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2人目の聖女
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私の中で魔力が勢いを増して渦を巻いていくのが分かる。意識していなければ、その勢いに飲み込まれてしまいそうだ。
耐えるのよ。
このまま飲み込まれてはいけない。
私は握りしめた手にぐっと力を入れた。
周りが光に包まれているような、そんな感覚に襲われる。
微かに手を握り返されたと気づいて、私はようやく目を開ける。
「ルカ皇太子様…?」
ルカが私を見つめているのに気づいた瞬間、私の頬を涙が伝った。
助かったのね。
良かった…
お腹にざっくりと切られていた傷が完全に治っているのが見えて、私は安堵する。
何よりも、ルカの意識が戻ったことが嬉しかった。
ルカは微笑みながらそっとその涙を指ですくう。嬉しくて、涙が止まらずしばらく動けなかった。
ようやく落ち着いて辺りを見回して初めて周りの状況に気がついた。
先程までは悲惨な状況だったはずなのに、なぜかその雰囲気が消えている。それどころか穏やかなこの空気は何だろうか。
「マルスティア様…あなたは聖女様だったのですね」
オレフィスが目に涙を溜めて私に言った。
聖女?
どういうこと?
「結界が完璧に修復されました。マルスティア様…いえ、聖女様のおかげです」
その言葉を聞いて、ルカはゆっくりと起き上がって、混乱する私をそっと抱きしめて言った。
「君のおかげでこの国は助かった。本当にありがとう」
***
それからの毎日は今まで経験したことのないほどの忙しさだった。
「聖女様が結界を修復してくださったそうだ!」
「聖女様万歳!!」
国民はみな新しい聖女の登場を祝福し、この国の安全が確実に守られることに歓喜した。
「やっぱり、ただの御令嬢ではなかったんだな」
「治癒魔法だけでなく怪物まで倒すんだ、本当に凄い方だ」
「ルカ皇太子様を救ったのも聖女様だそうだ」
騎士たちは口々にマルスティアを褒め称えた。
そして私は2人目の聖女の誕生パーティーの主役となり、人々の注目を集めることとなった。その様子をクリスティアは嬉しそうに見ていた。
相変わらず、クリスティアは私を見るととても嬉しそうに駆け寄ってきて話しかけてくれる。
そんな姿を可愛いと思いながらも、私は不安でもあった。
物語に聖女が二人も登場していいものなのだろうか。そもそも、マルスティアが聖女として讃えられるこの状況はおかしいのではないだろうか。
私はただ、ルカを救いたい一心だった。
まさか結界も同時に修復されるなんて思ってもみなかった。
ルカを助けたこと、不本意にもこの国を救うことになったことに後悔はない。
これからどう物語が進んでいくのかと考えると、答えが見えず不安になる。
ルカを助けたいと願った時から、私は元の世界に帰ることは諦めた。というよりも、もう戻りたいとは思わなくなった。
ここの世界で生きていく。
ルカのそばで、生きていきたい。
だからこそ、この物語を終わらせるわけにはいかないのだ。
耐えるのよ。
このまま飲み込まれてはいけない。
私は握りしめた手にぐっと力を入れた。
周りが光に包まれているような、そんな感覚に襲われる。
微かに手を握り返されたと気づいて、私はようやく目を開ける。
「ルカ皇太子様…?」
ルカが私を見つめているのに気づいた瞬間、私の頬を涙が伝った。
助かったのね。
良かった…
お腹にざっくりと切られていた傷が完全に治っているのが見えて、私は安堵する。
何よりも、ルカの意識が戻ったことが嬉しかった。
ルカは微笑みながらそっとその涙を指ですくう。嬉しくて、涙が止まらずしばらく動けなかった。
ようやく落ち着いて辺りを見回して初めて周りの状況に気がついた。
先程までは悲惨な状況だったはずなのに、なぜかその雰囲気が消えている。それどころか穏やかなこの空気は何だろうか。
「マルスティア様…あなたは聖女様だったのですね」
オレフィスが目に涙を溜めて私に言った。
聖女?
どういうこと?
「結界が完璧に修復されました。マルスティア様…いえ、聖女様のおかげです」
その言葉を聞いて、ルカはゆっくりと起き上がって、混乱する私をそっと抱きしめて言った。
「君のおかげでこの国は助かった。本当にありがとう」
***
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「聖女様が結界を修復してくださったそうだ!」
「聖女様万歳!!」
国民はみな新しい聖女の登場を祝福し、この国の安全が確実に守られることに歓喜した。
「やっぱり、ただの御令嬢ではなかったんだな」
「治癒魔法だけでなく怪物まで倒すんだ、本当に凄い方だ」
「ルカ皇太子様を救ったのも聖女様だそうだ」
騎士たちは口々にマルスティアを褒め称えた。
そして私は2人目の聖女の誕生パーティーの主役となり、人々の注目を集めることとなった。その様子をクリスティアは嬉しそうに見ていた。
相変わらず、クリスティアは私を見るととても嬉しそうに駆け寄ってきて話しかけてくれる。
そんな姿を可愛いと思いながらも、私は不安でもあった。
物語に聖女が二人も登場していいものなのだろうか。そもそも、マルスティアが聖女として讃えられるこの状況はおかしいのではないだろうか。
私はただ、ルカを救いたい一心だった。
まさか結界も同時に修復されるなんて思ってもみなかった。
ルカを助けたこと、不本意にもこの国を救うことになったことに後悔はない。
これからどう物語が進んでいくのかと考えると、答えが見えず不安になる。
ルカを助けたいと願った時から、私は元の世界に帰ることは諦めた。というよりも、もう戻りたいとは思わなくなった。
ここの世界で生きていく。
ルカのそばで、生きていきたい。
だからこそ、この物語を終わらせるわけにはいかないのだ。
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