います。
色盲に関しての赤錐体と緑錐体の遺伝子は、私の遺伝子がコピペして上書きされます。
脳内にインストールする処理プログラムは、わたしの処理プログラムを7段階くらいで、上書きされます。
その前に、現行のアリムさんの処理プログラムを万が一に備えてバックアップします。
インプットとアウトプットの仕様を確認してタイプが異なる場合は、同タイプの方の処理プログラムをインストールすることになります。
わたしのプログラムが適用できる場合は、経過観察をわたしの経験で確認できるから進行が楽になります。
」
アリム:
「わたしが気をつけることは?」
オルア:
「わたしを信じて、指示通りにすること。
疑問点や不安があれば聞くこと。
わたしが信じられなくなった場合は、医師に告げてくだされば、他の者が担当します。
つまり、サポートがわたしではなくなるので、お別れです。」
アリム:
「成功しますよね。 危険は無いですか?」
オルア:
「アリムさんがおひとりで周囲に誰もいないときが危険ですね。
なにかあったとき誰も発見できなくなります。
おはようからおやすみまで、わたしと一緒にいれば安全ですね。」
アリム:
「それは、お風呂やトイレの時もですか?」
オルア:
「わたしと一緒にお風呂に入りたいですか?」
アリム:
「あなたがそうしても良いと思うくらい、わたしを好きになってくれたら入りたいです。」
オルア:
「今すぐは無理ですね。
前向きに考えておきますので、期待して待っててくださいね。」
オルア こころの声:
『アリムさんの言質を取りました。
最高のタイミングと演出を用意しよう。』
アリム:
「はい。待ってます。」
『少しでも長く、オルアさんのことを好きでいられますように。』
アリムは、天に祈った。
オルア:
「では、若返り薬の最初の1粒をお飲みください。」
アリム:
「お水を頂けますか?」
オルア:
「あっ、ごめん、すぐに用意するね。」
◇
司会の部屋に、面接を担当した2人組と医師が来ている。
司会:
「面接、ご苦労だった。」
2人組:
「ありがとうございます。」
司会:
「受けた印象は?」
2人組は顔を見合わせる。
お互いに相手に言わせようとしている。
どちらも言いたくないようだ。
あきらめた責任者が答える。
面接責任者:
「わたしとわたしの家族、親族、友人のパートナーにすることは拒否します。」
司会:
「素晴らしい答えだな。
理由は言いにくいだろうから、感じたことを教えてください。」
面接責任者:
「会話履歴が汚すぎます。
ここまで裏表がある人間がいると知ると人間不信になります。
ライバルを蹴落とすために、仲間外れにする、嫌がらせをする、悪評を流す、悪いうわさ話を創作する。
いじめの的を決めて団結しようとする。
自分が被害者で無ければ、他人が犠牲になっても仕方ない。
他人を侮辱して弱らせて支配しようとする。
性欲に忠実で、【女性】を「性の対象か性の対象外か」でしか見ていない。
自己肯定感が低いわりに自尊心が高く傲慢で、運良く手に入れた社会的地位や合格した大学などのランクで他人を見下し、値踏みし、言うことを聞かせるために、暴言、暴力、風評被害など、関わりたくないです。」
司会:
「それでも、ひとりくらいは良さそうなのがいると思うが、いないのか?」
面接責任者:
「一晩なかよくして、さよならする習慣はないです。
非常食にさえなりませんね。」
司会:
「イケメンや美男子、美少年は何人かいたと思うが?」
面接責任者:
「毒キノコを食べる方がまだマシですね。」
医師:
「健康そうな個体とか、鍛え上げられた個体はいませんか?」
面接責任者:
「関心無いので、面接動画をご覧になって、ご確認お願いします。」
司会:
「いや、すまない。 相当、嫌な思いをしたようだな。 ゆっくり休んでくれ。」
面接責任者:
「たまった皿洗いや洗濯物を片づける方が有意義でした。
有給休暇を1週間ください。」
司会:
「面接が丸1日だから、その3倍の3日間の有給休暇を取ってくれ。
結果発表などの事後処理は済ませておく。
急ぎの案件については、机の上に紙に書いて貼っておいてくれ。」
面接責任者と面接準備者:
「ありがとうございます。
休み明けは新しい気持ちで頑張れそうです。
3日間でたまった家事を終わらせるぞ。」
司会、医師:
「そんなに嫌だったのか?」
2人は仕方なく、面接の様子を2倍速で手分けして確認した。
司会:
「良し、オルアにも手伝わせよう。 呼び出せ。」
医師:
「はい、よろこんで。」
オルア:
「アリムさんが捨てられる子犬のような目で見つめてきてつらかったです。
若返り薬の経過観察があるので、となりの部屋に来てもらっています。」
そう言って、オルアは見守り画面を手元に置いた。
3人は、面接の動画を見て気持ち悪くなった。
司会:
「こいつらは、面接官の目ではなく、どこを見ているんだ?」
医師:
「胸の谷間と足と、顔をなめるように見ていますね。」
オルア:
「胸を見るなとは言いませんが、アリムさんのように理性で目を合わせようとする努力が欲しいですね。」
司会:
「自慢話が多いな。
大学教授、公務員や一部上場企業の役付けだとか。」
医師:
「ベッドテクニックの技術自慢は最低ですね。
10から20程度の知識しか知らないくせに。」
オルア:
「30までの知識が限度でしょうね。
男の人や美女でさえ、200までの正性知識を覚えているのに。
無知って最大のしあわせかもしれませんね。」
司会: 「いっしょに暮らすメリットがないな。」
医師: 「ひとりで本を読む方がマシですね。」
オルア: 「そう考えると、アリムさんは大当たりですね。」
司会: 「良さそうか?」
医師: 「こころの傷が深そうですが、どうですか?」
オルア:
「アリムさんの部屋を見たところ、水回りの掃除と料理などは許容範囲ですね。」
司会: 「不満は、なんだ。」
医師: 「見えないところの清掃に気を回す余裕が無い様子ですか?」
オルア:
「たとえば、おふろの排水溝の髪の毛トラップと浴槽は掃除するのですが、お風呂の壁や天井の汚れは気にしないそうです。」
司会: 「まあ、汚いところを掃除してくれれば、いいじゃないか?」
医師: 「そうですよ。 神経質なくらいに綺麗好きだと、大変ですよ。」
オルア: 「だから、許容範囲内です。」
司会と医師は心の中で叫んだ!
『贅沢言うな。代わってくれーーーー』
◇
アリムは別室で、ひとり作業をしていた。
手伝えることが有れば良いけれど、有難迷惑だろうから静かに待っていよう。
幸い、パソコンとスマホを持ち込めたから、退屈はしない。
明日公開する Your TV 動画の原稿と次の問題を解いたり、スマホゲームのノルマや公開マンガのチェックをしよう。
いままでひとりだったから、自分のところに帰ってくる人がいると考えただけで嬉しいと感じていた。
◇
司会の部屋では、面接動画の確認を終えていた。
司会:
「MiniApp社のtalkGETを知っていれば、知識量が自慢にならないことに気付けないかな?」
医師:
「光元国では一流でも、カセイダードでは下の方ですからね。」
オルア:
「自分の価値レベルが高いと自信を持つことは良いことですが、相場を知って欲しいですね。」
司会:
「実際のところ、カセイダードが移民を受け付けて審査する理由は、他国では無価値だが、こちらでは価値がある者を拾うためだ。」
(注)
かっこいいひとは誰が見ても格好いいの。
かっこ悪いひとは誰が見ても格好悪いの。
あなただけに、格好いい人はいないの。
という格言があるが、価値観が独特なため可能性が有るはずでした。
医師:
「募集要項には月14万Versil支給と書いてあるのですが、見ていないのですかね。」
(注)
このお話までの時点では、1Versil= 1丸(光元国の通貨)で両替している。
オルア:
「それは最低基準で、優秀な者には別待遇があると思い込んでいるのでしょうね。」
司会:
「全員不合格ということで、船を引き返して、お土産持たせるとするか?」
医師:
「相手のプライドを傷つけないように、配慮しなければなりませんね。」
オルア:
「ダメなものはダメということで、慎重に検討しましたが~という定型文で、全員同じ方が無難ですよ。
理由を言うと返って面倒になります。」
はあー、無駄な時間を過ごしてしまった。
3人は疲れ切っていた・・・
ピーっ、ピーっ、ピーっ
オルア: 「アリムさん? 倒れている!」
◇
アリム:
「オルアさん、苦しいよお、助けて。」
とてもか細い声でマイクに届かなかった。
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